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■ 素直になれない人へ向けて5の台詞
03.「言わないのに分かってほしいだなんて、傲慢で甘ったれた我侭だよ」 (皆守×九龍) 水天宮拓仄 |
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もうすぐクリスマスになろうという時期、3年C組の皆守甲太郎は今日も寒空の下、
天香学園の屋上で凍えそうな風を少しでも避けれる、校舎に背を預け愛用のアロマパイプをふかしていた。
いつもと違う所と言えば、彼が瞳を開けた状態で自分の携帯を開いている。
携帯画面を見つめながら、何かのボタンを押しては、口元を緩ませ、時には笑いが声となって出てしまう。
一人で屋上の校舎の陰で、携帯を眺めながらニヤニヤする甲太郎の他には人影は無い。
それはそのはずで、今は昼休みに入る前…要するに授業中というわけだ。
いつものように授業をサボり、屋上で眠ろうと思ったが風が冷たく、屋上の地面もそれと同様で、さすがの眠気も覚めてしまっていた。
眺めている携帯の画面が、切り替わりメール受信を知らせる画面と音が出た。
音は、送信者を限定できるように設定している為、メールを見る前に送信者の名前はわかる。
「九龍か」
そう呟くと、受信ボタンを押しメール文章を画面に写して、送られてきた短い文章を目で追った。
送信日>2004年12月20日11:48:39
送信者>九龍
sub>今どこ?
昼飯どこで食べる? |
授業中に大きな図体を縮こまらせ、机の下に手を入れてHANTを操作する姿を想像して、
甲太郎は笑みを浮かべながら返信ボタンを押した。
「ひ・る・め・し・は・お・く・じょ・う・で・た・べ・る…く・る・と・き・に・か・れ・−・ぱ・ん・か・つ・て・こ・い・よ」
一文字ずつ打つごとに、発音しながら、書いたメールを確認する事もせずに送信ボタンを押す。
すぐに九龍からの返信が届いて、そのまま開いた画面を見つめてメールを開く。
送信日>2004年12月20日11:51:08
送信者>九龍
sub>re:re:今どこ?
らじゃー!速攻行くから待ってろよー
ε=ε=ε=(ノ^∇^)ノ |
「相変わらずテンション高けえな」
クスクスと笑いながら、受信したばかりのメール画面を閉じて、さきほど読んでいたメール画面を
開いて読んでいるうちに、昼休みを告げるチャイムが校舎に鳴り響いた。
そして、屋上でバタバタと駆け上がってくる足音が甲太郎の耳に届いたのは、昼休みのチャイムから5分ほど経過した頃。
バタン!と大きな音がして、校舎から屋上へ続く扉が開かれるのを振動と音で感じ取った甲太郎は、
扉を開けた主を確認するために冷たい地面に体を投げ出し、校舎の陰から顔を覗かせた。
扉を開けてキョロキョロと辺りを見回す男子生徒は、甲太郎の親友・葉佩九龍だった。
「おい、九龍。ここだ」
地面に横たわったまま手を振ると、振り返った九龍の表情がパっと輝く。
「コータ!なんだよ、この寒いのに昼寝か?」
タタっと駆け寄り、手に持った茶色の紙袋を投げて寄越す。
器用にそれを受け取った甲太郎は、九龍が自分の隣に座るまでには体を起こして、再び校舎の壁に背を預けていた。
「サンキュー」
「それで、今夜も頼むな」
「たったこれだけでかよ!」
そう言いながらも笑顔で、カレーパンの袋を破り中身にかぶりついた。
つい、足元に出しっぱなしの携帯を閉じるのを忘れてしまい、目ざとい九龍に開いていた画面を見られてしまった。
「何、見てたんだよ?誰からのメール?俺が出したやつじゃないよな。こんなダラダラ書かないもん俺」
九龍の言葉を聞いて、カレーパンを頬ばったままにも関わらず思わず吹き出してしまい、
喉にパンのかけらが転がり落ち甲太郎は激しくむせた。
ゲホゲホとむせる甲太郎の背中をさすりながら、彼用に買ってきたコーヒー牛乳の封を開けてストローを挿し、苦しむ親友に渡す。
「大丈夫か、コータ?どうしたんだよ。俺、なんか変な事言ったか?」
表情にハテナを浮かべながら、甲太郎が落ち着くのを背中を優しくさすりながら待つ九龍は、地面に置かれたままの携帯を手に取り、目を落とした。
「送信者…葉佩…って、俺?こんな長いメール出したっけ?」
「ゴホッ…ん…ああ…サ、サンキュー」
ようやく落ち着いた甲太郎が九龍から受け取った牛乳を飲み、カレーパンの残りを一気に口に放りこんで、飲み込んだ。
「そのメールか?確かにお前が俺に送ってきたヤツだぞ。転入してきて間もない頃だったがな」
自分の携帯を見ながら首を傾げる友の手から、携帯を奪い返す。
すでに自分の分を食べ終えた九龍のすぐ横に移動し、2人で画面が見えるように肩を寄せた。
いつの間にか、どんなにこの男が近くにいても平気になった自分が信じられない。
常に他人との間にボーダーラインを引いて接してきていた自分に、短期間にこの男は自然に近い存在になっていた。
「転入してきたばっかで、お前も俺に気を遣ってたんだろ?今は全然だけどな」
「えー!俺、これでもコータには気遣ってんだぞ」
ブーブーと唇を尖らしながら文句を呟く九龍にメールの画面を開いて見せてやる。
送信日>2004年9月30日17:06:53
送信者>葉佩
sub>頼みがある
葉佩だけど。
今夜、皆守時間あるかな?
悪いんだけど、墓場に付き合ってくれないか?
八千穂ちゃんも誘ったから3人で行きたいんだ。
またお昼、マミーズで好きな物奢るからさ。
都合ついたら、昨夜と同じ場所に21時待ち合わせでよろしく!
じゃあ、またメールするな! |
メールを読んで、九龍も思わず吹き出していた。
「何、これ!俺、めちゃめちゃ気遣ってんじゃん!ありえねぇ!誰、これ!」
「誰って、お前だろーが」
笑いながら、違うメール画面を開き九龍に見せつけるかのように差し出す。
送信日>2004年11月26日19:59:37
送信者>葉佩
sub>大至急!
ごめん、甲太郎!今すぐ墓場まで来てくれ!
急に取手が来れなくなってさ〜替わりに頼むよ。
じゃあ、待ってるから!
\(^_^=^_^)/ ヨロシク♪ |
「この辺からは、もう俺の都合考えなくなってるよな。お前」
横目でチラリと視線を流すと、苦笑を浮かべて、急に甲太郎の肩に手を回し大笑いした九龍。
「まあまあ!それだけ、俺とお前が仲良くなったっていう証拠だろ?気にすんなって!」
バンバンと肩を叩かれ、痛いと表情で表すが九龍はおかまいなしだ。
「で、これがつい最近のだ」
送信日>2004年12月16日20:28:09
送信者>九龍
sub>(無題)
行くぞコータ!
今から迎えに行くからな〜
へ(^^へ)))))(((((ノ^^)ノ うほほー |
「確か、この日は眠たい俺を強制的に連れて行ったよな?最後の顔文字なんて、もはや理解不能だ」
少し怒り顔を作って、すぐ横にいる九龍を軽く睨みつける。
その表情に、困った表情を見せながら九龍がぐっと顔を近づけて唇を合わせようとした。
あまりに急な事で驚いたが、咄嗟に動いた自分の反射神経の良さに、
甲太郎は嬉しいやら悲しいやらで複雑な心境だ。
「わわっ急に何すんだよ九龍!びっくりすんだろっ」
その反応に驚いた顔を見せる九龍。
「え、俺達ってこーゆー関係だよね?もう、さ」
「は…?何を言ってんだ、お前は」
「いや、だからさ…俺とお前は、こーゆー事してもおかしくない関係って言うかさ…親友とは違うよね?」
何が言いたいのかは、なんとなく察することはできるが、はっきりとした形でお互いに伝えた事はない。
目の前で高校生男子が両手をモジモジとさせ、少し俯き下限に上目使いで自分を見つめてくる。
普通なら、同姓にそんな事をされても気持ち悪いと感じるだけだが…
なぜか自分は、それが“可愛い”と見えている事からして、九龍が言いたい事もわかる。
ぶっちゃけ、あのまま唇を合わせたって後悔しないし、それ以上の事に及んでも後悔しないだろう。
だが、自分達は親友であり、恋人でもなんでもない。
「俺はお前の事、親友だと思ってたけどな」
「え?マジで!嘘だろ、コータ」
今度は、両手で肩を掴みガタガタと揺すってきた。
九龍を親友だと思っているのは本当だし、なんとなく自分も親友以上の間柄だな…とは感じてはいる。
だが、はっきりとした言葉では聞いた事もないし、自分からは言わない。
「お前と俺は、言わなくてもなんでもわかりあえるんだと思ってたのに!」
「まあ、たいがいの事はわかるけどな」
そう言う甲太郎に、コロコロと表情の変わる九龍は、今度は笑顔を向ける。
「じゃあ、俺が言いたい事も、今やりたい事もわかってるよな?」
両の瞼を閉じて少し顎を上げる九龍を目の前に、甲太郎は目の前で瞬間を待つ男の額を人差し指ではじいた。
「イタっ!」
さほど痛くしたつもりはないが、反射的に出た言葉なのだろう。
はじかれた額を両手で押さえながら、攻めるような視線を甲太郎に向ける。
「言わないのに分かってほしいだなんて、傲慢で甘ったれた我侭だよ」
甲太郎は微笑みながら、目の前で惚けたような表情を見せる九龍の後頭部に右手を回し、ぐいっと引き寄せた。
「こ…コータ?」
額同士をくっつけて、笑みを深めて静かに九龍だけに聞こえるような声で囁いた。
「どうする?親友のままが良いか?それ以上が良いか?」
「…ず、ずるいぞお前」
視線を合わせようとしない九龍の頬が赤く染まるのが至近距離で感じる事ができる。
「言わないなら、俺とお前はこの先ずっと親友のままだぜ?」
少しだけ顔をずらし、今度は鼻先同士をくっつけ、お互いの呼吸を感じるほどに近い。
「…わかったよ。言うよ…言ったらキスしてくれるのか?」
「お前次第だな」
クスリと笑って、九龍の言葉を待つ甲太郎はゆっくりと瞳を閉じて、唇を近づけた。
End |
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