■ 『 LAST Party 』 水天宮拓仄

 学園中が静寂に包まれ、階段をゆっくりとのぼっていく足音さえも周囲に響き渡り、
年季を感じさせる薄汚れた扉を開くと、そこには今一番会いたかった者の後ろ姿が視界に飛び込んできた。
「ん?」
 静寂に響いた扉が開く音に声の主は振り返る。一瞬浮かんだ嬉しそうな表情が、すぐにいつも見せる生意気な表情に変わった。
「センパイじゃないっすか。どうしたんすか?まさか、オレに逢いに来たとか言わないで下さいよ?」
「その、まさかだったら?」
 真剣な眼差しを受けた凍也がすっと床に視線を落とした。
 今まで見たことがない九龍の視線が自分に突き刺さる。
「なんで、そんな目で…そんな事言うんすか?まるで、これが最後だって言ってるみたいじゃないっすか」
「凍也」
 いつものからかうような声音はなく、低く頭の芯まで響く九龍の声。
 嫌な予感が凍也の脳裏に浮かび、ぎゅっと両の掌を握り締め、九龍の目を見つめた。
「これが最後じゃないっすよね?」
 その言葉に九龍は言葉を発しようとはしなかった。
 それは九龍の返事…肯定を意味した。
 今夜、墓に潜れば任務に成功しても失敗しても、この学園での生活が最後になる。
「最後じゃないっすよね?セ…九龍さん!」
 九龍の両肩を掴み強く揺さぶる。
「これが、最後だ。凍也」
 ぐっと凍也を引き寄せると強引に唇を奪う。
「んんっ」
 頭を抑えつけ深く唇を合わせる九龍は、だんだんと全身から力が抜けていく凍也を解放し、
近くにある椅子に座らせて優しく微笑んだ。
「だ…だったら、オレを今夜一緒に連れて行ってくださいよ」
 座ったままの凍也がガクガクと震える自らの膝を両手で抑え目の前に立つ九龍を見上げる。
「死ぬかもしれないぜ?」
「その時はオレも一緒ですよ」
 その言葉を発した途端、凍也の震えはピタリと止まっていた。
「そうか」
「はい」
「サンキュー凍也」
 座ったままの凍也に手を伸ばすとぐっと手を握り、立ち上がらせる。
「じゃ、今夜も暴れてきますか」
「もちろんっすよ、センパイ!」
 手を取り合い、二人は軽やかな足取りで白い花びらが散る中…最後の宴へ
the end