■ 『 仲直り(2009年3月) 』 水天宮拓仄

珍しい事に夷澤と葉佩が喧嘩をした。

ここのところ、遺跡の探索はずっと一緒に潜っていたはずなのに。

先週末までは目障りなほどに仲良く肩を並べて歩いていたのに、月曜に誘われたのは自分。

やっと夜をのんびり過ごせるようになると思っていたのに、夜中に付き合わされて迷惑顔だ。

「おい、夷澤と潜るんじゃなかったのか?」

「・・・いいだろ、別に。たまには甲太郎も体を動かせよ」

軽々と雑魚敵を倒しながらクエストをクリアしていく葉佩の後ろ姿に声をかけた。

「たまにはって、戦闘は別に俺の手助けはいらねーだろ」

「うっさいな!戦闘に集中できないから黙ってて!」

 ほぼ八つ当たりのように必要以上に攻撃を加えて化人を倒して行く。

「ったく、なんだって喧嘩なんかしたんだよお前ら」

最後の化人を倒して獲物をホルダーに戻して、乱れた息を整えながら皆守を振り返った。

「どうせお前がからかって怒らせたんだろーが」

「違うって」

「じゃあ、なんだよ?」

「スパーリング中に余所見してあいつのパンチ食らっただけだよ」

「はぁ?」

皆守が呆れた顔で声をあげる。

夷澤は葉佩に勝つ事が目標であり、自分の拳が通用すれば嬉しいはずなのに怒るとは。

「自分との勝負中に余所見してたのが気に入らなかったみたい」

「・・・あっそう」

馬鹿馬鹿しい理由に皆守は踵を返して、遺跡の出口に向かう。

「あ、コータ!勝手に動くなよ。危ないから」

「ったく、さっさと上に戻って夷澤のとこ行くぜ」

「なんで?」

「さっさと謝って仲直りしろ。そんな馬鹿げた理由で俺の睡眠を削りたくねぇ」

困惑顔の葉佩を無視して、スタスタと皆守は歩を進めていった。