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2009年03月07日

久しぶりに他ジャンル小説を書いてみようと思います。
例によってBLですので、苦手な人は読まないようにご注意下さい。
警告したので、読む人は自己責任でお願いします。
苦情は・・・できれば勘弁していただきたいなぁ(苦笑)
ネタとしては、きっと出し尽くされた後でしょうけど・・・初おお振りSSです。

(二次創作)
 おおきく振りかぶって ひぐちアサ氏 
 講談社より1巻~11巻発売中。以下続刊。
 カップリング 阿部×三橋
 
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■小説書きさんに暗~い20のお題 ←配布先

10:暴言(おおきく振りかぶって/阿部×三橋)

 西浦高校野球部副主将を務める正捕手の阿部隆也は悩んでいた。
 バッテリーを組みはじめて三ヶ月以上も共に過ごしているエースの三橋廉が
自分に怯えているように感じられるからだ。
 ”感じられる”という表現は、はっきりとそれを本人に確認していないからであり、
聞いたとしても正直な気持ちは聞けないとわかっている。
 怯えられている理由については思い当たる節がいくつかあり、
それを今さら三橋の中から拭い去る事はできない。

「・・・ったく、俺にこれ以上どうしろって言うんだ」

 夜遅く、野球部の更衣室でロッカーの前でつぶやくように独りごちた。

『首振る投手は大嫌いなんだ』
『お前にスピードは必要ない』
『野球部にいて面白い?』

 思い浮かべる言葉は出会って間もない頃に投げつけたものばかりで、後悔ばかりが頭を掠める。

「田島や浜田にはちゃんと話すくせに」

 知らず知らずのうちに舌打ちが出てしまう。
 それに気づいて、また舌打ちをした。

「ちっ・・・俺だって、それなりに気ぃ使ってんのに、なんでわかんねぇんだ」

 荒っぽくロッカーを閉めると教科書なんかが詰まっているリュックを背負い、
野球の用具専門のバッグを手に持ち更衣室を出る。
 鍵をかけて階段を降りていくと、建物に隠れるように三橋が自分を見上げていた。

「三橋?」
「あ・・・あ、べ君」

 いつものようにキョドキョドした態度で話かけてくる姿にイラっとするが、ここはなんとか堪える。
 三橋から話かけてくる事は滅多にないし、こうして自分が出てくるのを待っていたという事は、
彼なりに大事な話があると思ったからだ。
 まともに会話ができるように心掛けているのは、いつも自分の方だけと思うと頭にもくるが、
彼から話を聞くには我慢するしかない。

「なんだ、まだ帰ってなかったのか?」
「う、うん。オレ、阿部君に・・・その・・・あの・・・はな・・・しが」
「俺、シガポに鍵返しに行ってくるけど、お前も一緒に来る?話しあんなら、歩きながらでいいだろ」
「う、うん」

 階段を降りきって校舎へ向かうと、数歩後から三橋がついて来るのが気配でわかる。
 途中にある駐輪場に野球バッグだけ置き、二人で校舎に向かった。
 歩きながら話すと言ったにも関わらず、なかなか三橋から切り出さない。
 イラつきながらも阿部は口を開いた。

「で、俺に話しって何?」

 できるだけ顔を見ないように正面だけを向いて話す。
 そうすると幾分か我慢できる事をつい先日に発見したばかりだ。

「あ・・・あのね。オレ、阿部君の事がね・・・その・・・」
「俺の事が何?」

 立ち止まった阿部が振り返ると暗い中でもはっきりわかるほど真っ赤な顔をした三橋が、
両手を胸の前で弄りながら俯いている姿が視界に入った。
 イラ立つ阿部を前に三橋は一層キョドキョドとするが、一大決心をして阿部が鍵当番の今日を待ったのだ。
 ゴクリと唾を飲み込んで、持っている勇気を全部振り絞るかのように唇を動かした。

「オレ!阿部君が好き・・・な・・んだ・・・・・・ご・・・めんなさ・・・い」

 最初の方だけ大きくはっきりと聞こえたが、最後の方はだんだん小さくなって聞き取りにくかった。
 だが、阿部はしっかりと最後の一音まで耳に届いた。
 一瞬で頬が染まる。

「そ、それは三星と練習試合した時に聞いたけど?」

 戸惑いながら、出会って間もない頃にも同じ台詞を聞いた事を思い出す。

「う・・・うん。そ、そ・・・そうだよね。変な事言ってごめん、ね!」

 ビクビクと両肩を震わせて阿部から一歩二歩と後ずさると踵を返し、
止める間もなく校舎と反対側へ走って行く三橋を呆然と見送る。

「な・・・なんだ、あいつ突然」

 走り去る後ろ姿がだんだんと小さくなっていくのを見つめたまま、
しばらく立ち尽くしていたが、三橋が必死に伝えてきた表情を思い浮かべ愕然とした。

「俺、また・・・やっちまった!」

 怯えながらも必死に気持ちを伝えてくれた三橋になんて暴言を吐いてしまったのか。
 もうこれ以上、自分の言葉で傷つけたくない。 
 職員室に鍵を返しに行く予定を返上して、右手に握っていた鍵をズボンのポケットに押し込むと
三橋が走り去った方へ駆け出す。
 もしかしたら途中で泣いているかもしれない。
 なぜか自分がいない所で三橋が泣くのは嫌だった。

 駐輪場まで戻ると予想通り三橋は阿部の自転車を前にうずくまり、肩を震わせていた。

「三橋・・・」

 切れる息を整えながら、ゆっくりと近づいていくと大きく体が震えるのが備え付けてある照明でわかる。
 こんなに自分は三橋を怯えさせているのかと思うと無償に自身に腹が立った。

「三橋、泣くなよ」
「あ・・・阿部君?」

 近づいて震える肩にそっと手を置くと、じんわりと汗がシャツ越しに掌を湿らせた。
 ゆっくりと顔を上げた三橋に阿倍の心臓は激しく波打つ。
 何度も三橋の泣き顔は見た事があったし、自分が泣かせた事も何度もあるのに、
薄暗い明かりに映し出された表情はどこか艶を感じさせた。

「前に俺も言っただろ?俺もお前が好きだって」
「うん・・・でも、オレは・・・オレの好き・・・は」

 男にしては大きな瞳に涙を溜めて、じっと自分を見つめてくる三橋を思わず阿部は抱き寄せていた。

「ああ・・・あ、あ・・・阿部君?」

 突然、抱きしめられた三橋は慌てた様子で上半身を捻るが、阿部は逃げられないよう両腕に力をこめた。

「お前の言う”好き”と俺の”好き”が一緒だって・・・まだ、わかんねーけど。俺もお前が好きだよ」
「う・・・うん!」

 抱きしめられたまま頷く三橋に満足して両腕から力を抜き、体を離す。
 三橋は両足から力が抜けたのか、その場で尻餅をついて立ち上がった阿部を見上げていた。

「一緒に帰ろうぜ」
「うん!」

 まだ瞳に涙を残したまま、今まで見たことのないような笑顔を浮かべた。
 ようやく静まりかけた阿部の心臓が高鳴る。

「時間の問題かもな」

 思わず呟いた言葉に三橋がギクリとした表情を浮かべ、怯えたように自分を見つめていた。

ーああ、そうか。こいつは俺から嫌われる事に怯えていたんだー

 事実を悟ると阿部はいっきに胸にあったイライラが解消されたような感覚を味わう。
 そして、ふと芽生えた不安。

ー俺が捕手だから・・・か?ー

 そう考えて、すぐに左右に頭を振って否定した。

ーいや、違う。三橋はきっと本当に俺の事を・・・ー

 自問自答をする阿部を不安そうに見つめ、三橋はズボンをぎゅっと握って身動きも取れなくなっていた。
 自分が口にした言葉で阿部を傷つけたのか?自責の念に苛まれる。

「三橋。俺の事が好きだって本気で言ってんの?」
「え・・・うん。オレ、本当に阿部君が好きだ」

 今度はしっかりと最後まで言い切った三橋に少しだけ安堵する。
 でも・・・
 言うつもりは無かったのに、これを言ったら三橋はまた傷つくとわかっているのに・・・。

「それって、俺が捕手だから?」
「・・・っ」

 その言葉に三橋は目を見開き、歯を食いしばって体を震わせていた。
 ようやく治まった涙がボロボロと両目から零れ落ちた。
 ぐっと拳を作り、指先の色が変わっていくのがわかる。

「・・・べ君のばか!」

 初めて聞いた三橋の怒鳴り声だった。
 涙で掠れていたが、その声には明らかに怒気が含まれていた。

ーこれが初めてだな・・・俺にだけ、向けられた暴言はー

 泣きながら自分の自転車を引きずり出し、振り返る事もなく走り去った三橋を見送りながら阿部は唇を歪ませた。


end

投稿者 水天宮拓仄 : 2009年03月07日

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