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| ■ 学校生活で10のお題 07:全校生徒公認 (皆守 → 九龍 ← 夷澤) 水天宮拓仄 |
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「おい、九龍」
「ん、なに?コータ」
ここは、天香学園の生徒達が学食代わりに利用してるファミリーレストラン・マミーズ。
不機嫌な表情でパイプを咥える男子生徒は、皆守甲太郎。その正面で、コーヒーカップから唇を離して甲太郎の呼びかけに応えた。
「なんで、コイツがいるんだ?」
視線を九龍から、九龍の隣に仏頂面で座っている後輩・夷澤凍也に移した。その甲太郎の視線を鋭い目つきで受け止めた凍也は、
わざとらしく眼鏡を指で押し上げる。
「それは、こっちの台詞っすよ、皆守センパイ。俺は九龍センパイが珍しく飯に誘ってきたから、わざわざ来てやったんすよ。
それなのに、あんたも居るとはね」
「…お前ら、なんでそんなに仲悪いの?同じ仲間じゃねーの」
コーヒーカップをソーサーに戻して、二人を交互に見つめると九龍は笑顔を浮かべて、二人に同意を求めるがそれは叶わなかった。
「俺は別に仲間になったつもりはないっすよ。九龍センパイが“どうしても一緒にあそこへ行って欲しい”って言うから、
仕方なく付き合ってやってるんです」
「俺だって仲間っつうか…巻き込まれたみたいなもんだが…ここまで来たからには最後まで見届けたいって感じなんだがな」
二人から睨まれながら九龍は、困った表情を浮かべながら視線を宙に泳がせる。
「えーと、じゃあ…店出る?」
「いや、俺はカレーを頼んだし。腹減ってるから食っていくよ。お前の分も頼んでおいたからな」
「俺だって今日はセンパイと飯食べるつもりだったから、何も用意してないっすから」
甲太郎と凍也の視線が敵意剥き出しで交わされるのを、
苦笑を浮かべながら見つめると九龍は温くなったコーヒーをいっきに飲み干した。
(これは…愛されてるって事だよなぁ?)
椅子の背もたれに背を預けながら軽く反って店内を見渡すと、
自分達を他の生徒達がくすくすと笑いながら見ていることに気づく。
九龍が店内を観察していると気づくと、彼らは軽く視線を泳がせて自分達から視線をそらした。
その視線の意味に気づくと、九龍は苦笑する。どうやら自分達は生徒達に、色々な意味で注目を浴びているらしい。
「九龍君どうしたんですか?」
「奈々ちゃん!待ってたよ〜」
注文した料理を両手に持って奈々子が九龍に声をかけてきた。
「そんなにお腹すいてたんですか〜?おまちどうさまですっ」
テーブルに料理を並べて笑顔で去っていく奈々子を見送って、
九龍は目の前に出されたカレーライスを食べようとスプーンを手に取る。
それに続いて甲太郎と凍也もそれぞれの料理を食べ始めた。
「やっぱカレーはうまいぜ、なぁ九龍?」
カレーを食べているせいか、甲太郎の機嫌は幾分か回復したらしい。笑みを唇に浮かべながら九龍に話かける。
それに九龍もうなづこうとした途端、凍也が口を開く。
「皆守センパイ、またカレーっすか。九龍センパイも大変っすね、この人につきあって毎食毎食カレー食べてるんでしょう?
今度、俺がうまいもん作ってあげますよ」
にこにこと嬉しい言葉を投げかけてくれる凍也に九龍の頬がほころぶが、それが甲太郎の目に止まってしまう。
「いいんだよ、九龍もカレーが好きなんだから。な?九龍?」
スプーンを咥えたまま、やや上目使いに同意を求められて九龍は一瞬ドキリとする。
「…えーと…」
どう二人に応えて良いのか九龍は言葉に迷う。二人にそれぞれ愛情はあるが、それは比べる事のできない感情だった。
この二人からは、自分に対する愛情を感じている事もたしかで…
二人の気持ちを考えるとなんと応えて良いのかわからなくなってしまった。
(まるで二人に愛の告白を同時にされているみたいだ…嬉しいんだけど…困ったな)
視線を泳がせると、また周囲の視線が自分達に集中している事に苦笑しかでない。どうやら自分を中心とした、
この三角関係の流れを生徒達は興味津々で見物しているようだ。
「九龍センパイ?どうしたんすか、俺の料理食べたくないって事っすか」
ほんの少し寂しい表情を見せる凍也にもドキリと心臓が高鳴る。甲太郎は、言葉を出さずに目の前にあるカレーを
ゆっくりと自分を見つめながら味わっていた。
「いや、凍也の料理はもちろん食べたいよ。楽しみにしてる」
「ホントっすか?じゃあ、絶対っすよ!」
嬉しそうな表情をした凍也を見ると自分の心も弾む。正面に座る甲太郎をチラリと見ると、鋭い視線を感じた。
弾んだ心が一瞬で止まり、今度は申し訳ない気持ちになる。一体、自分は誰が好きなんだろう?
好き…という感情は、もちろん自分に関わる人間すべてに少なからず持っている感情だ。
でも、甲太郎や凍也に抱く感情は特別だった。二人もその感情で、自分を見ている事も気づいている。
(…どうやら、それに気づいているのは俺だけじゃないみたいだけどね…この分じゃ、全校生徒全員わかってるなぁ。
コータもトーヤも気づいてないみたいだけど…)
昼休みも終わりが近くなってきて、三人は急いで料理を口の中に納める。
「ごちそうさま」
ほぼ同時に食べ終わった三人は席を立つ。店を出るまで背中に視線を感じながら、
九龍は甲太郎と凍也の真ん中に体を入りこませて、二人の肩に腕を回した。
遠ざかる店から、ざわめきが聞こえてきたがそれは無視。
「ど、どうしたんすか、センパイ?歩きにくいっすよ」
「ったく、何してんだか」
そう言いながら二人共、九龍の腕を振り払うようなことはしない。
肩を抱かれながら、校舎へ静かに歩を進めながら穏やかな表情を浮かべていた。
「俺さ……」
「ん?」
「何っすか?」
二人の肩を掴む手に力を込めて、目を瞑って九龍は口を開いた。
「愛してんだよね」
「ああ」
「はい」
二人共同時に九龍にしか聞こえない程度の声で応えると、二人同時に九龍の隣から離れた。
「じゃあ、俺はこれで。次、移動なんで急ぎます!センパイ、料理楽しみにしててくださいね!」
走り去る凍也を微笑みながら見つめ、次に隣を歩く甲太郎を見つめた。
「屋上、行くか?」
「…だな」
頷くと先を歩く甲太郎の背中を愛しそうに見つめる。
「…まだ、いいよな?」
end |
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