« SEVEN連載ペーパー第3回目発行完了! | メイン | 小説書きさんに暗~い20のお題11 »

2007年09月30日

小説書きさんに暗~い20のお題 ←配布先

02.消えない罪 (鋼の錬金術師/エド&アル健全)

今でもあの時の事は鮮明に覚えている。
 目の前は、血の海に”母親”に似ても似つかない物体の死骸。
 血まみれの左足があったはずの自身の半身。
 そして、消えた弟。
「うそだ・・・ちがう・・・こんなの・・・っ」
 あまりの惨状と己自身への憎悪に、突如襲われた嘔吐。
ーガハッゲホッゲェッー
 荒い息のまま、周囲を見渡しても弟の姿はない。
 あるのは部屋に放置してあったままの鎧の置物が目に入った。
「ちがう・・・こんなのを望んだんじゃない・・・
 アル・・・オレのせいだ。オレの・・・」
 失った左足の出血で気を失わないように布で足の付け根を縛る。
 猛烈な痛みが走るが、そんな事にはかまっていられない。
「返せよ、弟なんだよ・・・足だろうが!両腕だろうが!
 ・・・心臓だろうがくれてやる。だから!!返せよ!
  たった1人の弟なんだよ!!」
 
 その後、オレはさきほど得た真理の片鱗と今までの知識を総動員して、そしてオレ自身の右腕を代償に弟・アルフォンスの魂だけを錬成できた。
 魂を部屋にあった無骨な鎧に定着させたのは咄嗟の判断だったのだ。
 その鎧姿が幼いアルファンスに似合うはずもなく、
・・・体の感覚はすべてなくなり、あるのは言葉と感情だけとなったアルにオレは、一生かけても償いきれない罪を背負ったのだ。
 例え、アルフォンスの姿を元通りに戻すことができてもオレの罪は消えない。


 セントラルにある病院でエドワードは、忍び込んだ第五研究所の戦闘で傷ついた生身の傷を治療する為に入院を余儀なくされていた。
 研究所を脱出して気づいたら病院のベッドの上。
 病室には、誰もいない。
 いつもならアルフォンスが心配そうに傍に居るはずなのに。
「アル?」
 呼びかけてみるが返事はない。どこにいるんだろう?
 自分が生き残ってアルが死ぬ事はないはずだ。
 ベッドの上に横たわったまま動く左腕で両目を覆う。
 アルフォンスの姿が見えないと、あの時の不安と恐怖が甦る。
 胃から喉に何かがこみ上げてくるのをやっとの思いで堪えた。


 入院している間に幼馴染で専属整備師でもあるウィンリーに来てもらい、壊れた機械鎧の整備をしてもらうことになった。
 ベッドにうつぶせになりながら、右腕をウィンリーに預けて整備をする。
「まだしばらく機械鎧とお付き合いだな。
 アルもまたしばらくあのままだ・・・」
 諦めてはいない。
 いや、諦めてはいけない、アルフォンスの体を元に戻す事。
 第五研究所で知りえた事をアルフォンスと話し合いたいと思っているのに、ここ数日、アルファンスとまともに会話していないことに気づいた。
「アル・・・あいつ、この頃変だ」
 ふと口をついて出たのは、正直な気持ちだった。
 こんな事は初めてで戸惑っている自分もいる。
 アルフォンスは体を無くした時でさえ、自分を元気づけてくれる存在だった。
 何を塞ぎこんでいるんだ?
 第五研究所で何かを得たのだろうか?
 自分に話してくれない事がなによりも悔しかった。


 まだ傷が癒えないエドワードは入院生活のまま。
 食事にオレが嫌いな牛乳が出た時にアルの感情が爆発した。
「あーあ、オレの代わりに飲んでくれよアル~~~
 ・・・ってもその身体じゃ無理かぁ・・・」
 何気なく発した言葉だった。
 こんな程度の言葉なら日常的にオレは使っていたはずだった。
 だが、この日だけはアルの様子が違っていた。
「・・・せっかく兄さんは生身の身体があるんだから飲まなきゃダメだよ」
「嫌いなもんは、嫌いなの!だいたい牛乳飲まないくらいで死にゃしねぇっつうの!」
 その言葉を無言で聞いているアルに変わった様子は見られない。
 いや、例え変わったところがあったとしても、気付けないだろう。
 感情の変化は、アルの鎧姿には何の影響も与えないのだから。
「アルはいいよな。身体がでかくてさ」
 こんな言葉も日常的に使っていたはずなのに。
「ボクは好きでこんな身体になったんじゃない!!」
 今までアルから、この言葉を聞いた事はなかった。
 だからオレもその身体への罪悪感を隠し、アルと2人でやってきていた。
 あの日から、ずっとアルはこの言葉をずっと思い続けていたのか?
 優しいアルはそれをオレに告げる事ができなかったのか?
「あ・・・悪かったよ・・・」
 こんな言葉でアルに届くはずがないとわかっていても、言わずにいられない。
「本当に元の身体に戻れるって保証は?」
「絶対に戻してやるからオレを信じろよ!」
 そう、アルには無条件でオレを信じてもらうしかない。
 オレも自分自身を信じることで今までやってこれた。
「「信じろ」って!!この空っぽの身体で何を信じろって言うんだ・・・!」
 感情が表に出るはずもないアルの鎧姿が酷く見える。
 アルはそれでも言葉を続ける、今まで我慢していた感情を爆発させるように。
 そして、アルは思い寄らない言葉を吐き出した。
「ボクの魂も記憶も本当は全部でっちあげた偽物だって事じゃないのかい?」
 その言葉にオレは思った、やっと吐き出してくれたんだな・・・と。
 アルの身体が失われたのは、すべてオレのせいだとわかっている。
 それについて、アルが恨み言ひとつ洩らさない日々に怯えていた。
 ”戻りたい”と言ってもアルは元に戻る事を諦めているのではないかと・・・それが怖かった。
 諦めたらすべてが終るのだから。
 オレの罪を許してくれなくてもいい。
 だから、諦める事だけは絶対にしないでくれ。
「言いたい事はそれで全部か」
 頷くアルを視線の端で捕らえる。
「-そうかー」
 オレ達兄弟は、ここからが始まりだ。
 アルにオレを信じてもらえるように、元の身体に戻れると信じられるように。
 オレは、オレに今できる事をやるよ。

 不思議なほど穏やかな表情でエドワードは病室を出ていった。
 消える事の無い罪を抱えながら、これからもエドワードは歩み続ける。

end


**************************************************************
8/5
まあ・・・原作のシーンを抜き出して、
そこに独自の解釈を加えただけみたいな小説ですけど・・・(苦笑)
このお題「消えない罪」っていうと、この事しか思い浮かばなくて(汗)
そうなると原作をフル活用させていただきました。これって反則かな?
よかったら読んでみてください。なんか変になったけど直しようがなかった。

投稿者 水天宮拓仄 : 2007年09月30日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://4th.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/1124

コメント

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)