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| ■ 学校生活で10のお題 02:授業中のメール (皆守×九龍) 水天宮拓仄 |
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「おい、九龍!どういうつもりだ?」
終業のチャイムが鳴り教師が退室した直後、九龍の元へ甲太郎が険しい表情で詰め寄っていた。
甲太郎の手には彼自身の携帯電話が握られ、それを九龍の眼前に突きつけた。
「何って?コータの携帯だろ」
眼前の携帯を指差してきょとんとした表情を見せた。甲太郎が言いたい事は充分承知した上での言動だ。
案の定、甲太郎はいつものようにツッコミを入れてきた。
「じゃなくてだなぁ!お前は何でいつもいつも授業中にメールを寄越すんだよ?」
「別にいいじゃん。コータに俺の状況を常に知って欲しいから送ってんのに」
唇を尖らせて反論する九龍に甲太郎はますます怒りの声を上げて、パカっと携帯電話を開けてメールボックスを示した。
受信ボックスには授業中に受信した九龍からのメールが数十件。
「コレを見ても言えんのか?限度ってもんがあるんだよ!しかも、くだらねぇ事ばっかり」
「くだらないって何だよ!コータは俺の事なんか、どうでもいいって思ってんのか?」
どんどん会話の内容が恋人同士の痴話喧嘩じみてくる事に2人はまったく気づかないようである。
そして、ストップをかけるのもいつも通りで八千穂の役目になっていた。彼女しか、この2人の会話に割って入る事ができないだけでもある。
「九ちゃんと皆守君何騒いでんの?」
2人の間に入って両手を広げ、“まあまあ”という仕草をして九龍と甲太郎の顔を交互に見た。
八千穂の介入で冷静さを取り戻した甲太郎が開いていた携帯電話を閉じてポケットにしまう。
「やっちー聞いてよ!コータが俺の事なんかどうでもいいって言うんだ。ヒデーと思わない?」
「え?皆守君そんな事言ったの?ヒドイよ皆守君!九ちゃんは大事な友達じゃないかっ」
拳を振り上げて友情を熱く叫ぶ八千穂に甲太郎はうんざりした様子で口を開いた。
「誰もそんな事言ってねぇだろ。ったく大げさなんだよ九龍は」
懐からアロマパイプを取り出して咥えるとドカっと腰を下ろした。
「大げさ?全然大げさじゃねーぞコータ!」
「あーっうるせぇな。とにかく、もうメール送ってくんなよお前」
「メールって?」
最初から話が通じない八千穂が疑問を口にすると、甲太郎は携帯電話をポケットから取り出すと八千穂に向かって放った。
とっさの事だったが八千穂は上手く携帯電話をキャッチするとメールボックスを開いて、八千穂が驚きの声を上げた。
「わっ九ちゃんばっかりだね!」
「だろ?時間見てみろよ。さっきの授業中だけで30通ってありえるか?」
呆れた口調で言いながら目の前に立っている九龍を下から睨み上げた。
「すごいねー!何が書いてあるの?」
さすがに人のメールまで読む事は気が引けて八千穂は甲太郎に携帯電話を返しながら九龍を振り返った。
「俺の気持ちを実況してんの」
「九ちゃんの気持ちを実況?」
頭の上に「?」マークが見える。
「で、それを受け取った俺はどうすりゃいいんだよ。返事しろってのか?」
心底迷惑そうな表情を九龍に向けると、甲太郎の動きが止まった。
今まで不敵な表情でどんな苦情も軽く流してきた九龍が目をふせて唇を噛み締めているのだ。その表情に甲太郎の心臓がドキリと高鳴る。
「そんなに俺からのメール迷惑かよ?」
普段より幾分か低い声で九龍が呟いた。
いつもの九龍と違うのは八千穂も気がついたようで、戸惑ったような表情を浮かべている。
「九ちゃん?」
「わかった。もうコータにメール送らねーからっ絶対にもう2度と送らないからー」
怒っているような泣きそうな声で九龍が言葉を発する。慌てて甲太郎はその言葉を遮った。
「い、いや、その…。別に送ってもいいぜ、メールくらいは…な、九龍」
「マジ?」
甲太郎のその言葉を待ってましたとばかりに、九龍のテンションが上がった。声でわかる。
「本当にいいんだな?コータ!」
「え?あ…いや、まあ…じゃあ、授業中は控えめにな?…って」
嬉しそうにはしゃぐ九龍を目にして甲太郎は自分が失言したことにやっと気づく。
横には嬉しそうに笑う八千穂。
―しまった!
頭を抱えた甲太郎のポケットの中。
いつもの着メロがノックアウトを食らった時のリングゴングのように聞こえた。
End |
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