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| ■ 学校生活で10のお題 01:遅刻の理由 (九龍×夷澤) 水天宮拓仄 |
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―ピピッピピピッピッ
甲高い電子音が狭い部屋中に鳴り響いていた。
音の発信源にのろのろと伸びてくる腕の主は、昨夜も遅くまで地下遺跡に潜っていた宝探し屋・葉佩九龍だ。
「んーうっさいな!」
目覚まし時計を手に取り、慣れた手つきで音を止めた。
覚醒しきっていない脳が正常に動くはずもなく、再びベッドへ身を沈める。そこには、見慣れぬ物が存在していることに気がついて目を見張った。
さっきまでのボンヤリとした感覚は一気に冷めてそこにある物体を確めた。
「…う〜」
その物体は頭まで布団の中に潜って小柄な体を更に小さく丸め、九龍の隣で気持ち良さそうな寝息を立てていた。
「ト…トーヤ?何でここに…って…ああ。…そうだった」
スヤスヤと眠っている後輩は昨夜一緒に地下へ潜り、帰り際に疲れきって自分の部屋がある2階まで行かず、1階にある九龍の部屋へ転がりこんだのだ。
「まったく…人の気も知らないで気持ち良さそうに寝やがって」
起こさないようにそっとベッドから抜け出すと、一向に起きる気配のない後輩の寝顔を見つめた。
普段は口を開けば生意気な事ばかり飛び出すというのに、眠っている時はー。
「思わずキスしたくなるね、トーヤ」
クスリと口元だけで笑って、ギシリとベッドをきしませた。
細心の注意を払いながら眠りこけている凍也に覆い被さる九龍。
ドア1枚を隔てた寮の廊下は、登校前の生徒達が慌しく右往左往している事は気に気にならない程、目の前の存在に意識を持っていかれてしまう。
そっと顔を近づけて一気に凍也の唇を奪った九龍は、次に起きるであろうリアクションを唇を押し付けながら見つめる。その瞳は、いたずらをしかけた子供のようだ。
「んっー?むっ…うううっ〜!」
息苦しさから瞳を開けた凍也の目前には、昨夜一緒にいた先輩のどアップ。
現状を飲み込めない凍也は瞳を白黒させ、ようやく自分の身に起きている事を理解し、目一杯暴れる。
しかし、自分の方が小柄な上に体格が勝っている九龍が上から押さえつけているのでは、抵抗もままならない。顔を真っ赤にして九龍の背中を叩いた。
「いてっ!痛いって!」
ようやく唇を解放された凍也は今だ自分の上に乗ったままの九龍を涙目で睨んで大声で叫んだ。
「あ…あ…朝っぱらから何すんですか!さっさと降りてください!」
ゴシゴシと袖口で九龍に口付けられた唇を力いっぱい拭うと手足をバタつかせた。
九龍は慌てふためく後輩を下にさわやかに笑った。
「おはよう、トーヤ」
語尾にハートマークが見えそうな勢いで告げると、ようやく凍也の上から降りる。
降りた途端にベッドから飛び出すと、予想通りに凍也が食ってかかってきた。
「“おはよう”じゃないっすよ!一体何考えてんっすかっセンパイっ!」
まだ真っ赤な顔をしながら九龍を睨みつける。しかし、当の本人・九龍はニコニコとご機嫌な様子で凍也を見つめている。
「いや、あのな?お前の寝顔があんまり可愛かったから…つい、な」
「そんなの理由にならないっすよ!だいたい俺は男っすから!」
「えー?可愛いもんは可愛いんだよなー。トーヤは誰が何と言おうと可愛いぞ!」
男が男に可愛いを力説&連呼されて嬉しいはずもなく、凍也は思いっきり顔をしかめた。
「気色悪い事言わないでください!頭どーかしてますよセンパイはっ」
怒鳴った後にふと時計を目にした凍也の顔色が見る見る青ざめていくのがわかる。それを面白そうに九龍が眺めている。
「あー!遅刻じゃないっすか!」
大げさな動作で時計を指差すとバタバタと身支度を整えようと周囲を見渡して、自分の部屋じゃないことを思い出したようだ。狭い室内をダッと走り抜けてドアノブを掴むと力一杯空けて廊下に飛び出した。
「もう今から行ってもどうせ遅刻だぞ?ゆっくり行こうぜトーヤ」
「じょ、冗談じゃないっすよ!俺は今まで無遅刻無欠席だったのに!全部センパイのせいっすからねっ」
それだけを叫んで誰もいなくなった廊下を走って自室へ戻り、すぐに降りて来ると九龍にかまわず寮から飛び出して行く。
凍也を見送った九龍の背後でドアが開く音がして振り向いた。
この時間に部屋から出てくる人物は1人しかいない。
「おはよう、コータ。一緒に学校行くか?」
「よう…−って、珍しいなお前がこの時間まで寮にいるなんて」
「たまには遅刻もいいもんだなコータ」
ニヤニヤと笑いながら部屋からカバンを取ってくると甲太郎の後を追った。
「何言ってんだ?八千穂がうるせーな、こりゃ。また俺のせいにされるのはごめんだぜ?」
その言葉を聞いた九龍が思わず吹き出した様子を甲太郎は不思議そうに見つめるのだった。
End |
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