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| ■ 『 Necessity 』 水天宮拓仄 |
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ここはとある国のある街を治める青年が住む屋敷。
今、屋敷に仕えていたコックが主人の前に申し訳なさそうな表情で佇んでいた。
「申し訳ありませんが・・・」
「そっか、サンジもオレの屋敷から出て行くんだな」
少し寂しい表情になって、この屋敷の若き主人であるルフィは懐から白い封筒を取り出し
目の前に立ったままのサンジに渡す。最後の給金というわけだ。
「これからどうするんだ?サンジ」
「故郷に帰って、レストランでも始めるつもりです」
「そっか、サンジの料理は美味いからな!絶対にはやる店になるぞ。開店したら知らせてくれよ?
そしたらオレも食べに行くからさ」
「はい・・・その時はお願いします」
封筒を受け取るとサンジは、最後に若き主人の顔を見つめ直して踵を返した。
潤んでいる瞳を見られたくなくて、振り向かないまま深く頭を垂れる。
「今までお世話に、な・・なりました!」
「ああ・・・今までオレのために料理作ってくれてありがとうな。美味かったよ」
ソファから立ち上がってサンジが部屋を出て行くのを見送ってルフィは溜め息をついた。
「・・・これでこの屋敷には、お前しかいなくなったな・・・ゾロ」
ずっとルフィの脇に無言のまま控えていた男を振り返って寂しそうな表情を見せる。
「・・・やはり、寂しいものですね。数ヶ月前までは・・・賑やかだったというのに」
ルフィがこの屋敷に住むようになったのは、数年前のことであった。
この国を救った英雄として、人々に称えられ。領主に任命されたのである。
ルフィには、強大な超能力が秘められており・・・約十年前、ルフィがまだ少年だった頃
国を治める国王一家と住まいの城をを敵国の攻撃から無傷で救ったのが始まりだ。
戦争はルフィの活躍も大きく、数年で終戦したが・・・ルフィのあまりにも強大な力を
国王は恐れていた。ルフィがその気になれば、いつでも自分を暗殺することができる。
そして、国王はルフィを救国の英雄とし・・・城から一番遠い領主に任命したのだ。
「そうだな。ここに来たばかりの頃は街の民達も歓迎してくれたってのに」
大きな溜め息をつくとルフィは窓の外に広がる街の風景を見つめていた。自分が守ってきた領地。
「・・・・・・・」
ルフィの辛さが身に染みるほどよくわかるゾロは、そっと瞳を閉じた。
数年前、救国の英雄ルフィを迎え入れた街の人々は、熱烈な歓迎をしてくれた。
ルフィの屋敷に訪ねてきて、屋敷に仕えたいという者も大勢おり、ルフィは人々を歓迎した。
そして、平和になって月日が経っていく内にルフィの秘めた強大な能力を人々は疎み始める。
つい先日、街の代表者がルフィの屋敷に訪ねてきた。
「ルフィ様。この街から出て行ってもらえないか」
「・・・・それはみんなの意志ということか?」
「はい、その通りです」
「何を!今まで英雄だと救国の戦士だと称えておいて・・お前達の仕打ちがこれか!」
親友で、昔からの側近を務める剣士・ゾロの剣幕に代表は一瞬ひるんだが住民から集めた
署名帳をその場に残し、足早に部屋から出て行った。部屋に残っているルフィとゾロ。
目の前に突きつけられた、今まで慈しんで守ってきた民達の意志・・・それが追放とは。
「くそっ・・・どうして!」
怒りに拳を震わせてゾロが署名帳を手に取り、床に叩きつけた。それを静かに拾うルフィ。
「よせよ、ゾロ・・・オレのような人間は、戦争で死ねばよかったんだ」
涙も見せずに、署名を確認すると屋敷に仕えていた者たちの名前までもが記帳されていた。
「そんなことはオレがさせません!あなたはまだ生きなければ・・・」
「どこへ行っても、オレの力は災いを呼ぶ。もう、疲れたよ」
署名帳と民からの手紙を自分の執務机に片付ける。もう一度大きな溜め息をついて椅子に腰掛けた。
ゾロが瞳を開いて窓の外を見つめるルフィに視線を移すと、窓の外から大勢の人々が
手に手にたいまつを持って屋敷に集まってきた。先日、受け取った手紙の追放期日が今日。
手紙には『指定の期日までに屋敷を出て行かなければ、我々は強行手段に出ることもやむをえない』と。
「ゾロ・・・もうこの屋敷には誰も残っていないな?」
「はい・・・さっきのサンジで最後です」
「そうか・・・なあ、ゾロ」
「なんでしょう?」
「もう、いいだろう?昔に帰っても」
悲しい笑顔をゾロに向けて、カーテンを引く。カーテンの向こうには陽炎が揺れるかのように
民達のたいまつがだんだんと屋敷に近づいてくる。
「ああ、そうだなルフィ・・・オレはいつまでもお前と一緒だ」
「悪い・・・でも、そういうゾロだから、好きなんだオレ」
ゾロにそっと抱きしめてもらいながら満足そうな表情になるルフィ。屋敷の外が真っ赤にそまる。
民達がついに屋敷に火を放ったようだ。室内の温度はどんどん上昇していくが二人はじっとその場に留まった。
「オレも好きだ・・・最後まで一緒に過ごすことができて、よかった」
「ああ・・・・。なあ、オレ達・・・生まれ変わっても会えるかな?」
「会えるさ。姿形は変わっても」
部屋の中がついに炎に包まれる。炎の中、二人はそっと口付けを交わすと静かに時が止まるのを待った。
数百年後。
ここは、とある海軍基地の町。海軍基地の広場には一人の賞金稼ぎが捕らえらえていた。
「魔獣はどこかなぁ?」
海賊王を目指す少年と世界一の剣豪を目指す青年の新しい出会いが必然だったというお話。
end |
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