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| ■ 『 君をさがしてた 』 水天宮拓仄 |
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ゴーイングメリー号のキッチン。テーブルにつっぷして眠りこけているルフィを、濡れた手を綺麗に布でふき取りやさしい微笑みで、意外と柔らかな髪をそっと撫でる。
「ルフィ」
「……ん…ンジィ飯〜ぃ」
「ははっまた飯の夢かよ」
笑いながらサンジはルフィを起こさないように隣の椅子に腰をかけた。じっと眠りこけるルフィを見つめて口を開いた。
「ずっとオレはお前だけを見てるんだぜ…お前はオレをずっと見つめてくれないのか?」
ふっと寂しそうな表情でサンジがつぶやくがその問いに答えてくれるはずもなく、平和そうな表情で眠るルフィ。
その寝顔を見つめながらサンジは、ルフィの仲間になった頃を遠い目をして思い出していた。
「あの頃はオレも色々強がってたよなぁ…コイツと会わなければ一生だったか」
―数年前・海上レストランバラティエー
『"偉大なる航路"はよ……あいつの夢なんだ』
ドア越しにオーナーの言葉を聞いた瞬間にオレは今までの迷いや心残りが消えていった。命を救われた恩を感じて、恩を返そうとずっと一緒に生きてきた男の気持ちを初めて知った。一緒に生きるだけが恩返しじゃないということも知った。
それと同時にこれから一緒に生きたいと思う男との出会いでもあった。
『オレもいくよ。連れてけ。つきあおうじゃねぇか"海賊王への航路"バカげた夢はお互いさまだ。オレはオレの目的の為にだ』
オレの決意を聞いた時のルフィの表情は忘れられない。信じられないとってような表情が印象深かった。あんな強引な奴でも信じられないと思うことがあるなんて意外だった。オレが最後まで拒みつづけても無理やり船に乗りこまされるかと思っていたからな。
この瞬間からオレは今までの生活に別れを告げ、ルフィと一緒に海に出た。
「"守ってやる"なんてタマじゃねぇが…ずっとそばにいてやりてぇのはマジだぜ」
テーブルで眠っているルフィの額にそっと口づけると、ルフィの頬がほんのり赤くなっているのが目に入る。そういえば、しばらく前からいびきが止まっていたような気が。
「…起きてたのか、ルフィ」
バツが悪そうな表情で笑うとサンジはルフィの頭を少し荒荒しく撫でた。
「しししっ!まあな」
「ちってめぇも人が悪いぜ。起きてたならさっさと目開けろよな」
椅子から立ちあがるとサンジはナミから買ってもらった冷蔵庫のドアを開いて中から冷たいワインを取り出す。ワイングラスを2つ用意してテーブルに置くと、ソムリエ顔負けな仕草でグラスにワインを注いだ。
「ほら、飲めよ。そんなにアルコール強くないからてめぇでも飲める」
「ん、サンキューサンジ!」
2人でグラスを持つとカチンと合わせて口に運ぶ。2人の口中にほんのり甘いワインが染み渡った。
「…あのな」
グラスを空にしたルフィが突然サンジを見上げて口を開いた。酒のせいなのか、別のなにかのせいかはわからないが、ほんのりとルフィの頬には赤みがさしている。
「なんだよ」
さっきのひとり言を聞かれたことからサンジの胸はドキドキと高鳴っている。必至に冷静さを保とうとわざとそっけない返事を返した。
「その…さっきのことなんだけど」
モジモジと言葉を捜すように目を空中に泳がせながらルフィは必至に考えているのがわかる。自分の気持ちをどう表現してよいのかわからないようだ。しかし、それはサンジも同じ。
「さっきのこと…って」
「だから、オレが寝てた時にサンジが言ったことだけどさ…オレ、なんて言っていいか。うまく言えねぇんだけど…」
「あ…あれか…あれはその…」
2人で向かい合ってモジモジと頬を赤らめて口ごもる。
「オレもずっとサンジのこと見てるんだぞ!」
ますます赤くなったルフィがそれだけをサンジに告げると、すごい勢いでドアを開けてキッチンから飛び出していった。後に残されたサンジも呆然と立ち尽くして、思い出したように顔を真っ赤に染めている。
「ウソだろ…おい…奇跡…か?」
いつのまに自分とルフィの間に、こんな感情が生まれていたのだろう。自分はずいぶん前にルフィへの感情を理解していたが。まさか、ルフィも同じ気持ちだったとは奇跡としか思えなかった。仲間同士でまして男同士の感情。
「…そういえばオレはずいぶん強くなったかもしれない…アイツのために強くなりたかった」
開いたままのドアから見える満天の星空を見つめたままサンジはその場に腰を落とした。懐から煙草を取り出して火を慣れた手つきでともす。
「やっと分かった。オレはオレを強くしてくれる奴を…そして、一緒に生きていく奴をな」
肺に吸い込んだ煙をゆっくりと宙に向かって吐き出して瞳をゆっくりと閉じる。
(あいつと2人ならどんな事も乗り越えていける気がする…共に生きることができる)
今までに感じた事がないほどの安堵を感じながらサンジは時間が経つのも忘れてずっと星空を見つめていた。
愛しい者を見つけた喜びを感じて…
fin |
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