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†Valkyria† お題配布所
◆街中で見つけた3のお題
★前回のお話は「7/8」の日記にて。
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02.「一口、ちょうだいっ」
男二人が入るには小さめの折りたたみ傘に寄り添いながら入る九龍と凍也は大学前駅に向かって、無言で歩く。
再会した嬉しさを噛みしめつつも、長い時間を離れて過ごしていたせいか、
何を話して良いかわからないと言ったところか。
心の準備もできていないまま、突然目の前に現れた九龍をチラリと横目で見あげる。
土砂降りの雨に打たれた後で傘に入っても無意味であり、端から見ると異様な光景に違いない。
凍也の視線に気づいた九龍が首を回し、視線を合わせてニコリと笑う。
笑顔にドキリと心臓が跳ねて、すぐに視線から逃れるように顔を背けると、慌てた様子で唇を開いた。
「センパイ、昼食べました?オレ、これからなんで一緒にどうっすか」
「うん、いいね。何食べに行こうか?」
「貧乏学生には選択の余地なんかありませんよ。駅前にあるファーストフードです」
「えー!せっかく凍也とのランチにファーストフード?せめて天香で食べない?マミーズでさ」
それは凍也も思ったが、天香の部活が始まる時間は二時間にも満たない。
指導側と言っても自分のトレーニングも兼ねる時間前に、腹いっぱい食べるわけにはいかない。
実際、一人暮らしの凍也は金銭的な余裕が無く昼はファーストフードで軽く済ませるのが習慣となっていた。
「そんなゆっくり食べる時間も無いですし、マミーズじゃ量が多すぎるんすよ」
「まだ育ってるならドンドン食べなきゃダメじゃん!」
「オレはボクサーなんすよ!食べすぎ厳禁なんです」
「だったらファーストフードは体に良くないだろ?
マミーズ行こうよ~久しぶりに奈々ちゃんにも会いたいしさぁ」
「・・・ダメです!」
最後の九龍が言った名前にピクリと眉が上がり、
希望を却下すると傘から出て見えてきた駅前のファーストフード店に入り、カウンターへ向かう。
その後を不満そうな顔で追いかけてきた九龍もカウンターに置かれているメニューを眺めて、
ボリュームのあるハンバーガーを二つ注文した。
「お前、それだけでいいの?」
「はい。昼は軽めにするんで」
凍也が注文したのはフライドポテトの普通サイズとチキンを揚げたものが三個セットの極僅かな食事。
しばらく待っていると、それぞれ注文したものがトレイに乗せられて、
店員が二人が座っているカウンター席に運んできた。
二人は店の表側前面に張られているガラス沿いのカウンター風の席に並んで座っていた。
二人の前で一瞬足を止める女性がちらほら居たが、
昔から他人に見られる事に慣れているせいか気にもしない。
「俺のバーガー食べるか?二個あるから一個やるよ」
「いいっすよ。オレはオレの食事管理があるんすから、センパイはセンパイで食べてください」
「遠慮するなって」
「遠慮なんてしてません。ほら、早く食べてくださいよ、のんびりしてる時間無いんですから」
九龍から差し出されるバーガーを片手で制止ながら、
バックの中から自前の水筒を取り出してテーブルの上に置き、トレイの上からポテトをつまんで口に運ぶ。
それを見た九龍も持っていたバーガーの紙をくしゃくしゃと取り除きかぶりつくと、
じとりとした目線を凍也に向ける。
その視線を感じながら、凍也は居心地の悪さを感じつつポテトをつまんでは口に放り込み、
パサパサした口の中をスポーツドリンクで喉に流し込んだ。
「ちょっセンパイ!さっきまで少ないとか言ってたくせにオレの食べないでくださいよ!」
「えーだって美味そうだなって。一口ちょうだい?」
「一口って一個じゃないっすか!」
「一口が一個なんだもん」
にゅっと長い手を伸ばして、たった三個しかないチキンの一つを指で摘みあげて返事を貰う前に食べてしまった。
二個に減った本日の”メイン”を見つめて凍也は拳を握りしめる。
再会した感動なんて、もうとっくに吹き飛んでしまうほど隣で
他人のチキンを美味そうに租借する先輩を本気で殴りたくなった。
「じゃ、俺のバーガー”一個”と交換しよう」
ニヤリと笑って、まだ開封していないバーガーを差し出す九龍を見つめて拳の力が抜ける。
(ったく、この人は・・・参った)
「一口じゃ食べれないっすよ」
「じゃあ、一口な。ん!」
今まで九龍が食べていたバーガーをぐいっと差し出される。
もう断る理由を考えるのも馬鹿馬鹿しくなって、素直に差し出されたバーガーにかぶりついた。
腰をひねって首を伸ばしてバーガーに食いつく凍也に、それを嬉しそうに見つめるバーガーを持っている九龍。
とっさの行動だった。
二人の背後で小さく女性の声が上がったのが凍也の耳に入る。
かぶりついたまま顔を真っ赤にして、動きが止まる。
つい、九龍のペースに乗せられてしまったと後悔しても時すでに遅し。
これではまるで人目を気にしない”バカップル”そのものじゃないか。
しかも男同士で。
「トーヤ?一口だろ?」
「・・・ううぅ」
低く唸って、口に含んだ分を食いちぎり真っ赤な顔を下に向けた。
急いで租借をしてゴクンと飲み込むと、居たたまれない気持ちで
残っていたポテトとチキンを次々と胃に納めて席を立つ。
「もう出ましょう」
「え?ちょっと待てよ!まだ全部食べてな・・・トーヤ!むぐっ」
凍也に与えたバーガーの残りを口の中へ無理矢理押し込み、
もぐもぐ食べながら手をつけていないバーガーをバックに放り込んで後に続く。
肩をいからせて前を歩く凍也を見つめて、自然と湧き上がる笑みをうまく抑える事ができない。
(やっぱりトーヤはこうじゃないとなぁ)
「何笑ってるんですか?」
「え?いや、なんでもないから気にすんな」
「もう天香じゃないんだから・・・恥ずかしい事やめてくださいよ」
まだ先ほどの恥ずかしさが消えていないのか、駅の自動券売機で切符を買う九龍の後ろでボヤく。
凍也は大学から天香へ行く為の定期を雇い主の阿門から支給されている。
切符を買い終わった九龍と並んで自動改札機を通り抜け、新宿行きの電車に乗り込む。
「別に恥ずかしい事なんてしてないだろ」
「あんな事、バカなカ・・・ップルだってしませんよ」
「だって、俺達って付き合ってるよな?」
突然の言葉に凍也は驚いた表情を見せ、何かを言いたそうに唇をパクパクと動かしたが、
ここが公共の場という事でぐっと耐える。
(五年も連絡も寄こさない人が、どの口でそんな事言うんだよ!)
キツイ目線を背の高い九龍に斜め下から送り、唇を噛みしめた。
「・・・ごめん。俺にこんな事言う資格ないよな」
何を言いたいのかを即座に理解した九龍は小さく呟くと、窓の外を流れる景色を暗い表情で見つめる。
その九龍らしくない暗い表情を横で見つめ、凍也はズキリと胸が痛んだ。
九龍が天香から立ち去る直前に二人は互いの想いを知っていた。
それを、はっきりと口に出したわけじゃなかったが、確かに二人は通じ合うものを感じていたのだ。
「好き」と口に出さないままだったが、口づけを交わした事もあったし、
まるで付き合っているかのような時間をわずかに過ごせた。
その時を”付き合っている”と九龍は自然に受け止め、別れていないのだから今も恋人同士だと。
押し黙ったまま気まずい雰囲気が二人の間に流れる。
大学前から新宿までの時間がこんなに長いと感じた事は無い。
やっと新宿に到着し、下に置いたままのスポーツバックもいつもより重く感じる。
「センパイ、降りましょう」
「うん」
言葉少なめに交わされるぎこちない会話に、再び胸の辺りがチクリとした。
九龍との絆を否定してしまった事に凍也の心も沈んだ。
だが、凍也の気持ちもそれなりに傷ついている事を知って欲しい。
はっきりした気持ちを知らないまま過ごした五年間。
会える約束も保証も無いままに待ち続けた自分の気持ちを。
駅から天香学園への道は、人通りが少なく、この時間帯は学生もいない為に二人きりだ。
学園につけば落ち着いた会話もままならないとわかっていたが、何をどう話せば良いのか凍也は悩んでいた。
チラリと隣を歩く九龍を見ると、驚くほど真剣な目と視線が絡んだ。
ピタリと足を止めて、顔を上に向けて九龍の目を見つめる。
再会した嬉しさと、今までの不安が一気に押し寄せてきた。
両の拳を握り締め、目頭が熱くなってくるのを感じて思わず顔を伏せると、
九龍の両腕が伸びてきて肩を掴まれて強い力で引き寄せられた。
ぎゅっと力をこめて抱きしめられて、手に持っていたバックがドサリと地面に落ちた。
「センパイ」
「ごめんな、凍也」
「なんで謝るんですか」
「五年も連絡しないで不安にさせた」
「べ・・・別に不安になんてなってません」
嘘だった。
でも、素直に自分の気持ちを表に出すのは苦手なのだ。
「俺もこうして再会できる保証が・・・約束ができなかった。だから」
「だから何も言わずにオレの前から消えて、連絡もしなかった?」
無言で九龍が頷く気配を感じる。
両方とも空いた手で、九龍の背中をぎゅっと抱きしめた。
顔を九龍の肩口に埋めて、強めにガリっと布ごしに歯を立てた。
「いっ!」
痛みを感じた九龍がビクリと体を跳ね上がらせると、すっと体を離した凍也はニヤリと笑って、
目尻に溜まった雫を手の甲で拭った。
「センパイ。オレも”一口”もらいましたよ」
「な・・・お前なぁ・・・」
今度は九龍が真っ赤な顔をして、布に少し滲んできた朱を見つめ、天を仰ぐ仕草をする。
(俺達、まだ大丈夫・・・なんだな)
「今はそれで許してあげますよ」
「今は?」
「あとは・・・今日はオレにとことん付き合ってもらいますから覚悟しといてくださいね」
「夜も?」
にやっと厭らしい笑いを向けて、油断していた凍也の腕を引くとすばやく唇を合わせた。
周囲に人間の気配が無い事を確認してから行ったが、それでも凍也は慌てる。
「ボクシングの事ですから!」
「ははっ、だよねぇ~」
二人の視界に二人にとって思い出の学び舎が入ってくる。
通い慣れているはずの駅からの道も九龍と二人で歩くだけで、
こうも新鮮に思えるのかと凍也は目を細めて校門を見つめた。
NEXT → 03.離れた二人の距離(主夷side)
・・・・準備中です・・・・
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ようやく主夷side第ニ話です!
いや~どうしたもんかと思ったけど、なんとかまとまりましたよ(汗)
なんだろ、書いてて後半恥ずかしくなってきたわ。
それよりも次の最終話でどうやってまとめようか今から不安です(苦笑)
次の更新予定は、主皆主side第ニ話ですので、よろしくお願いします。
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>web拍手
いつも拍手ありがとうございます!!
どのジャンル読者様かわかりませんが・・・今回は九龍をUPしました。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。(先日はオリジナルUPしたよ!)
まだ書く小説いっぱいあるんで、また遊びに来てくださいませ~!
投稿者 水天宮拓仄 : 2009年08月10日
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