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■ 選択式お題より10個抜粋
02.気付けば隣に君がいた (サンジ×ルフィ) 水天宮拓仄 |
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以前から自分は一人で居る事が楽で、仕事の為以外では独りで過ごす事が多かったはずだ。
料理をする時も仲間の料理人を厨房に居れない事すらあったし、夜は約束が無ければ独りで過ごしていた。
だが、今は誰も居ない・・・いや、あいつが居ないという事に違和感を覚えている。
こんな感覚を抱くようになったのは一体いつ頃からだったのか思い出せない。
それほど自然な事だったのだろうか。
今、サンジはサウザンド・サニー号のキッチンに続いてあるダイニングで一休みしていた。
時間はクルー達が熟睡している頃、夜も明けきる前の真夜中である。
いつもなら、もう少し明るくなってから朝食の準備に取り掛かるのだが目が覚めてしまい、そのまま起きている。
たっぷりとある時間を有効に使おうとキッチンへ来て、翌朝のスープを手の込んだものにしようと思った。
野菜や肉を刻んで下準備を終えると大きな鍋へ順序良く投げ入れて、あとは朝食の時間までことことと弱火をかける。
メインの料理を作り始めるには、まだまだ早いので鍋を眺めながら椅子に腰を下ろして煙草を吹かしていた。
ふう〜っと肺まで吸い込んだ煙を吐き出し、静まり返るキッチンや外の物音に耳を澄ます。
予想通り、音も気配も感じる事は無い。
その事に何故か落胆する自分に首を傾げたサンジは小さく舌打ちをした。
「ちっ・・・この時間じゃあ、さすがに暇だな。あいつでも起きてれば夜食の一つでも・・・」
独り言を呟いて、自然と足が向かったのは鍵付きの冷蔵庫の前。
立ち止まって冷蔵庫の鍵を片手で器用に解除するとギッと音を立てて重たい扉を開いて、中を覗きこんだ。
冷蔵庫の中は自分自身で管理しているために、しっかりと整理されており、残り物も無い状態だ。
何か簡単に作っておいて、あとで一日に何食食べても足りないと言うルフィにでもと考えた時点で気づいた。
次の港まで約三日程度と昨日にナミが言っていた事を思い出し、冷蔵庫の中身と食料庫の在庫を思い浮かべる。
三日分のクルー全員の三食分と一日一度のスウィーツに毎晩のように強請りにくるルフィの夜食分でギリギリだ。
すでに今夜は眠りに入る前のルフィに軽食を作って食べさせたばかりである。
「なんで、あいつの為に余計な物まで作ってやろうとか思ってんだ俺は。そんな余裕ねぇのに」
自嘲気味に笑い冷蔵庫の扉を閉めようとしたが、完全に閉まる直前に思い直して中に腕を突っ込んでいた。
やはり何か作っておいてやろうと苦笑しながら食材を取り出し、キッチンに向かう。
サンジが食材を前に包丁を持って立つと、外の方からパタパタと小さな足音が近づいてくる事に気がついた。
「サンジ〜腹減ったぁ」
あまりにタイミングが良くてサンジは驚いた。
ルフィの為に何かを作ろうとした途端に、いつもなら朝起しても起きてこない男が目覚めてキッチンへ来たのだ。
手を止めて扉の所で立っているルフィを見つめて自然に笑みが浮かんでしまう。
好んでいたはずの静寂を壊した人間を心から歓迎していた。
「寝る前に食べさせてやったのにか?」
「だってよ〜あんなに少ないんじゃ腹減って目が覚めちまった」
確かに今夜の夜食は食料節約の為に量を控えめに見た目だけボリュームを出した料理を作ったのである。
おそらく、途中で腹が減って目が覚めるだろうという計算もあったが、まさかその通りになるとは。
追加の料理を強請られても作る気は無かった。
ただ、自分に料理を強請りにくるルフィを見るのが好きだっただけ。
起きる時間が朝に近ければ、そのまま朝食の時間まで共に過ごそうと思っていたのだ。
「少し待ってろ、余りもんで何か作るところだったから」
「いいのか?」
「ああ、俺もちょうど小腹が減って何か作って食おうを思ってたんだ。お前にやるよ」
「サンジも腹減ってんのか?」
「まあな」
扉をパタリと閉めてキッチンに繋がっているカウンターに設置されている、バー状のベンチに腰を下ろして
サンジが食材を鮮やかに切り刻む様子を目を輝かせて見つめている。
何度も見ているはずなのに、ルフィはサンジが料理をしている姿を見る事が好きだった。
綺麗な手が華麗に包丁をさばく様や、あっという間に一流レストランに出てくるような料理を作るサンジ。
「だったら半分コして食べよう!」
「それで足りんのかよ?」
すでに完成した料理を皿に盛り付けながら、カウンターにいるルフィに笑いかける。
普段なら、料理を独り占めするような男が自分を気遣った事が素直に嬉しかった。
食材の残量は三日分ぎりぎりだったが、自分が食べる量を減らせば一食分余計に作る事ができたが、
その量も多くはなく、ルフィがとても満足できるような量ではない。味にはもちろん自信ありだが・・・。
「だってサンジも腹減ってて、オレも腹減ってんだからさ。二人で食べればいいじゃん」
「そうは言っても普通の一人前より少ないんだぜ?俺は朝食まで我慢できっからお前食えって」
「う・・・でも、二人で食べる!そしたらオレも朝食までサンジと我慢すっから」
真っ白な歯をにっと出して笑うルフィが愛しくなって、思わず顔が綻んでしまう。
この嬉しそうな顔を見る為に自分は毎晩のように夜食を作り、おやつを作っているのだ。
皿を持ってルフィの隣に腰を下ろして二人の真ん中あたりにドンと皿を置いた。
「じゃ、お言葉に甘えるとするか。二人で半分コな?」
「おうっ」
「じゃ、ほら。口開けろ」
一組のナイフとフォークを華麗に扱って、料理を小さく切ってフォークで突き刺す。
皿が一つならナイフとフォークも一組だ。
料理を隣りに座るルフィの目の前で止めて、唇が開かれるのをじっと見つめながら待った。
しばらく経っても唇が開かれる事なく、怪訝に思っていると頬に朱が昇っている。
「どうしたんだ?ほら、口開けろって」
「じ、自分で食えるから、それはサンジ食えよ」
心持ち上半身を後ろに引いて、目の前の料理を見つめるルフィは顔を赤く染めていた。
そういえば、今までこんな行為をしたことが無いと思い出してサンジの心に意地悪な気持ちが浮かんだ。
ニヤリと笑って、隣で体を硬くしているルフィを覗きこむ。
「駄目だ。お前にまかすと一口がでかくなっちまうからな。ほら、アーンしろ」
自分でも口を開いて、同じようにしろと促すと観念したかのようにルフィが恥ずかしそうに口を大きく開いた。
口を開くだけで良いのに、思わず両目をしっかりと閉じてしまったルフィに料理ではなく自分の顔を近づける。
開いた口の下唇をパクリと挟み軽く前歯で噛んですぐに離れて料理を放り込んだ。
「わっ・・・あっ美味ぇ!」
「当たり前だ。俺は海の一流コックだからな。それより、どうだった?俺の特別調味料は」
ふふっと笑みを浮かべながら、もう料理を飲み込んで動きが止まっていたルフィの下唇を触れる。
ぼっと耳まで真っ赤にしたルフィが横に座るサンジを睨みつけていた。
end |
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