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2007年09月30日

『Boy and Girl』 (DQ4/男勇者×シンシア)

 ここは名も無き山奥の村。
 村では、一人の少年が10歳の誕生日を迎えていた。
「ソロ誕生日おめでとう!」
 村の中を突っ切って日課になっている父親へ弁当を届ける途中に、何人もの村人にお祝いの言葉を送られる。
「ありがとう、おじさん」
 笑顔でそう答えると、村に流れる小川で釣りをしている父親の元に急いだ。
 川へ行く手前に小さな広場があり、その広場には綺麗な花が年中咲き乱れている。
 広場の近くを通ると、一際ソロの耳によく通る声が届く。
「ソロー!」
「シンシア!」
 ぱっと顔を広場に向けると、幼馴染で少しだけ年上のシンシアが手を振っている。
 思わず駆け寄ろうとしたソロだったが、両手に抱えていた弁当箱の存在を思い出すとシンシアに向かって大きな声を出した。
「今、お父さんにお弁当届けにいく途中なんだ!すぐに戻ってくるから、待ってて!」
「わかったわ!」
 そう言って互いに手を振りながら、しばしの別れを告げる。
 広場を離れたソロはお弁当が揺れるのもおかまいなしに全力で駆けていく。
 早く、母親からのおつかいを済ませて大好きなシンシアの所へ行かなくちゃ!
 ソロの心はシンシアの所へ行くことでいっぱいになっていた。
「父さん!お弁当持ってきたから、ここに置いていくね!」
 小川に釣り糸をたらしている父親の背中にそれだけを告げると、まるで放り出すような勢いで弁当箱を地面の上に置き、すぐに踵を返した。
 後ろの方で父親が怒ったような声が聞こえてきたが、今は説教なんて聞いていられない。
 広場の花畑でシンシアが待っているのだから。

「シンシア!おまたせっ」
 はぁはぁと肩で息をしながら広場を見渡すとシンシアの姿が見当たらない。
 キョロキョロと辺りを見渡すソロの背後から、ゆっくりと忍び寄る影が一つ。
「わっ!」
「うわあああっ」
 背後から突然抱きつかれてソロは思わず叫び声を上げてしまった。
 その声に、背後から抱きついた人影も慌ててソロの正面に姿を現す。
「馬鹿ね、ソロ。そんなに大声上げないでよ。こっちがびっくりしちゃうじゃない」
 クスクスと笑いながら、目の前に現れたのは自分より少しだけ年も背丈も大きいシンシアだ。
「シンシア!いきなり、後ろから飛びつかれたら誰だってびっくりするだろっ」
 女の子みたいに悲鳴を上げてしまった事が恥ずかしいのか、ソロは頬を赤く染めてシンシアに視線を向ける。
 視線の先に立っているシンシアは後ろに両手を回し、にこにこと自分を見つめていた。
 その視線が、やっと落ち着いてきた鼓動を再び跳ねさせる。
「誕生日、おめでとう、ソロ!これ、わたしからのプレゼントよ」
 後ろから手を正面に突き出したシンシアの手には、小さなスライムが2つちょこんと乗っていた。
「ス、スライム?」
 離れた場所から見ていたソロは一瞬驚いたが、それがすぐに作り物だと気づく。
 スライムの頭のてっぺんに小さな金具が付いていたからだ。
「私が河原で拾った石で作ったピアスよ。可愛いでしょ?」
 笑顔でスライムピアスをコロコロと手のひらで転がし、いつまでも手を出さないソロの左手を取ると、手のひらに乗せる。
「これ、シンシアが作ったの?すごいね、ちゃんと目や口もあるよ」
 左手に乗せられたスライムを間近で見つめて、ソロは嬉しそうに口元をほころばせた。
 しかし、すぐに何かを思い出したのか、しゅんとした表情になる。
「シンシア・・・これ、すごく嬉しい。・・・でも、俺・・・ピアスつけれないんだ」
「どうして?」
 さっきまでの嬉しそうな表情が急に沈み込んだソロを目の前に、シンシアも釣られて表情が沈んだ。
「だって、耳に穴開けてないし・・・開けるの怖いよ」
 左手に乗ったスライムピアスをきゅっと握りながら、申し訳なさそうにシンシアを見つめ、視線を地面に落とす。
 すると、シンシアがソロの左手を両手で包みこみながら言葉を続けた。
「このピアスは、ソロが1つ。わたしが1つ・・・ね、それなら怖くないでしょう?」
「でも・・・痛いよ?」
 シンシアに包みこまれた左手を見つめなあがら、ソロは隣家のお姉さんが、自分の母親にピアス穴を開けて欲しいと頼みに来た事を思い出しながら、肩を竦ませた。
「あんなの小さな針で、ちょっとつつくだけじゃない。全然、痛くないわよ」
「隣の家のお姉さん、穴を開けた後に3日くらい寝込んでたよ?」
 それは事実であったが、耳に穴を開けた事が原因で寝込んでいたわけじゃない。
 だがソロはその事実を知らなかったのだ。
「もうっ!いくじなしね!男の子でしょ!」
 ソロの左手を強引に開かせると、スライムピアスを1つ指でつまみあげたシンシアは、ズンズンと一人で広場を出ていこうとする。
「待ってよ、シンシア!本当に開けるの?怖くないの?」
「ちっとも怖くないわ、ソロと一緒ならね!」 
 後を追ってくるソロの方を振り返って、輝くような笑顔を見せたシンシアに、さっきまでの臆病風はどこかに吹き飛んでしまった。
「俺も怖くないよ、シンシアと一緒なら!」
 足を止めて、ソロが追いつくのを待つシンシアは斜め後ろにピアスを持っていない方の手を差し出す。
 ソロもピアスを持っていない方の手でシンシアの手を取った。
『さ、行こうっ』
 手を繋ぎながら広場から駆け出していく二人の未来は、この先ずっと変わらないかのように感じられた。

end


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9/10
cris内でキリリクとして書いた短編です。
キリ番1800をゲットしてくださったseiさんへ捧げる小説です~。
ドラクエ4の勇者とシンシアほのぼの話しですが・・・いかがでしょうか?
もしかしたら、ありがちな話かもしれませんが・・・いかんせんDQ4では
クリアリしか読んだことが無い私(汗)
勇者とシンシア話で、ほのぼのってきたらゲームよりも幼い頃を想像します。
ゲームの頃で設定使うと、どうしても切ない話になりそうで・・・orz
初めて、自分でもcris内のリクで「ほのぼの」書けたような気がします。
少しでも喜んでいただければ幸いですvどうぞお受け取り下さい!

投稿者 水天宮拓仄 : 2007年09月30日

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