■ 『 スキスキアイシテル 』 水天宮拓仄

 ここは、とある街の宿泊施設。ルフィ海賊団一行は長い航海から一時離れ、思い思いに過ごしている。サンジとルフィはいつものように同室であった。そして、ウソップとゾロが同室、ナミが一人で個室。これがいつもの部屋割りとなっている。
 時は早朝、まだ宿の人間も目を覚ましていない時間、サンジがふと目を覚ました。上半身には何も着衣をつけずにベッドサイドにおいてあるタバコへ無意識に手を伸ばそうとしたが、それは叶わなかった。サンジの手をしっかりと握ってすやすやと眠るルフィが彼の動きを制限していた。また、ルフィも何も身につけていない。
「…ったく、どこにも行かないっての」
 クスっと笑いながらサンジは心地良さそうに眠るルフィの髪に指をそっと差し入れた。起こさないようにやさしく撫でてみる。その感触を感じたのかサンジの手を払いのけるように、先ほどまでサンジの手を握っていた手を上げた。
「オレがどれくら思ってるかわかってねぇだろうなぁ、こいつは」
 今度はルフィの頭を掴むように手を乗せてそのまま動かす。さすがに、こうも激しく頭を弄くられればルフィも目を覚ますだろう。
「んっ…ん〜?なんだよサンジ?」
「愛してるぜルフィ」
 微笑を浮かべながら、覚醒したばかりのルフィにそっと腕を伸ばした。
「サンジ?」
「お前はどう思ってんだよ」
 ルフィに覆い被さって軽いキスを唇に落とした。その後に細い身体に腕を回してぎゅっと抱きしめる。抱きしめられたルフィもサンジの背中に腕を回して、開いたばかりの瞳を再び閉じた。お互いの鼓動が静かに交わるのを感じる。
「オレもサンジ好きだよ」
 そう言うとルフィはサンジにやさしくキスをを送る。そのキスを素直に受けとめたサンジは心の中でチクリとした痛みを感じていた。
("好き"と"愛してる"は別物なんだぜルフィ…お前の好きは誰にでも向けられてるものじゃないのか?ゾロにもナミさんにもウソップや、故郷の人にその、麦わらの持ち主とかも…お前にしては"好き"なんだろう?オレもその中の一人なんだろ?)
「お前はワンピースを見つけたらどうする?」
 抱きしめたままサンジはルフィに問う。
「ワンピースを見つけたらかぁ?ん〜考えてねぇよ。その時また考える」
「オレはレストランを開こうと思ってる。もちろん、グランドラインの海上でな…」
「レストランかぁ〜いいな、それ!おっさんみたいな店か?」
「オレが作ればあんなクソジジィより流行る店になるぜ、きっとな」
 抱き合ったまま遠い未来の話をイキイキと話す。
「オレがサンジの店手伝ってやろうか?」
 何気なく言葉を発したルフィをさっきよりキツク抱きしめてサンジは満面の笑みを浮かべた。自然にこの言葉が出てきたことがなによりも嬉しい。
「じゃあ、それまでに色々教えておかないとだなルフィ」
 抱きしめていた手を緩めてルフィの上に覆い被さるようにして見下ろす。顔を見合わせて笑い合った。
 ひとしきり笑い終わるとサンジはルフィの唇に自分のそれを落とす。さっきとは違う深いキスにルフィは少し苦しげな表情になる。
「っ……ん」
 お互いの舌を絡ませながらサンジはルフィの身体に指を滑らせる。その冷たくて気持ちのいい感触にルフィの肩が小さく揺れた。
「まずエッチから教えてやろうか?」
 クスクスと笑ってルフィの首筋にペロリと舐めて顔を上げた。サンジの視線の先には、少し頬赤らめたルフィが困ったなという表情になっている。
「夜もやったのに…」
「ばーーか、夜も朝もねぇよ。やりたいんだから」
 ちゅっと音を立てて敏感になりはじめている胸の先端にキスした。びくりと全身を振るわせるとルフィは、サンジの腕を力なく掴んだ。
「なんでやりたいんだよ?」
 拗ねた顔のルフィへの愛撫を続けながらサンジはふっと顔を上げて口を開いた。
「オレがお前を"愛してる"から。お前はどうしてオレとやるんだ?嫌なら逃げれるだろ」
 じっと見詰め合いながら動きも止めた。ルフィの表情の変化を見逃さないように目をこらす。拗ねた顔から今度は、頬を染めてうれしそうに笑うルフィ。
「オレもサンジを"アイシテル"からやってんだぞ…こうしてるの嫌じゃない」
「オレ以外とはやらないって言えるか?」
「うん、サンジ以外とはやってないぞ」
「やってないじゃないだろ。やらないんだ!絶対だぞ!ゾロとかナミさんでもだぞ」
 イマイチ感情を計り知れないルフィは、好意を持っている人、誰にでも求められたら許してしまいそうで恐かった。ただ自分は、ルフィを欲したのが一番早かっただけなのでは、という不安な気持ちが常にサンジの中に住みついている。
「わかってるよ、それくらい!これはサンジとしかやらないっ。サンジじゃない奴とは…やりたくねぇし」
「マジに?オレ以外とはやりたくないんだな」
 サンジの言葉にコクリとうなづいてルフィは恥ずかしいのか、脇にあった枕を被ってしまった。そのまま、サンジはルフィの全身を昨夜よりも丁寧に扱っていく、今まで以上にルフィを愛しいと感じていた。



 数十分後。サンジはシャワーを浴びてルフィが眠るベッドに戻った。今度は起こさないよう気をつけて、そっとベッドに腰を下ろした。
「なんだ…心配して損した感じだぜ」
 気持ち良さそうなルフィをじっと見つめる。
「…そういえば…こいつ、皿洗いもロクにできなかったな」
 バラティエでの雑用時代を思い出して苦笑いを浮かべ、ルフィと二人でレストランを経営することを思い描いていた。
「まっ…愛があればどうにか……なるか…な?」
 少々の不安を抱えていたがサンジの胸には幸せな気分が広がっていく。まだ、街が動き出すまで時間があると、サンジはルフィの隣に身体を横たえて瞳を閉じた。心地よい睡魔が彼を襲い、サンジはそれに素直に従うのだった。
 本物の夢を見れると思いながら…


おわり