■ 『 サンタクロースからのプレゼント 』 水天宮拓仄

「みんな集まれー!」
 唐突にルフィがゴーイング・メリー号の船首に仁王立ちで仲間達を呼び集めた。顔には満面の笑顔が浮かび、手には何が入ってるのかわからない箱。船長命令に、しぶしぶ集まってきたゾロ、サンジ、チョッパー、ウソップ、ナミ、ロビンの面々の表情は「…?」といった感じ。
ゾ「どうしたんだよルフィ。俺は今忙しいんだ」
ナ「そうよ、あんたと違って私は仕事が多いのよ」
サ「てめぇ、くだらねぇ用事だったらオロスぞ」
チョ「なんだ、なんだ?」
ウ「なんか…嫌な予感がする…」
 それぞれ文句を口にする仲間達を見て、ルフィの表情も険しくなってしまう。せっかく自分が名案を考えたっていうのに、この反応の悪さはなんだよ!という顔だ。
一同「で、いったい何の用だルフィ」
 の問いかけにルフィは自信に満ちた表情で、全員に紙を配る。怪訝な顔で紙を受け取った仲間達は紙とルフィを交互に見比べるが、紙を何に使うのか検討もつかないようだ。その反応にルフィは機嫌を良くして、再び船首の上に上ると声高らかに
「その紙に一番欲しいものを書いてこの箱に入れてくれ!」
一同「はぁ?」
 一斉に首をかしげてルフィを見上げた。続けてルフィは口を開いた。
「もうすぐクリスマスだろ?オレがサンタに代表してお前等の希望を伝えてやるよ!」
 サンタがいるものだと信じているらしい言葉に仲間達は、開いた口が開かなかったという。ただ、チョッパーはルフィと一緒におおはしゃぎだ。
「おおっすげぇなルフィ!お前サンタと知り合いなのか!」
「へへっまあな!毎年、クリスマスになるとオレが1番欲しいものくれるんだぜ!」
「お…おいル…」
「しっ!放っておきなさいよサンジ君…」
 本当のことを教えてやろうとしたサンジをナミが背後から肩を掴んで止めた。可哀想な人を見るような視線でルフィを見て静かに首を横に振った。
「あいつの夢を壊しちゃかわいそうよ…そっとしておきましょ」
「え…でも、ナミさん。本物なんていやしませんよ…今年のクリスマスって船の上だし、あいつのプレゼントなんて…」
「いいのよ、それで。あいつが口で説明してもわかると思う?今年、サンタが来なかったら…本当のことがわかるってものよね」
 はあっとため息をついたナミはルフィに渡された紙に何かを書きこむと、ルフィの持っている箱に入れた。
「お、ナミはええな!クリスマスはオレに任しておけよ!」
「期待してるわ、ルフィ…。じゃ、私まだ日記書いてる最中だから」
 スタスタとルフィの前から立ち去るとナミは重い頭を抱えながら船室に戻っていった。次にルフィの元にやってきたのは、ずっと沈黙を守っていたロビン。すっと紙を箱に入れてルフィに微笑みかける。
「よろしくね、船長さん」
「おうっしっかりサンタに言っておくからな!」
 そして、ゾロもルフィの気持ちを汲んで紙に何かを書きこんで箱に入れるとそそくさと修行に戻ってしまった。ウソップも「やれやれガキだなルフィも」と内心思いながら、箱に紙を入れた。そして、チョッパーは色々と迷ったすえにようやく紙を箱に入れると大はしゃぎで自分の持ち場に戻っていく。
「しししっこれで全員の分が揃ったな」
 箱を持ってバタバタと倉庫に入ると誰も入ってこれないように中から鍵をかけて箱を開ける。1枚1枚紙を広げ、床に並べた。
「ゾロが…<100tのバーベル2本>うわっゾロらしいなこれ」
「で、ナミが<一千万ベリー>お金かぁ…」
「ウソップはっと<卵1年分>1年分って…腐るんじゃねぇか?」
「チョッパーが<海賊っぽいもの>海賊って言ったら…眼帯(何故)?」
「ロビンは…<書棚>なんだ、あいつ本そんなに持ってたのか〜全然知らなかった」
「最後はサンジだな…どれどれ<ルフィ>……」
 サンジの書いた紙をじっと見つめて、ちょっと頬を赤らめたルフィは、倉庫で一人硬直した。
「あいつ、何考えてんだ…オレは物じゃねぇぞ」
 サンジの書いた紙をくしゃくしゃにして自分のポッケの中につめこむと、床に広げたみんなの希望を書いた紙を空きビンにつめると、倉庫から出て甲板から海に思いきり放り投げる。
「サンタに絶対届いてくれよなーーーー!」
 ルフィの声が青い海に響き渡っていった。その声がサンタに聞こえたかどうかはさだかではない。



−そして、クリスマスの朝が来たー
 仲間達の予想とおり、ルフィが伝えたと言うサンタからのプレゼントは届かなかった。ゾロ、ナミ、ロビン、ウソップは、本気で悲しみに暮れるルフィとチョッパーを哀れんだ視線で見つめるが、どう慰めて良いのかわからずにいた。
「オレ、いつも通りにサンタに手紙書いたのに…どうして来てくれなかったんだろう?」
「ルフィ…オレ、すごく楽しみにしてたけど…お前のせいじゃないぞ」
 チョッパーがルフィをなぐさめてみるものの、ルフィの耳にはあまり届いていないようだ。がっくりと肩を落としたルフィは、トボトボと力なく甲板を歩き船首に腰かけた。
 悲しげなルフィの後ろ姿をしばらく見ていた仲間達。
「しばらくそっとしておいてあげましょ…ショックが大きいみたいだから」
 ナミの言葉に一同がうなづいてそれぞれの場所に戻った。その直後にルフィの背後に近づく者がいた。ふわりと背後からルフィを包みこむと、耳元でささやく声はサンジのものだ。
「…サンタ、ちゃんと来たぞ、ルフィ」
「…慰めなんていらねぇ!サンタ来なかったんだ」
 鼻をすすりながら海を見つめるルフィ。
「いや、来たさ…オレが欲しかったモノが今、オレの腕の中にある」
 サンジの言葉にはっと顔を上げる。くしゃくしゃに丸めて自分のポッケに入れた、サンジが書いた紙を思い出していた。
「オレはモノじゃねぇし…サンタが持ってきたわけじゃねぇぞ」
「オレにはサンタが持ってきたってことだな」
「…サンタ来たのか?」
「ああ」
 にっこりと笑顔をルフィに向けると、ルフィが振り返ってサンジに抱きついてきた。
「サンキューサンジ」
 つぶやくルフィの唇に自分のそれを合わせると、サンジはぎゅっとサンタからの、愛しいプレゼントを抱きしめていた。


『メリークリスマス』


Fin…