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| ■ 『 殺夢-sathumu- 後編 』 水天宮拓仄 |
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部屋を出たルフィは、バタバタと甲板を走りぬけてサンジのいるキッチンへ飛び込むと、瞳に溜まっていた涙を床にこぼした。
「どうしたんだよ、ルフィ?」
洗い物をしながら振り向かずに扉の前で無言のまま涙を流すルフィに声をかける。しかし、一向にルフィからの返事がない。
「ルフィ?」
「…サンジぃ…どうしよう!」
ばっと顔を上げると、サンジの胸に顔を埋めたルフィ。ただ事じゃないのは、ルフィの様子を見ればわかる。やさしくルフィの肩を抱いてやるサンジ。
「どうしたんだ?」
「オレ…ゾロに嫌われちまった…どうしよう」
「ゾロが…?」
「だって…オレに触られるのも嫌なくらいなんだっ」
ぼろぼろと涙をこぼすルフィを見て、サンジの感情が一気に高まる。ルフィを泣かせる奴は、たとえ仲間でも許せない。
(あんのクソ剣士!)
「ちょっと待ってろ。オレが話つけてくる」
「サンジ!待てよっ」
ルフィが止める前にサンジは、キッチンから出ていくとまっすぐ男部屋へ向かった。胸はイライラと波だっている。
「おい!」
「…!」
自ら汚してしまった毛布を丸めていたゾロに、怒りの声を浴びせたサンジはとある特有なニオイが部屋に存在することに気づいた。汗と潮の香りに混じった男のニオイ。
「…てめぇさ〜情けねェぜ?」
幾分穏やかな声音でゾロを見下したサンジの口元に余裕の笑みが浮かぶ。ゾロがルフィを避けた理由が、わかったからだ。
「何が情けないんだよ?」
毛布をソファに投げるとゾロがサンジを睨み返す。
「てめぇの感情だけでキャプテンを悲しませるなよ」
皮肉たっぷりの口調で、煙草を指でもみ消すといつも持ち歩いている携帯灰皿に放りこんだ。
「別に俺は何もしてねぇ」
少し俯き加減で話すゾロは、色々な感情に揺れていた。自分は、ルフィをどう思っているんだろう…なぜ、サンジがこんなに憎いのだろう。どうして、あんな夢ばかりを見ているのだろう…見たくないのに。
「何もしてねぇのに、ルフィが泣くなんてことあるか?ああっ?」
俯くゾロを下から覗きこむように身を屈めるサンジの視線から、すっと視線を外して後ずさるゾロ。ルフィのために自分をせめるサンジにも腹が立つ。
「…てめぇが悪いんだ」
「なんだと?」
「てめぇが…あの時あんなことしてなければ俺はこんな思いをすることがなかったんだ!」
覗きこむサンジの胸倉を掴んで、ぐっと押しやって睨みつける。
「てめぇが勝手に出歯亀してたんだろーが!」
「俺の方が先にあそこにいたんだ!」
どんどん話の論点がずれはじめているが、とにかく二人は日頃のうっぷんをお互いにぶちまける。
「てめぇなんか、どこで寝てるか知らねぇんだ!寝たかったら部屋で寝ろっ」
「んなの俺の勝手だろうが!」
お互いの胸倉を掴んでにらみ合うゾロとサンジ。
「だいたいてめぇだって、ルフィと寝たいんじゃねぇのか?」
「っ!」
サンジの一言でゾロの指がサンジの胸倉から離れた。目を大きく見開いて自分の心に問う。
(俺はこいつに嫉妬していたのか?ルフィが好きなのか?ルフィを抱きたいのか?俺は……)
「図星だな」
無言のまま宙を見つめたままのゾロに、サンジが決定的な決断を下す。その言葉に反論できないゾロが、そこにいた。
「…俺は……ちがう」
「じゃあ、なんだよ?この毛布と空気は?てめぇがルフィでやってたんじゃねぇの?オレたちがやってたの想像しながらな」
ソファに丸めてある毛布を指差して自分を追い詰めるサンジに、ゾロはもう何も言えなくなっていた。自分の感情を理解してしまったのだ。ルフィを欲望の対象として見ている自分に、サンジに嫉妬している自分。そして、狂おしいほどにルフィに恋焦がれていた自分に。
「男の嫉妬はみっともねぇぜ?剣豪」
最後の一言にゾロがカッとする。サンジは避ける間もなくゾロに殴り飛ばされていた。
「ってぇなぁ!」
「うるせぇ!てめぇがルフィにあんな事しなかったら!あそこでやらなければ!俺は気づかないで済んだんだっ。ずっと仲間として隣にいれたのに!」
拳を握り締めて床に尻をついているサンジを睨みつけるゾロ。お互いの殺気が二人を包み込んでいた。
唇の端から流れた血をジャケットの袖で拭うと、サンジは立ちあがって間髪入れずにゾロへ蹴りを繰り出す。狭い部屋の中でうまく避けれずに、まともに蹴りを受けたゾロは壁にぶつかる。
「オレが知ったことか!」
「黙れっクソコック!」
立ちあがってサンジへ拳を振り上げて向かっていくゾロ。その時、いきなり上から何かが二人の間に落ちてきた。
「やめろ!ゾロっ」
落ちてきたのは、争いの種だったルフィ。ゾロの前に両手を広げて立ちふさがる。背後にいるサンジを庇っているようなルフィにゾロは、むかむかする。
「ルフィ!お前には関係ない、上行ってろ」
「嫌だ!なんで喧嘩すんだよ!」
甲板でサンジを待っていたルフィの耳に、男部屋からなにやら言い争う声と何かが壁にぶつかった音が届いた。気になったルフィは、様子を見にきたというわけである。そこで、目にしたのがサンジとゾロの喧嘩だった。
「喧嘩じゃねぇよ」
「じゃあ、なんだよ?」
サンジとゾロを交互に見つめるルフィの目は、真剣だった。サンジは、さっきの話をつけるためにここへ来たはずだ。それで殴りあいに発展してるのだから、自分に関係ないはずがない。
「もう、いいんだ。終った」
ルフィに近づいて肩をポンと叩くと、ゾロは上へ上がるためにマストに足をかける。自分の気持ちをルフィに告げる気がしない…結果が見えているから。ルフィの出現で一気にゾロの考えがまとまる。そう、この先ずっと自分さえ我慢していれば、誰も傷ついたりしなくて済む。仲間は、サンジとルフィの関係に気づいていないようだ…気づいていたとしてもあえて気にしていないかもだが。
「あっゾロ!」
呼びとめるルフィの声を聞えないふりをして、ゾロは部屋を出て甲板から海を眺めた。今日の波は自分の心をあざ笑うかのように穏やかでゾロの心に染みる。
「……俺さえ我慢すれば済むんだ」
腕に巻いてある黒のバンダナをぎゅっと握ると、とぼとぼとゾロは自分の居場所を求めて格納庫へ行く。幸い誰もいない、中から鍵をしめて麻袋の上に横になり瞼を閉じる。こんな状況でも睡眠を欲する自分に腹を立てながらも、ゾロは祈るように眠りについた。
(もう、何も見たくない…見せないでくれ)
「んっ…んんっ…はっぁ」
悩ましげなルフィの声がゾロの耳に届いた…というより、自分の耳元に感じる。はっと瞼を開けると、自分の首筋にからまるきゃしゃな腕。耳元にふきかけられる熱い吐息。
<ル…ルフィっ?>
「ゾロぉ…好きなんだ…お前の事」
頬を赤らめながらルフィが自分にキスする。今まで体験したことのないくらい官能的なキスにゾロの体はすぐに火がついた。
<なんで、俺と>
裸になっているルフィを抱きしめながらルフィの耳元に囁いた。サンジがするようにそっと熱い息を吹きかけながら…ルフィの肩が震える。
「好きだって言っただろ?ゾロは俺の事嫌いなのか?」
ゾロの目を見つめるルフィ。
<ルフィ、俺も好きだ>
ぎゅっと抱きしめてルフィに口づけてそのまま組み敷くと、ルフィの肌がピンク色に染まっていく。思わず生唾を飲み込んだゾロは、震える指をしかりながらそっとルフィの肉体へ触れる。ルフィの体は熱く、掌に吸いついてくるような感触だった…実際は知らない。
「あっ…ゾロぉ」
<ルフィ>
ゾロの指先がルフィの熱くなっている箇所に触れるか触れないかの所でゾロは、はっと我に返った。
「…っは…はぁはぁはぁ」
格納庫の窓から覗く空は、真っ赤に染まっていた。
「くそっ!」
昂ぶったままの己にゾロは悪態をつく。夢…それも今度は、自分がルフィを抱く夢。夢は、己の願望が現れると昔聞いたことがある。これではっきり自覚してしまった。自分は、ルフィをサンジと同じ感情で見ていたということだ。今まで、ずっと気づかなかっただけ。
「くそっくそっくそっ!」
まだ熱い己自身を握り締めると、ゾロは己の快感を追い求める。脳裏に浮かぶのは、はっきりとしたルフィの裸体だった。夢で触れたルフィの感触が蘇る。一瞬のすさまじい快感と、その後の嫌悪感にゾロは顔をしかめて己の掌をにらみつけると、ぐっと拳を握って床に何度も叩きつけた。
「ばっかやろう〜」
拳から血を滴らせながらゾロは、がっくりと肩を落としてうなだれる。当分薄暗い格納庫から出る気にはなれなかった。
ゾロが立去ったあとの男部屋でルフィがサンジを問い詰めている。
「なんで喧嘩してたんだよ」
「だから喧嘩じゃねぇって言っただろ」
ソファに腰を下ろしているサンジの正面に立ったまま問い詰めるが、サンジは取り合ってくれない。先ほどからこの二言でのやりとりが繰り返されること10分。
「もういいっ!サンジが教えてくんねぇならゾロに聞くからっ」
「どうせあいつに聞いても同じぜ?やめとけよルフィ。それにもう少しで飯の時間だ」
まだ自分を睨みつけているルフィの頭をポンと叩いてソファから立ち上がる。そろそろ夕飯の支度を始める時間になっていた。
「飯でごまかそうってもダメだぞっ」
「そんなんじゃねぇよ。聞いてもいいが…気をつけろよ」
「気をつけるって何に?」
「ゾロにだよ」
ルフィの視線から抜け出したサンジは、出入口のマストに片足をかけたまま一瞬動きを止めた。今の自分のセリフに舌打ちをする。自信がない男のセリフみたいじゃないか、これは。
「ゾロに?なんで?」
「いや、なんでもねぇよ…それよりも飯、遅れないようにな。いつもの時間に来い」
言い残すとサンジはマストを登って部屋を出ていってしまった。
「なんだよサンジの奴」
マストを見上げたルフィはソファに身を預けた。さっきサンジが言った言葉の意味を考える。サンジとセックスをしているのを目撃された時からのゾロの態度は、あきらかに変化した。出会った頃からずっと今までのゾロを思い出していく…そして、はたっと昨日今日のゾロの態度を思い浮かべた。
「やっぱりオレの事…嫌いになったのかな、ゾロ…じゃあ謝らないとだ」
すくっと立ちあがるとルフィは部屋を出る。甲板をきょろきょろと見渡すがゾロの姿が見えない。色々探してみるけど一向にゾロの姿を見つけられなくて、ルフィは仕方なくいつもゾロが座っている壁際に背を預けた。ここにいればゾロが眠りにくるかもしれないと思ったからだ。壁に背を預けたままルフィは、海を眺めたり空に浮かぶ雲を見たりしていたが、日頃の夜更かしがたたって睡魔が襲う。睡魔に身を預けたルフィは寝息を立てはじめていた。
空が赤く染まった頃、ルフィは目を覚ました。それは、サンジの作るおいしい料理の香でもなく、冷たい風でもなかった。自分がよりかかっていた壁の中から物音が聞えたから。それも何かが床か壁にぶつけられる激しい音が繰り返し繰り返し耳に入る。
「んっ?何の音だ」
疑問に思ったルフィは目を擦りながら立ちあがって寄りかかっていた壁の中を確かめるべく、ぐるりと扉まで回りこんだ。ゾロがいつも眠っていた壁の中は格納庫。
ドアをそっと開けるとゾロが床を拳で殴りつけている姿がルフィの目に飛び込む。見ると床には血が滴り、ゾロは今にも泣きそうな表情で…慌てて駆け寄るとゾロの振り上げられた腕を掴んだ。
「やめろっゾロ!」
「ルフィっ!離せっ」
「嫌だっ離したらまた床殴るだろ!」
ゾロの目をしっかりと見つめて腕を離さないように力をこめた。ルフィに見つめられ、触れられ…ゾロは心臓が跳ねあがるのを感じた。今までは何ともなかったことが、自分の感情を理解した今では、もう苦痛以外のなにものでもなかった。
「離せルフィ。もうやらねぇから」
「ホントだな?絶対やらねぇんだな?」
「ああ、やらねぇ」
視線から逃れるように顔を背けて力を抜いたルフィの腕から、自分の腕を取り戻すとゾロは立ちあがった。
「ゾロ?」
「そろそろ飯なんだろ」
できるだけ自分の感情を悟られないように口を開く。握り締めた拳が緊張で小刻みに震えるのをもう片方の手で抑えた。
(くそっ…なんでこんなになってんだよ…ただ話してるだけだろ)
「あっ…うん。そう…飯なんだった」
今ようやくルフィは、さっきから漂っている料理の香に気づいて鼻をひくつかせた。ゾロに謝る事を忘れたわけじゃないけど、空腹を満たす方が先決だと考えなおす。謝る事はいつでもできるけど、温かい飯は今しか食べれないのだから。1秒でも早くその場を立去りたいゾロが、ルフィの脇をすり抜けて甲板に出る。その足はキッチンへ向かうわけでもなく見張り台へむかっていた。
「ゾロ?飯食わないのか?」
「ああ…俺は後で食う。コックに言っておいてくれ」
自分の方を見ようともしないゾロの背中を見送って、ルフィは表情を暗くした。そんなに自分はゾロに嫌われてしまったのだろうか?一緒にご飯を食べるのも嫌になってしまったのだろうか?それに今だって自分と話すのが嫌で立去ったとしか思えない。
「ゾロ…やっぱりオレの事嫌いになったんだ」
重い足取りでキッチンへ向かうルフィ。なんだか今日は、食欲がなかったが食べないとサンジに心配をかけることに繋がると思って、今ごろおいしい料理を用意してあるだろうキッチンのドアを開ける。そこには予想通りおいしそうな夕飯が並べられていた。
「珍しいわね、あんたが遅れてくるなんて」
「さっさとゾロ呼んで来いよルフィ。早く食べようぜ」
「あ…ゾロは……」
そこまで言ってルフィは、サンジの方を見た。ルフィの視線の意味に気づいてサンジは咥えていた煙草をもみ消して水場に投げ捨てた。
「ゾロは後で食うみてぇだな?じゃあオレ達は先に食べてようぜ。ほら、さっさと席につけよルフィ」
「うん」
サンジの隣に腰を下ろして料理に手を伸ばす。今はとりあえず食事に集中しよう。食べ始めたら食欲も出てきて、結局はいつもと大差ないほど平らげていた。
食事を終えたルフィはゾロの分をトレイに持ち、見張り台へ向かった。早く謝って元のように仲良く海賊をしたいと願っている。サンジとの関係を知られてしまったのも、ちょうどよかったかもしれない。サンジが好きな自分もありのままなのだから…すべての自分を認めてもらいたかったのかもしれない。
「ゾローーーーー!」
見張り台で海を眺めていたゾロを大声で呼ぶ。ルフィの声でゾロはゆっくりと見下ろしてマストを伝って甲板に下りる。
「なんだ?」
「あ…これ、飯持ってきたんだ」
トレイにのせた料理をゾロに差し出してルフィは何か言いたそうな表情をする。
「ああ、サンキュー」
トレイを受け取るとゾロはスタスタとルフィの脇をすり抜けて行こうと足を踏み出した。必要以上な事を話そうとしないゾロにルフィは、ずきりと胸を痛めた。今までずっと共にがんばってきた大好きな仲間に嫌われたかと思うと悲しくてたまらない。
「ゾロ!」
真剣な表情でゾロを見つめて正面に回りこんだ。
「ルフィ…どけよ」
「嫌だ!」
「いいからっ…俺に近づかないでくれ」
ルフィを見ているのが、近くにいる事が辛い。
「なんで?どうしてそんな事言うんだよ?やっぱりオレの事嫌いになったのか?もうオレと一緒に海賊やりたくないのか?」
トレイを押しのけて、トレイが甲板に落ちる。料理が辺りにぶちまけられたのも無視して、ルフィはゾロの肩を掴んで揺さぶる。ゾロは、ルフィと目を合わせないように横を向いたまま無言のままだった。
「……」
「どうなんだよ!ゾロっ」
肩を掴んで激しく揺さぶるルフィの腕を振り払ってゾロはその場を立ち去る。どかどかと甲板を横切って男部屋へ戻ると自分のハンモックに横になった。その後をルフィが追ってきて、ゾロのハンモックに手をかける。
「ゾロ!」
「俺に近づくなって言っただろ…」
「オレの事嫌いなのか?船降りちゃうのかよ?」
涙をぼろぼろと零しながらゾロを覗きこむルフィにゾロの中で何かが弾けた。
「嫌いなはずねぇだろっ!そんな事もわかんねぇのかよ!」
いきなりハンモックから下りるとルフィを床に押し倒した。ルフィのシャツを力任せに破ると後ろに放って、噛みつくように唇を奪う。
「んんんっ…やっ…ゾロっ!」
ゾロの唇から逃れてルフィは拒否の言葉を吐き出した。それを無視してゾロは再び唇を奪ってルフィの舌を犯していく。
「んっやっ…んんっ」
「ルフィ…」
唇を合わせたままゾロは自分の黒いハチマキを腕からスルリと解く。ルフィの両手を拘束して頭上で押さえつけた。力に関してはゾロが上。さらに上からの圧力でルフィは逃れられない。ゾロのサンジとは違う荒々しいキスと扱いにルフィは驚愕の色を隠せない。ゾロが自分にセックスを求めていた事実にも…
「や・・やだっ離せよゾロっ!」
涙目のままゾロを睨みつけるが、それさえもゾロを煽るだけになっていた。
「お前が悪いんだ…」
「なっなんでオレが悪いんだよっ?」
「コックなんかと!」
荒々しく言い放つとゾロはルフィのズボンを無理矢理剥ぎ取ってルフィの両足を開かせて体を間に挟む。ゾロの昂ぶりを太ももあたりに感じてルフィが身を硬くした。
「サ…サンジとは…」
「うるせぇ!」
怒鳴るといきなりルフィの中に己を押しこんだ。何も用意されていないルフィの内部はゾロを全力で拒否する。
「あああっ!いた…やだ!抜け…くっ」
「…っキツっ」
いくら慣れているとはいえ、何も施していないルフィの内部から真っ赤な鮮血が流れ出した。その血が幸か不幸かゾロの侵食を手伝うことになる。
「ひぃあっ…やっやだっ!」
ルフィの拒絶の言葉や反応を無理矢理無視してゾロは動き出した。血のぬめりがだいぶ動きをスムーズにしてくれている。
「うっうっ…やだっ…やめってく…ああっはっ」
「ル……フィ……」
激しくルフィの体を揺さぶりながらのゾロの心は傷つき汚れた。体だけの関係なんていらいない…でも、ルフィの心はサンジと共にある…。これは地獄だ…夢で終らせたかった…でも、夢で終らせたくなかった…殺したい…夢も自分もルフィもサンジも…なにもかも破壊したくなる。
無意識にルフィの細い首に両手を回したゾロは徐々に指に力を加えていく。
「ゾロっ…何っ…うあっやっやっ助けっ…ンジ!」
「!!」
ルフィの口からサンジと聞いて一層指に力をこめる。首にかけている腕に拘束されたままのルフィがなんとか外そうと爪を立ててきた。かまわず無視して力を加え続ける。
「…ぐっ……ゾ……」
腕に力も入らなくなり目もかすんで、意識が朦朧としてきたルフィの口から自分の名前が出たところでゾロがはっと我に返った。
「ルフィ…!」
「がっ…はっ…げほっげほっ……苦しっ…」
慌ててルフィの首から指を離した。とたんにルフィが激しく咳き込む
「……ごめん」
それだけ呟くとゾロは己の体を引き、ルフィを解放した。腕を拘束していた布も取り去った。床に横たわってまだ咳き込むルフィは、首にくっきりとゾロの指が残って手首には血が滲み、赤い筋が浮き出している。
「けほっ…ゾ…ゾロ…なん…でっ」
涙目で立ち尽くしているゾロを見上げるとルフィはのろのろと上半身を起こす。
「もう…やらねぇから…海賊もやめねぇよ。まして…お前が嫌いなわけじゃない」
「ゾロ…ゾロがやりたいんだったらオレ、やってもいい」
「コックは?」
切ない表情でゾロがルフィを見つめてすっとしゃがみこんだ。ルフィの涙を指で拭ってやるとすぐに立ちあがる。答えは聞かなくてもわかる。
「……でもオレは…ゾロも好きだから」
「それは違うぜ、ルフィ」
「なんでそう言えるんだよ?」
ルフィに背中を向けながら口を開く
「見てればわかる…それに、俺は……いや、なんでもねぇ」
「あっゾロっ!」
それだけを言うとゾロは男部屋を出て行く。後に残されたルフィは、わけがわからなくて再び涙で頬を濡らしていた。服を身につけることも忘れて時間だけが過ぎていく
「なんで?…じゃあ、オレはどうすればいいんだよ…ゾロ」
甲板に出たゾロは、己の犯した行動に頭を抱えていた。
「くそっ…殺してぇ…」
それは自分に向かってなのかルフィへ?それともサンジなのか…
「殺してやりてぇよ…みんな…夢も!俺も!あいつもっ」
壁際にずるずると腰を下ろしたゾロは己の感情を吐き出した。掌で顔を覆って指の間からは涙が止め処もなく溢れ出す。殺したいと思っていてもできるはずがない。ルフィの夢を自分の感情で壊すわけにもいかない。それにくいなと交わした約束が胸にあるかぎり自分が死ぬことは許されないのだ。
「体なんていらねぇ…俺が欲しいのは、そんなもんじゃねぇ」
ぐっと拳を握り締めて呟いたゾロはそのまま眠れない夜を過ごす…。眠らなければ夢に悩むこともないから…夢を殺す…いや、夢で殺されてしまう
「ルフィっどうしたんだっ」
「…あ、サンジ…なんでもない」
床に散らばった衣服、首に指の跡。手首の赤い筋。そして、ルフィから零れ落ちている血と…涙を見たサンジは何があったか悟った。ぎりりと歯をかみしめると甲板に出るためにマストへ向かおうとした。
「サンジっ!待って!行くなっ」
「…ルフィっ!なんでだっあいつを庇うのかよ?てめぇをこんな目にあわせたんだぞっ絶対許せねぇ!」
サンジの足に飛びついて引きとめるルフィ。
「いいんだ…もう…終ったんだから…」
「でもルフィ!こんな…」
ルフィの涙を優しく拭いて、そっと抱き上げソファに運んだ。柔らかい布でルフィの体を拭きとって毛布ごと一緒に包み込むとそっと抱きしめる。
「大丈夫だ…オレも、ゾロも」
「何があったかとかは聞きたくねぇ」
「…うん、サンキュなサンジ」
「今はもう寝ろよ」
サンジの胸の中で瞳を閉じて、すぐに寝息を立て始めた。ルフィが安心できる場所はここだけだから…
それをゾロは知っていた。知りたくもないのに知ってしまった
殺したかった…夢に自分が殺される前に…・
FIN |
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