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| ■ 小説書きさんに暗〜い20のお題 04.自殺 (皆守×主人公) 水天宮拓仄 |
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九龍は今、同じクラスで寮で隣の親友である皆守甲太郎の部屋で並んで
ベッドに寄りかかりながらDVDを鑑賞していた。
甲太郎の持っているテレビは高画質で大画面、九龍は甲太郎のテレビでDVDを見るのが大好きで、
週末にはいつも夜中まで居座っていた。
見ているDVDは悲しい恋愛物語。
登場人物の1人が不慮の事故で亡くなり、その登場人物の恋人がその後を追うというシーンがあった。
「なあ、コータ」
「ん?」
アロマパイプを咥えながら、なんとなく映画を見ていた甲太郎がダルそうに返事をする。
もう彼にとってこの時間は睡眠するはずの時間帯に入っていた。
九龍に付き合って遺跡へ行っている時ならまだしも部屋でのんびり過ごしていると、睡魔が襲ってくる。
「お前、俺が死んだら死ぬか?」
いきなりな言葉に思わずパイプを勢い良く噴出し、少し離れた場所にあるゴミ箱に入った。
「ああ?何、言ってんだ」
四つんばいでゴミ箱まで近づくと、中に手をつっこんでパイプを拾って位置に戻る。
「なあ、死ぬ?」
「だから、お前は何言ってんだよ、突然」
映画そっちのけで甲太郎の顔を覗きこんでくる九龍の目は、なぜか輝いている。
自分が死んだら・・・という仮定の話で、何をそんなに嬉しそうな顔をしているんだか。
と甲太郎は呆れた表情が自然に出てしまった。
「あー!その顔は”何馬鹿な事を言ってやがる”とか思ってんだろ?」
「その通りだ。トレジャー・ハンター、さすがに冴えてるな」
ゴミ箱に入ったパイプをベッドの上に投げてあったタオルで丹念に拭いて、
再び咥えて香の素を差込みライターの火を近づけた。
「ふう〜アロマがうまいぜ」
自分の言葉を真剣に受け止めてくれない甲太郎を前に、九龍は子供のように頬を膨らませる。
「なんだよ、人が真剣に聞いてんのに、その態度は!」
「真剣にって・・・お前は自分が”死ぬ”っていう前提の話を嬉しそうにだなぁ」
ガリガリと頭をかきながら、隣に座る九龍を正面から見据えるように体の向きをかえた。
「だって、俺は本当にいつ死んでもおかしくないだろう?ここの墓で死ぬ可能性だってゼロじゃない」
「それにしたってだなぁ、自分が死ぬっていう話を嬉しそうに話すなって。縁起でもねぇ」
「大事な問題だろ?いいから、考えろよ真面目に」
九龍と甲太郎は同性ながらも深い関係にある恋人同士だった。
少なくとも九龍にとって、甲太郎はなくてはならない存在になっている。
潜入場所で、本気の恋愛などもってのほかだと思っていたはずなのに、学園で学生として過ごし、
遺跡に潜ってお互いに命を預けて行動しているうちに、愛情が芽生えていったというわけだ。
「お前が死んだら・・・か?」
パイプを前歯で噛み上下に振れる。
ベッドに上半身を預け宙を眺めながら甲太郎は想像してみる。
墓の最奥。
対峙する自分とボロボロの九龍。
止めの蹴りが九龍の急所に決まり、倒れたあいつは二度と動かなくなった。
はりつめる空気と惨酷な光景・・・それはまさに生き地獄に等しい。
自分は誰にも悟られていないはずだが、生徒会役員の副会長。
墓守りの役目からは、この学園から解放されない限り逃れられない。
以前も好意を持っていた人間を自らの手で屠った。
そして、今回も自分が九龍に近づいたのは墓守りとしての役目があればこそだ。
だが、まだ九龍は遺跡の半ばまでしか到達していない・・・・。
予定より近づきすぎて、恋人などとい幻想的な関係になってしまった。
そして、この甘い関係を幸せに感じる自分がいる事も自覚していた。
今では、九龍が遺跡の謎を暴けず、共に卒業を迎える事を想像する時もある。
「お前が死ぬなんて・・・ありえねぇだろ。殺したって死なねぇくせに」
軽く笑って、今の会話をどうにか方向転換させたい。
確実に九龍の事を大切に思っている自分が、いつ自分の役目を”敵”となるコイツに
懺悔するように話してしまう事を恐れた。
自分は、墓守りの要でもある。
目の前に現われた時、今の甘い感情を捨てて排除しなければならない。
「死ぬさ・・・例えば、お前に殺されたりすれば、確実に」
何も知らないはずの九龍が、まるで核心をつくような発言をする。
「なんで、俺なんだよ?」
「いや、どうせ死ぬなら好きな相手に殺して欲しいなと思って」
微笑ながら自分の右手で銃の形を作り、自分のこめかみに銃口を模した人差し指を押し付けた。
「何言ってんだお前は、俺を犯罪者にする気かよ?」
ハハっと笑い上半身を起すと、正面に九龍が笑顔を消して見つめてきた。
「俺はお前が死んだら死ぬよ。自殺する」
真剣な目で訴えてくる九龍から顔を背けることしかできない。
自分はそれができない・・・立場的にできるわけがない。
でも、感情は。
「ああ、俺もお前が死んだら生きてないだろうな」
左手を床につき、空いている右手で九龍を引き寄せて胸に抱き締めた。
規則正しい心音が心地よく九龍の耳に響いていく、生きている証。
今は、この幸せな時を大事にしよう。
一緒に過ごせる時間は残り少ないかもしれないが、行き着く先は同じのだから。
end |
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