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■ 選択式お題より10個抜粋
07.カミングアウト (サンジ×ルフィ) 水天宮拓仄 |
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ある日の昼過ぎ、甲板に出て思い思いに過ごしているクルーの前に二人が進み出た。
一人はこの船の船長、麦わら帽子がトレードマークのルフィ。
もう一人は、この船のコックを務める金髪碧眼の色男サンジである。
かしこまった様子で真顔の二人をクルーは見向きもせずに、読書をしたり工作をしたり修業をしたりだ。
ゴホンとひとつ、咳払いをしたルフィが大きく息を吸い込み、その横で視線を海に向けたままモジモジするサンジ。
「みんなにひとつ報告があるから聞いてくれー!」
大きな声を出したのはルフィで、船長の号令とあればクルーは面倒くさそうな表情を浮かべながらも二人の前に集まった。
「何?深刻な顔して」
航海士のナミが読みかけの新聞を折りたたみながら歩み寄り、引きずってきた椅子に腰を下ろして足を組んだ。
その横に静かに立つのは考古学者として船に乗っているロビン。
ばらばらとフランキーとウソップ、ゾロとチョッパー、最後に一番新しい仲間であるブルックが少し離れた場所に立つ。
「・・・オレとサンジの事なんだけどさ」
「あんたとサンジ君の事?」
首を傾げるナミが照れくさそうに視線を海に注いでいるサンジの横顔を見つめた。
いつもなら、その視線に目をハートにして寄ってくる彼が居心地悪そうに体を震わせるを見て、ピーンときた。
「ねえ・・・もしかして、あんた達が付き合ってるとか言うんじゃないでしょうね?」
「え!なんでわかったんだナミ!お前すげーな!な、サンジ?」
「・・・いや、わかるだろ」
驚いて横にいるサンジの袖を引くルフィを呆れた表情で見るのはウソップだ。
「あんた達、ひょっとして今まで隠してたつもりなの?」
心底呆れた表情と声をあげてナミが両掌を上にあげながら肩を竦め、横に立つロビンに「ねぇ?」と問う。
「そうね。ルフィもサンジも正直だから、見ていればわかったわね」
くすくすと笑いながら、驚いた顔の二人を見つめ踵を返す。
「話はそれだけかしら?なら、失礼するわ。私、調べ物の途中だったから」
「あ、ロビン!待ってよ私も手伝うわ」
「ありがとう、ナミ」
椅子から立ち上がったナミを従えてロビンは自分達が使っている部屋へ戻っていった。
甲板に残されたのは男達だけとなり、ようやくサンジも気を落ち着かせて仲間達の顔を見渡す余裕ができたようだ。
ウソップ、フランキー、ブルックはナミとロビンと同様に察していたようだが、
ゾロとチョッパーは初めて知ったという様子に苦笑いを浮かべる。
「ルフィとサンジが付き合ってるって本当か?オレ、全然わかんなかったぞ!」
大きな目をさらに大きく見開いてチョッパーが二人を交互に見つめ、ゾロは無言でサンジを睨みつけていた。
「なんだよ、なんか文句あんのかゾロ」
気まずい事は気まずいが出会った頃から不仲のゾロに、敵意丸出しな視線を向けられて平気なサンジではない。
「てめぇ、ルフィの野望を邪魔しやがったら俺がぶっ殺してやる」
「当然だ。俺はルフィを海賊王にする」
「ふん・・・ルフィの隣りに立つ資格も力もねぇくせに良く言うぜ」
「・・・んだと?」
険悪な空気になった所をハラハラ見つめているのはウソップだが、この二人の喧嘩に割って入るほどの勇気は無い。
フランキーとブルックはなぜか口元をほころばせながら、二人の睨み合いを眺めている。
チョッパーはまだルフィとサンジが付き合っているという事実にあわあわしていた。
「ゾロはオレとサンジが付き合ってるのに反対なのか?」
睨み合う二人の間に割って入ったのは、たった今カミングアウトしたばかりの張本人ルフィ。
少し困ったような表情を浮かべて、ゾロとサンジを交互に見つめる。
こんなに頼りない顔をするルフィを初めて見たゾロはますます目尻を吊り上げてサンジの胸倉を掴んだ。
「いつからルフィはこんな顔をするようになった?前はこんな情けねぇ顔をするような男じゃなかった!」
「ゾロ!」
胸倉を掴み、ぐいっと上に向かって力を籠める両手にルフィが手を添えるがサンジを解放する気は無い。
「ルフィは何も惑わされない強さがあった!それをお前が壊したんじゃないのか!」
「どんなに強くてもこいつは一人の人間だ!十七歳の未熟な人間に変わりねぇだろうが!」
「なんだと?」
「こいつは今まで自分の夢・・・その前に俺達仲間全員の夢を背負ってた。それを支える人間が必要だったんだ」
胸倉を掴まれながらゾロの強い視線を受け止め、大声を張り上げる。
「それがわからねぇって事はてめぇは頭の中まで筋肉でできてるって事なんだろうなぁ」
「うるせぇ!そんな事は出会った頃から知ってんだよ!俺だってルフィを・・・っ」
胸倉を離し、踵を返すと一瞬だけ戸惑う表情を見せるルフィを見つめ唇をかみ締めた。
「ゾロっ!」
見張り台に向かって走っていくゾロの背中を呼び止めたが、振り返る事もなく姿を消してしまった。
甲板に沈黙が流れる。
カチャリと甲板への扉が開くと、呆れ顔のナミと冷静な表情のままロビンが出てきた。
「バカね・・・ゾロ」
「ふふっ彼も可愛いところあるじゃない」
見張り台を二人で見上げ、ほぼ同時に視線をルフィとサンジに向けて微笑んだ。
「ナミ・・・ゾロはなんであんなに怒ったんだ?」
「気にしなくてもいいわ。ただのやきもちなんだから」
「やきもち?」
「そうよ。出会った頃からゾロはあんたに惹かれていたのよ。自分ではわかっていなかったみたいだけどね」
意外な言葉にルフィは目をパチクリさせ、サンジは視線を床に落とした。
おそらくサンジはゾロの内心を知りつつ、ルフィに対する気持ちを優先させた事に少なからず後ろめたさを感じているのだ。
海賊が同じ船の中で恋愛関係にあるという事は仲間達の精神的な面でバランスを崩すばかりか、絆の崩壊にも繋がる可能性もある。
だが、この船にいる仲間達なら・・・というルフィの強い後押しがあり、二人で相談してカミングアウトを敢行した。
「オレ達の仲を認めてくれない仲間が一人でも居たら・・・やめようと思ってた。二人で相談して決めてた」
「その必要は無いわよルフィ」
今度はナミの横に立っていたロビンが穏やかな顔で口を開いた。
「今はゾロの気持ちが落ち着かないだけだと思うわ。少し時間が必要だけど、彼は理解してくれる・・・。ね?」
「・・・うん、そうだよな。な、サンジ!」
複雑な表情でゾロが消えた見張り台を見上げ無言のままいるサンジを後ろからフランキーが締め上げた。
「ぐえっ!やめろフランキー!」
「てめぇ、仲間が信じられないってのか?あいつなら大丈夫だって!なあ?」
羽交い絞めしながら仲間達を見渡すと全員が同時に頷いた。
「だって、私達・・・みんなルフィが好きなんだもの。その形が少し違うだけで何も変わらない」
「ナミさん」
「その通りですよ」
「ああ」
「手のやける船長だけど、みんなの気持ちは一緒って事だな」
仲間達の笑顔に包まれてルフィとサンジは体の中から暖かいものがこみ上げるのを感じていた。
「私達もカミングアウトしちゃったわね。一人だけしていない人がいるから連れて来るわ」
そう言ってロビンは悪戯っぽく笑いながら見張り台の方へ足を向けた。
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