« 就職活動の化粧 | メイン | 今回も募集中~です(汗) »
お借りするお題
†Valkyria† お題配布所
◆街中で見つけた3のお題
★前回のお話は「7/4」の日記にて。
*******************************************************
01.鞄の中には一つの傘
「お前は誰に会いたいと言うのだ?」
「甲太郎は今どこで何をしてるか知ってるか?」
聞いてくる事が予想通りだったのか阿門はニヤリと笑いを浮かべて九龍を見つめた。
思わぬ反応に驚いたのは九龍の方だ。
「なに、なんだよ、その反応?」
「いや。思っていた通りの台詞が出てきたなと思ってな」
くくっ堪えきれない声を喉の音で抑えながら扉の横で控えている千貫に視線を向けて頷く。
阿門の合図を笑顔で受け、扉から出て行く千貫を気配で感じて九龍が首を傾げる。
「なんだよ気持ち悪いな二人とも」
「これから食後のティータイムだ。付き合わないか」
「帝等は食後でも俺は食前だよ」
面白くないという表情を阿門に向けて頬を膨らませたが、薦められるままに椅子へ腰を下ろした。
向かい側の椅子に腰を下ろし、相変わらず喉の奥を震わせて笑っている。
阿門の態度がわけがわからなくて顔をしかめる九龍の背後で扉が開いた。
先ほどの千貫の開閉した音との違いを敏感に察知して、思わず振り返って上半身をひねったまま固まる。
「こ・・・甲太郎?」
扉を開けて入ってきたのは、千貫が着用している礼服よりもラフな印象を与えるフォーマルスーツに身を包み、
手にティーセットを載せたトレイを持つ皆守甲太郎が体を硬直させていた。
椅子に座り上半身をひねったまま固まる九龍にトレイを持ったまま硬直した甲太郎がお互いを見つめている。
動きを止めている甲太郎の背後から、九龍の食事をカートに載せた千貫が笑顔を浮かべながら戻ってきた。
甲太郎の脇をすり抜け、九龍の前にあるテーブルへ運んできた料理を並べた。
フォークやナイフを順番通りに並べ、料理の皿を次々に並べながら
千貫は固まったままの甲太郎に厳しい表情を見せて口を開いた。
「いつまで、そうしているのですか皆守君。坊ちゃまに早くお茶を」
「あ・・・ああ」
「返事はきちんとしなさい」
「は、はい」
千貫の声で金縛りが解けたのか、九龍の視界から出て行く甲太郎は阿門の前へソーサーを置き、
カップを置くとポットから温かい紅茶を注いだ。
その一連の動きを九龍が見つめている。
一体、どういう事なのか理解できない。
「葉佩」
「え?あ・・・なに、帝等」
優雅な仕草でティーカップを持ち上げて唇に運ぶ阿門に一瞬視線を戻し、
彼の斜め後ろで控えたまま複雑な表情を浮かべている甲太郎を凝視した。
「今年から皆守は我が家の執事見習いとして働いてもらっているのだ」
「なんでお前がいるんだよ」
「いや・・・それは俺の台詞なんだけど」
やっと状況が理解できた九龍はだんだんと落ち着きを取り戻してきているが、
驚いた表情はまだ収まらない。
甲太郎は阿門の斜め後ろで、教えられた通りの姿勢で控えてはいるが顔だけは九龍から逸らしている。
その姿勢を見咎めた千貫が咳払いをするが、現状を自分の中で整理できない甲太郎は気づく事はなかった。
「葉佩様、どうぞ。料理が冷めないうちにお召し上がりください」
「あ・・・そ、そうだね。ありがとう千貫さん」
「話は食べながらでもいいだろう。皆守も席について、積もる話もあるだろう」
「坊ちゃま。まだ就業時間中でございます」
「まあ、今日は良いだろう厳十郎。久しぶりの再会なんだ、大目にみてくれ」
「坊ちゃまがそうおっしゃるなら。私は下がりますので、何かありましたら皆守にお申し付けください」
「わかった」
「では、失礼します」
会釈を残して千貫は三人を残して部屋を出て行き、甲太郎は阿門の近くの席に着いた。
落ち着かない様子で足を組み、懐から高校の頃から愛用しているアロマパイプを取り出して唇に咥える。
「何、急に来てんだよ。普段、連絡もしないくせに」
不機嫌な表情で料理を食べ始めた九龍をジロリと睨みつけた。
美味しい料理を口にした九龍は一息をつき、グラスに注がれたワインを一気に飲み干して、
改めて甲太郎に視線を向けた。
「俺がここにいるって知らなかったんだろ?」
「え、うん。だって、コータだって俺に何も連絡してこないじゃん」
「俺の所にも連絡を寄こさなかったな」
「仕事上さ・・・あんまり部外者と交信ができないんだ。
面倒な事に関係ない人達を巻き込む事になりかねないから」
天香に潜伏していた頃を思い出した九龍が苦笑を浮かべて、フォークに料理を突き刺し、口に放り込む。
「まあ・・・そうだよな」
「だろ?俺も初っ端からドジったから、協会からキツーク言われてんだよね。
今度、プライベート用の携帯買うつもりだから許してよ」
「それで日本に戻ってきたのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどさ。来たついでだから、この休暇で買いに行こうかな」
携帯電話を買うなら日本に限ると思っている事もあり、九龍は良い事を思いついたと目を輝かせた。
二人を見つめ、阿門がティーカップに唇をつけながら微笑んだ。
空になったカップをソーサーに戻し、椅子から立ち上がる。
「食事が終ったら、皆守と携帯を買いに行ったらどうだ」
「え、いいの?コータ仕事中みたいじゃん」
「厳十郎には俺から言っておく。ここへ来てから休みらしい休みをやっていなかったからな。ちょうど良いだろう」
「いいよ、そんな事。俺はまだ覚える事が色々あるんだよ」
甲太郎も立ち上がり、阿門を見て九龍を見て、最後に俯いて小さく舌打ちをする。
連絡も来ない、自分から連絡をする事もできなかった甲太郎はバツの悪さを感じていた。
今、何も心の準備ができていない状態で九龍と二人きりになっても何を話せば良いのかわからない。
「主が良いと言っているんだ。今日から皆守には葉佩が帰るまで休暇とする。
それに、お前達は積もる話もあるんじゃないのか?」
「でもよ・・・千貫さん一人に任せて俺だけ遊ぶわけにはいかねーだろ」
「安心しろ。お前が来るまでは厳十郎一人でやっていた事だ。俺はこれから仕事なのでな。失礼する」
「うん、サンキュー!帝等」
「では、また夜に」
スタスタと歩いてくる阿門を睨みつけるが、それに足も止めずに扉から出て行く。
部屋に残された二人にしばらく沈黙が流れる、
九龍は残っていた料理をマナーもへったくれもなく口に放りこんで、
テーブルに置かれていたワインのボトルをそのまま唇をつけて中身を料理と一緒に飲み込んだ。
「おま・・・そんな飲み方すんなよ」
「だって、誰も給仕してくんないんだもん。普通はコータがやってくれんじゃないの?」
「うっせーな。お前にまで奉仕する義理はねぇな」
「いいの?俺は阿門邸の客人だよ?客人に執事見習いがその態度」
「今は休暇中だ」
「さっきまでは不満そうだったくせに調子いいよな」
九龍も椅子から立ち上がり、空になった皿をカートの上に置くと甲太郎を振り返った。
「コータ扉開けて。お前がやらないなら俺がキッチンまで持って行くよ」
「とことん厭味な奴だな。いい、それは俺が持って行く。その後は街に行くぞ。
携帯買うんだろ、付き合ってやる」
「サンキュー、コータ」
にっこりと笑顔を向けてくる九龍にドキリと鼓動を高まらせ、
アロマパイプを懐にしまいこんでズカズカと歩き、カートを扉に向けて押す。
ちょうど良いタイミングで扉を九龍が開け、二人でキッチンへカートを戻し、玄関に続くロビーに出た。
「この格好で行くわけには行かねーから着替えてくる。お前が寝泊りする部屋もあるからついて来いよ」
「あれ、なんで俺がここで世話になるの知ってんの?」
「お前に会う前に千貫さんから客が来るからって、部屋を用意させられたんだよ」
まさか、その”客人”が九龍だとは知らなかったと不満そうにつぶやいて、
二階にあがる階段へ促して踵を返した。
手には九龍が持ってきた荷物を持ち、階段に足をかける。
「ほら、早く来い」
「自分で持つよ」
「この屋敷の客人なんだろお前は。だったら、俺が持って行くのが当たり前だ。いいから、黙ってついてこい」
「はーい」
なんだか嬉しくなり、先に階段を上がっていく甲太郎の背中を見つめた。
案内された部屋へ入ると、貴重品を小さなバックに詰め込んで、廊下に出た。
廊下の奥から私服に着替えた甲太郎が手ぶらで歩いてくるの見てクスリと笑みが出てしまう。
青紫色のタンクトップに白いシャツを羽織り、楽そうなパンツを身に着けた甲太郎は高校の時を思い出させた。
「よし、じゃあ行こうか」
「ああ。付き合ってやるよ。どこの携帯買うんだ?」
「コータはどこの使ってんの?同じ会社の買うから」
「別に違う会社のでも連絡できるぜ」
「いいの。一緒のがいいんだよ」
「わかったよ、じゃあ俺が使ってる店に行こう」
二人揃って阿門邸を出て、天香学園の裏口から外に出ると、ポツポツと上空から水滴が落ちてきた。
手ぶらな甲太郎が傘なんて持っているはずもなく、九龍は聞くまでもなく
バックに入れてきた協会支給の折りたたみ傘を取り出して広げる。
シンプルな紺の傘は一般で売られている物より小振りな作りで、成人男性二人が入るには足りない。
二人は体を寄せ合い小さな傘にその身を納める。
傘からはみ出した肩がシトシトと濡れるのも構わずに、ゆっくりとした歩調で遠くに見える街へ歩き出した。
NEXT → 02.「一口、ちょうだいっ」(主皆主side)
・・・・準備中です・・・・
*******************************************************
遅くなりましたが、主皆主side第1話でございます。
うん、なかなか最後の方が良い雰囲気にできてよかった・・・。
皆守を阿門邸の執事見習いにしたのは、皆守誕生会チャットで
出てきたネタを使いたかっただけでございます(笑)やっと使えた!
主皆主は主夷と違って、しっとりした雰囲気になりそうな感じがするな。
次の第2話もがんばりたいと思います。(次のUPは主夷sideですが)
投稿者 水天宮拓仄 : 2009年07月19日
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://4th.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/1635
