|
 |
|
 |
|
■選択式お題より10個抜粋
08.戦士の休息 (ゾロ×ルフィ) 水天宮拓仄 |
|
|
ここはナミの故郷・ココヤシ村。
この村に住む医師の診療所でロロノア・ゾロはベッドの上に横たわり、
普段は鋭く光る瞳を閉じ、外の喧騒を心地よく聞いていた。
つい、数時間前まではこの村を支配していた魚人アーロン一味を
ルフィを筆頭とした”麦わら海賊団”が一掃し、
夜も更けた現在も村をあげてのお祭り騒ぎだ。
夜も更け、明るいうちは大宴会に参加していたゾロであったが、
普通なら死んでいてもおかしくない大怪我を負っているため、
船長命令で横になるように言い渡されたのだった。
「誰かちっ・・・酒くらい持って来いてんだよな」
ごろりと寝返りを打ち、ゾロは瞳を開けて月明かりが入り込む窓を見つめた。
アーロン一味との戦闘中には、まったく気にならなかった傷口が熱い。
世界最強の剣士・鷹の目ミホークに、袈裟斬りされた刀傷を手のひらで上から下になぞると、
それだけで痛みが全身に走る。
「酒でも飲めば痛みも気にならねーのに・・・またあっちへ行くか」
ぶつぶつとベッドの上でぼやきながら上半身を起き上がらせると、
出入口の木製の扉が勢い良く開け放たれて、
目を吊り上げた船長のモンキー・D・ルフィが立っていた。
「ルフィ!どうした?もうお祭り騒ぎは終わったのか?」
耳を澄まさなくても聞こえる、音楽や人々の笑い声。
喧騒の中には、仲間達の笑い声や話し声も聞こえてきている。
「終わってねーけど・・・その・・差し入れ持ってきた」
扉から入ってきたルフィの脇には、酒樽が抱えられていた。
「おうっお前にしては気が利くじゃねぇか。サンキュー」
ベッドから降りようとすると、今度は鋭い声がそれを制した。
「ダメだ!ゾロはベッドの上にいなきゃダメだからな!」
口をへの字に曲げて、ずかずかと診療所の中に入ってきたルフィは、
酒樽をゾロがいるベッドの脇にドンッと置き、ゾロをじっと見つめる。
「どうしたんだよ、ルフィ?何、怒ってんだ」
「別に怒ってねぇ!」
「だから、その態度が怒ってるって言うんだけどな?」
ため息をついて、ルフィの両肩に両手を置きポンと軽く叩きながら苦笑するゾロ。
「どうしたんだ?料理がなくなったのか?そんな、目潤ませて」
よく見ると月明かりに照らされたルフィの瞳がゆらゆらと揺れている。
大きな瞳にうっすらと涙が溜まっているのがゾロにも見て取れた。
「こんな時くらい・・・ゆっくり休めよゾロ」
「あん?何言ってんだ・・・俺はいつでも十分に休んでるぜ?船の上じゃ、
トレーニング以外の時間は休息に当ててるしな」
何を必死に訴えるのかと思えば、予想だにしない言葉にゾロは驚いた表情を見せた。
船の上では、何もしない自分に「もっと働け」と船長として意見されるのなら、
話はわかるが・・・その反対だとは思いもよらない。
「そうじゃない。ゾロは寝てても、起きてるのと一緒だ」
「・・・言ってる意味がわからねーな」
ルフィの両肩に置いたままの手に自然と力が入る。
いつも能天気に過ごしているだけかと思っていたのに・・・稀に鋭い事を発言するのだ。
そういえば、ナミやウソップからは船で昼寝ばかりしている事に、
批難を浴びせられているが、ルフィだけは何も言わない事を思い出す。
自分が例え、いびきを欠いて眠っていても、酒で酔っ払って眠っていても、
真の眠りについていない事を見抜いている。
目くじらを立て、さらに声をあげるルフィ。
「この酒飲んで、今日くらいはゆっくり休めって言った!」
脇に置いた樽を手のひらでバンと叩いて、
ベッドに腰をかけながら肩を掴むゾロの胸をぐっと押した。
「いっ!いってぇ!」
痛む傷の上から押され、ゾロは一瞬身を引こうとした。
その力を利用してルフィはゾロをベッドに横たえると、
そのままベッドの上に登ると上半身を避けてゾロに馬乗りになった。
「なにすんだよ、ルフィ!」
痛みによって自然と滲み出た涙が目尻に溜まる。
そして、馬乗りされた状況に抗議の声を上げた。
「今日はずっと傍にいるから、ゾロは寝ろ。頼むから」
切なそうな表情を見せるルフィを下から見つめ、ゾロはゴクリと喉を鳴らした。
月明かりを背に自分の上で、今まで見せた事もない表情と
その声にゾロは体温が上昇した事を感じた。
動悸も早まり、呼吸も早まってくる。
「なんか、息荒いぞゾロ?やっぱり早く休めよ」
慌ててゾロの上から降りようとしたルフィの右腕を掴むと、
自分に向かって力まかせに引き寄せた。
その引かれた勢いのままにルフィが自分に向かって倒れ込んでくる。
傷の事は忘れていた。
「わわっ!ゾロっ!なに・・・すん!」
反射神経の良さでは、ゾロに負けていないルフィがとっさに両脇に腕を伸ばし、
なんとか倒れこむ事を防ぎ、抗議の声をあげようとした時。
「ルフィ」
名前を小さく呼ばれ、声のした方に視線を向けた途端ルフィは
ゾロによって後頭部に手を回され、ぐっと下に引き寄せられた。
「・・・んっ」
大きな瞳をさらに大きく見開いたルフィの視界いっぱいに
ゾロの強い瞳が飛び込んでくる。
声をあげようとしても唇はゾロの唇によって塞がれると、
口を開こうとした動きを利用され、
口内深く進入を許してしまった。
「んんっ・・・ふぁ」
湿った音がルフィの耳に入り、恥ずかしさのあまり瞳をぐっと閉じてゾロの腕から
逃れようとするが、それは叶わなかった。
何度か角度を変え自分の口内が貪られるしびれるような感覚にルフィの瞳からは、
さきほどまでの意味と違う涙が零れた。
唇を解放されたルフィはゴロリとゾロの横に体を投げ出し、
荒くなった呼吸を整えようと必死だ。
「・・・・な・・・何、す・・・んだよ、ゾロ!」
はあはあと息を繰り返しながら、頬に流れた涙を腕で拭い、
ルフィはゾロに背を向けて小さく抗議した。
「なんか、なんとなく・・・だな」
両腕を頭の上で組み、自分の脇にいるルフィを見つめて答えるものの、
ゾロ自身にもなぜ自分がこんな事をしたのか、わからなかった。
自分の上にいるルフィを見ていたら、いきなり自分の中で欲望が湧き上り、
考える前に体が動いたのだ。
「なんとなくって・・・なんだよ、それ」
ぷっと吹き出して、寝返りを打つルフィと共にゾロも笑う。
安らかな空間を感じ、睡魔が迫る。
大きな欠伸が出た。
つられてルフィも欠伸が出る。
「お前がここで一緒に眠ってくれたら、俺もゆっくり休めるかもな?」
ルフィの肩をぐっと抱き寄せて自分の身体に密着させると、
少し高めの体温と、早い鼓動を感じる事ができた。
「じゃあ、オレも寝る。だから、今日は何も気にしなくてもいいんだぞ」
「お言葉に甘えさせてもらうよ、船長」
少し頭を動かし、ルフィの額に唇を落とす。
「おやすみゾロ」
「ああ。おやすみ、ルフィ」
一つベッドの上で、ゾロとルフィが身を寄せ合うように眠りに落ちる。
海上レストラン・バラティエを出てから、
ずっと闘い続けていた戦士達のわずかな休息の時が訪れる。
目が覚めればまた、新たな闘いに向けて走り続ける海の戦士達に
今だけは心からの安らぎを。
end
※この小説は、参加中のSNS「cris」にてキリ番リクエストして執筆した者です。
リクエストしてくださったのは、友達のソウキさんでした。 |
|
|
|