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| ■ 学校生活で10のお題 09.テスト勉強 (九龍×夷澤) 水天宮拓仄 |
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クラブ活動を終えて、着替えを済ませた九龍の背後から凍也が声をかけてきた。
「センパイ」
「ん?」
着替える動作を止めずに、九龍は凍也の呼びかけに応える。
「明日から二週間クラブ休みですから」
「え、なんで?」
「なんでって・・・期末テスト期間に入るからですよ」
何を言っているんだろうと言わんばかりの表情で凍也はさっさと自分の着替えを終らせた。
凍也の言葉に手を止めた九龍は抗議の声をあげる。
「えー!せっかく、お前との手合わせも面白くなってきたところなのに休み?
テスト勉強なんてやらなくても平気だろ、お前も俺も。2人だけでも来ようぜ!」
確かに凍也は、成績優秀で通っているし、通常時ならテスト勉強など必要がない学力の持ち主だ。
九龍は、凍也ほどの成績優秀者ではないが普段の学力でこの学園のテストに対応できる。
「・・そうはいかないんですよ・・・最近は、ちょっと」
眼鏡をかけて困った表情を浮かべる凍也を横目に自分の着替えを完了させるべく、動作を再開させた九龍。
着替え終えて荷物を持つと、凍也を促して更衣室を出た。
「最近は・・・ってどうしたんだ、最近?」
その言葉に凍也は口を開こうとしたが、少し頬を紅潮させて唇を閉ざした。
言えない。自分の勉強がおろそかになってきた原因が、目の前の先輩だなんて事は。
「いえ・・・中間が思ったより良くなかったんで、期末で巻き返したいんですよ」
苦笑混じりにそう言うと、いつもの様に寮へ向かう道を並んで2人は歩いて行く。
歯切れの悪い凍也を横目で見つめながら、九龍は何かを思いついたのか口元に笑みを浮かべていた。
その夜。
凍也の部屋に九龍が突然訪ねてきた。
ーゴンゴンー
この遠慮がない叩き方は、一人しかいない。扉の外から声がかかる前に凍也は返事をした。
「センパイっすか?開いてますよ」
机に向かってテスト勉強を始めていた凍也は扉の方に顔を向ける。
そこには、マグカップを両手に持った葉佩九龍が扉を開けて入ってくる所だった。
空けた扉を足で閉めていたが、それは目を瞑ってやることにする。
「お、勉強してたんだな。エライエライ!これ、やるよ」
「ありがとうございます」
ちょうど喉が渇いてきたので、そろそろ冷たい飲み物でも飲もうと思っていた所だった。
九龍が持ってきたマグカップには、冷たいミルクが満たされていた。
ちなみに九龍が自分で飲むために持ってきたマグカップにはブラックコーヒーのようだ。
部屋の中にミルクの甘い香りとブラックコーヒーの香ばしい香りが交じり合う。
「どうしたんすか、珍しいじゃないっすか?」
この時間帯なら、九龍は夜の校舎を徘徊したり遺跡の中に潜ったりしている頃のはず。
自分が守る階層を攻略してから一ヶ月も経っていない。
凍也が知る限りでは、後は最下層の攻略を残すのみである。
ここのところ、九龍は毎日遺跡に潜り明け方近くに戻ってくるような生活を続けていたのを
凍也は知っていた。自分がバディに選ばれる事は少なく、今はほとんどクラスメイトの
皆守甲太郎と八千穂明日香を引き連れて潜っているとの話を聞いていた。
「さっきの話なんだけどさ」
「・・・さっきの?なんすか?」
「ほら、お前が最近勉強ができないって話あっただろ?」
「あ・・あ、はい」
内心ヒヤリとする。
九龍が遺跡に潜り始めてから、自分の階層を攻略するまでは九龍をどうやって止めるかを。
そして、自分を解放してくれた九龍が自分以外のバディと遺跡に潜っている日は九龍の身を。
稀に自分がバディとして選ばれた日は、舞い上がったような気分になりつい無茶をしてしまう。
結局、自分が勉強に集中できないのは、目の前の男が関係しているからなのだ。
それは、自分の気持ちが九龍に向いているがために。
「それって、もしかして俺のせいかな〜?って思ってさ」
ブラックコーヒーを飲みながら笑顔を向けてくる九龍の視線から、自分の視線を外す。
図星だった。
何もかも、この男にはわかっていた事だったのだ。
照れ隠しに受け取ったマグカップを口につけ中のミルクを飲むが、ほとんど味を感じなかった。
「そんなことないっすよ。気のせいじゃないっすか?」
唇から離したマグカップを机に置くと、机に向きなおしシャーペンを手に持つ。
動揺を隠し切れない凍也の背後に近づくと、そっと両腕を凍也の首に回した。
「・・・っ!セ、センパイ?」
「ごめんな。俺のせいなんだろ?」
「だから、違いますって!」
背後から包まれながら凍也は否定する。シャーペンを持った手が、少し震える。
心臓が五月蝿いほどに脈打つのが九龍に伝わってしまうのではないだろうか?と思う。
「な、俺のせいなんだろ?トーヤ・・・正直に言えば、俺が勉強見てやるよ?」
耳元に唇を当て、熱い息をふきかけながら九龍は低い声で囁きかけた。
その熱い感覚に凍也が嘘をつき続ける事ができるはずもなく。
「・・・そ、その通りですよ・・・あんたのせいで何もできなくなっちまったんだから、責任とってくださいよ」
「よし、認めたな。最初からそう言えばいいのに」
そう言いながら、凍也の耳にゆっくりと舌を這わせそのまま首筋を辿る。
「ちょ・・・センパイっ!」
ぞくぞくとした感覚が全身を駆け巡るのを必死に耐えながら凍也は声を上げ、椅子から立ち上がる。
その動作でようやく九龍の腕から解放された凍也は、白い肌を赤く染めながら自分の両肩をぎゅっと抱き締める。
若干、荒くなった呼吸を整えながら九龍を見つめる。少しの期待をこめながら。
「じゃ、何の教科からやる?」
さっきまでの雰囲気を忘れさせるような表情で九龍が凍也に問いかけた。
その九龍を前にカッと頬を赤くした凍也はほっとしたような・がっかりしたような気持ちを抱えたまま
机から筆記用具を取り出し、九龍がいるテーブルの前に自分も腰を下ろした。
「がっかりした?」
「・・・・!?」
いたずらっ子のような表情を浮かべ、九龍が凍也に笑いかける。
その九龍に向かって無言で拳を突き出す凍也の顔は真っ赤に染まっていた。
「ははっかわいーなぁトーヤは」
「からかうだけなら、出て行ってくださいよ!俺はテスト勉強するんですから!」
「まあまあ!俺が出す問題解けたらごほうびやるからさ」
得意そうに提案する九龍を疑惑の目で見つめる。
「正解する毎にキスしてやるよ」
片目を瞑って唇を尖らす九龍を前に、溜め息をつきながら凍也は先ほどまでの息苦しさを忘れる事ができた。
「・・・じゃあ、間違った場合は?」
「俺にキスしろ」
「それって、どっちにしてもセンパイが良い思いするだけじゃないんですか?」
握り締めた拳をプルプルを震わせて凍也はゆっくりと立ち上がった。
それを見た九龍も立ち上がる。
「そんな事ないって。どっちにしてもお前も嬉しいだろ?俺とキスできるんだぜ?」
その言葉を聞いた凍也が唇をわななかせ、顔を真っ赤に染め、握り締めた拳を思い切り九龍に向けて振り上げた。
「やっぱ、俺の為に死んでくださいよ・・・センパイ!」
結局、期末テストが終るまで凍也はまともに勉強する事ができず・・・
「俺の成績下がったらセンパイのせいですからね」
「その時は責任とってやるよトーヤ」
テストも終わり、2人でボクシング部のリング上で睨み合っていた。
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