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17:no future (NARUTO/カカナルBL)
暁の角都を苦労の末、5割の完成度という新技で見事に撃破したナルトを目の前に、カカシは複雑な気持ちを抱えていた。
確かに、今回の新技をナルトに会得させる為により効率的な訓練方法を編み出し、それをナルトに授けた。
そして、後輩であるヤマトにナルトの特訓を頼み、アスマの仇討ちに向かうシカマル達に加わったのは自分だ。
自分が期待していた通り、いや・・・それ以上の成果をナルトは身につけ己の危機を救ってくれた。
「風遁・螺旋手裏剣か・・・いくら俺でも、あれは真似できないな」
角都を倒した後、ナルトは立つこともまともにできない程消耗し、自らの技の威力に傷ついている。
それを視界の端に映しながら、なぜかカカシはホっとしている自分を自覚し、瀕死の角都の下へ足を向けた。
「次から次へと新しい世代が追い抜いていくのさ・・・」
まるで自分自身に言い聞かせるかのようにカカシは呟き、今回の任務を完遂した。
木の葉に帰り、五代目に事の顛末を報告し終えたカカシはその足で、ナルト達がいるであろう、ラーメン屋”一楽”に向かった。
扉が開けはなれた店内からは、にぎやかな若い男女の声が聞こえてくる。
間違いなく、ナルト達7班のメンバーがカウンターに腰掛けて、にぎやかな食事を始めていた。
後ろから、近づいていくうちに観察していると、ナルトは利き腕が使えない状態らしく、サクラやサイにラーメンを口に運ばれている。
サイにラーメンを口に運ばれたナルトが、彼に怒鳴りちらしている隙にカカシは3人の会話に加わる事ができた。
特に子供じみた独占欲など持っていないが、なぜかナルトの為に何かをしたくて、カカシは不満そうな彼を他所に、完食させる事に成功した。
その夜、カカシはナルトの部屋を訪ねる。
2年程前までは窓から気配もなく入りこんだり、鍵のかかったドアをすり抜けたりしてナルトを驚かすのが楽しみだったが、今日はそんな気持ちになれなくて、扉を手の甲でコンコンと叩く。
しばらく部屋の中は沈黙が続き、人が動く気配を感じると遠慮がちな声が扉に向かって響いた。
「誰だってばよ?」
こうして彼を普通に訪ねてくる人間は、ほとんどいないのであろう。
あきらかに戸惑った様子のナルトの声に、思わず口元を緩ませる。
「ナルト、俺だよ。開けてもらえないかな?」
「カ・・・カカシ先生?」
中から先ほどよりも大きな声と、さらに動揺した声が聞こえて扉の鍵がガチャガチャと鳴る。
そうだ、ナルトは利き腕が使えないのだ。
「いいよ、勝手に開けて入るから」
「駄目!今、すぐに開けるから!」
そう言った次の瞬間にようやく扉が外に向かって開かれた。
少し低いだけの目線とナルトから感じる気配に、カカシは違和感を覚える。
「よお」
「よ・・・おって。何しにきたんだってばよ?オレ、これから風呂入って寝る所で」
カカシが訪ねて来た事で、気が動転したのかナルトは言い訳する事でもないのに、まるで言い訳をするような口調でまくし立てた。
顔も少し赤くなって、よく見ると額や首筋にも汗がにじんでいる。
ナルトにとって、自分の部屋に来客があるという事が稀な事だと知れる。
そういえば、自分がナルトの部屋を訪ねたのは、チームを一緒に組んだ頃に数回だ。
先ほど感じた違和感は、一緒に訓練したり闘っている時には、感じることがなかった日常のナルトと触れ合う時間が極端に少ないせい。
「とりあえず、中入っていいか?」
「え・・・べ、別にいいけど・・・」
ここへカカシが現れた理由が検討もつかないナルトは首をかしげながら、殺風景な部屋へ導いた。
久しぶりに入ったナルトの部屋は、以前とさほど変化は見られなかった。
変わった事と言えば、ここに住む人物が成長した事くらいだろう。
だが、最大の変化点でもある。
冷蔵庫を開け、中を探るナルトの背中を見ながら適当にそばにあった椅子に腰掛けた。
背中を向けながらのナルトが声を上げる。
「カカシ先生何か飲む?オレん家、牛乳くらいしかねーんだけどさ」
「いや、いい。すぐに帰るし」
「・・・?そう・・・じゃ、オレが飲むってばよ」
日ごろ一緒に活動しているカカシが部屋にいるだけで、ナルトの心拍数は急激に上がっていた。
少し震える手でカップを持つと、テーブルに置き、カップを持っていた手で牛乳パックを掴むとカップに注ぐ。
「わっ!」
利き腕の反対を使ったせいか、カップから牛乳が溢れてしまいナルトの服に零れた牛乳が飛び、染みこんでいく。
「ナルト・・・大丈夫か?ほら、服脱いですぐに洗わないと明日臭うぞ」
椅子から立ち上がったカカシにビクリと一瞬おびえたような視線を向けたナルト。
だが、カカシが脱がそうとシャツに手をかけると素直に従った。
黙々とナルトのシャツを脱がし、床やテーブルに零れた牛乳を流し台にかけてあった雑巾で拭くカカシを上から見つめるナルトが、意を決したように呟いた。
「カカシ先生・・・怒ってるってばよ?」
子供の頃より低くなった声で、子供の頃と同じような言葉を使うナルトにカカシは顔を上げて笑顔を作る。
「怒ってなんていないよ。どうして、俺が怒ってると思ったんだ?」
「・・・暁の連中、ぶっ倒してからのカカシ先生、なんか怖いんだってばよ」
むき出しの上半身は子供でも青年でもない未成熟な筋肉で包まれ、先日の特訓や死闘でついた傷はすでに消えかけている。
「俺は、何も・・・どこも変わっていないよ。お前と初めて会った時から」
「そんなはず無いってばよ!特訓の時とかは、わかんなかったけど・・・違うんだって、オレ思うんだ・・・どこがって言われたらわかんないけどさ」
最後の方は、自分でもうまく言えないのがわかってナルトは消え入りそうな声になった。
「それはお前が俺に近づいたって事だよ」
牛乳にまみれた雑巾を流し台に放り、すくりと立ち上がると目の前に俯きながら立ち尽くすナルトを両腕で引き寄せて胸に抱きしめた。
突然の事で、目を白黒させるナルト。
「カ・・・カカシ先生!な、何すんだってばよ!」
暴れてなんとかカカシの腕から逃れようともがくナルトを逃さないように、ぎゅっと両腕に力を込める。
まだ、自分の方が上なのだと無言で訴えるかのように、さらに力を込めた。
掴んだナルトの両腕に尖った指先がめり込み、血が滲んだ。
「いっ痛い!離せってばっ先生!」
「ナルト」
今まで聞いた事がないような低く、暗い声に体の動きが封じられる。
まるで金縛りにでもあったかのように、体を動かすことも声を出す事もできない。
自分の両腕に爪を立て、自分の体を束縛するカカシという上忍に恐怖を感じた。
膝がガクガクと震え、両手で恐怖の対象となったカカシの袖を必死で掴む。
「ナルト・・・」
そして、またナルトが聞いた事が無いような優しい声を出す。
ゆっくりと顔を近づけながら、顔を覆い隠す黒い布を唇と首の動きでずらしナルトの唇に自分のそれを重ねた。
そして、唇もナルト自身も解放する。
ペタリと床にへたり込むナルトに背を向けて、扉に向かった。
「ま・・・待てってばよ!」
ナルトの声に足だけを止め、顔は振り向かない。
きっと、今振り向けば、情けない表情を見せる事になるに違いない。
ズレた黒い布を両手で、戻した。
「何?」
「意味、わかんねー!カカシ先生が何考えてんのか、全然わかんねー!」
腰が抜けてしまったナルトは、床に這いつくばりながらもカカシに向かって怒鳴り散らした。
突然訪ねてきて、用件もわからないまま、恐怖を感じ、唇を奪われ、今は意味もわからないまま、カカシは帰ろうとしている。
「今はわからなくていいよ」
「どういう意味だってばよ!わかるように説明してくんなきゃ、わかるはずねーだろっ」
自分の背中に向けて怒鳴るナルトを部屋に残し、カカシは扉から外に出た。
扉を後ろ手にしめ、扉が閉まった途端に止んだナルトの怒鳴り声。
心は沈んでいるはずなのに、自分の前にへたりこむナルトを思う時、なぜかカカシの心は軽くなった。
「我ながら・・・馬鹿げてる・・・こんな事で、あいつを抑えつけても意味はないのに」
自嘲気味な笑みを布下で浮かべながら、振り返り、最後に閉じた扉を見つめ、額をコツンとぶつける。
「終わりかな、俺も・・・」
誰に聞かせるわけでもなく、ぼそりと呟き、カカシは闇の中に姿を消した。
end
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9/10
実はこの短編は、mixiであしあと5000を踏んでくださったソウさんへ捧げるべく書きました!
と、いうわけで、お題もかねてリク小説を書いてみました~!
ソウさん・・・どうぞ、お受け取りくださいませ。
カカシ×ナルトで精一杯シリアスに書いたつもりです。
少しでも楽しんでいただければ幸いでございます。
投稿者 水天宮拓仄 : 2007年09月30日
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