■ 『 一年の計は元旦にあり 』 水天宮拓仄

「ルフィ〜!早く支度しろっ初詣に行きたいって言ったのお前だろ?」
 いつものスーツを身に纏い暖かそうなマフラーにコートを身に着けたサンジが少しいらつきながらキッチンをウロウロしていた。手には、ルフィのために作ったお雑煮。今日は、1月1日である。同棲している二人は夜ベッドの中で新年を迎え、そのまま初詣に行くことにしたのだ。
「ちょっと待ってろ!今着替えてるんだからっ」
 そう言いながら部屋から出てきたルフィの姿を見てサンジが驚いた。ルフィは、見事に紋付き袴を着こなしている。初めてみる晴れ姿にサンジがドキリとした。
「お前、着物なんて着れた…のか?」
 頬を赤らめてゆっくりとルフィに近づきながら、下から上までじっくりと見つめる。その視線に笑いながら得意げにルフィは口を開いた。
「だって、昔からグランドライン社の新年パーティとかでシャンクスと一緒に着てたもん」
 そう、ルフィは一流食品メーカーのグランドライン社の営業社員でもあり、跡取り息子なのである。ちなみに、サンジはグランドライン社の社内食堂“ばらてぃえ”の料理長を務めており、ルフィやゾロとは幼馴染だ。
「ああ、そういや、そうだったな…お前は若様だったもんな」
「若様ってなんだよ?」
 皮肉られたような気がして頬を膨らませたルフィにお雑煮を渡す。
「ふくれてないで、さっさと食べろよ。オレ様特製雑煮だ。餅はないから我慢しろ」
「おっうまそう!」
「当然だな、オレが今までお前に不味いもん食べさせたことあったか?」
 サンジの台詞にお雑煮を食べながら頷くルフィ。手早くお雑煮を食べ終えた二人は、初詣に行くべく住んでいるマンションを出た。


―とある神社―
 初詣の参拝客の多さに二人は面食らっていた。どこを見ても人ばかり、少し気を抜くとはぐれてしまいそうだ。しっかりと手を握り合ってひとごみの中をひたすら境内に向かった進んでいくと、人込みにの中に見慣れた頭を見つけたルフィが声を上げた。
「ゾローーー!」
 人より背の高いゾロの特徴ある緑の頭が動きを止めるとくるりと振り返った。その表情は、ルフィとサンジに会った気まずさからか苦笑いが浮かんでいた。
「よお…お前らも来てたのか」
「なんだよ、まさかお前も来てるなんてな…ってナミさん!」
「あ…あけましておめでとう。サンジくん、ルフィ」
 ゾロの影に隠れていたナミが照れた笑いを浮かべながらサンジとルフィの前に姿をあらわしていた。高級そうな晴れ着に身を包んでいるナミは普段のスーツとは違うイメージだ。
「おうっおめでとう!」
 ゾロとナミの気まずさを微塵も気づかないのんきなルフィは明るく新年の挨拶を交わす。
「晴れ着姿も素敵ですね…ナミさん」
 デレっとした表情でナミを見つめて、次には崩れた表情になるサンジ。
「でも…知らなかったですよナミさん。いつのまにマリモとそんな関係に?」
 がっかりとしたような表情でナミに詰め寄るサンジの様子に腹を立てたルフィが頬を膨らませた。それに気づいた者は誰もいない。
「あ、違うの!お互い初詣に一緒に行く人もいないから…その・・一緒に行こうって誘ったの」
 手を前のでパタパタと振りながら言い訳のように言葉をつむぐナミ。
「最近、物騒だろうが…女の一人歩きは危ないと思って付き合ってやったんだよ。文句あっか」
「ふーん……」
 二人を横目に見ながらニヤニヤと笑うサンジは、ナミの気持ちを察してそれ以上は何も言わないことにした。そして、ふと気づくと今まで隣にいたはずのルフィの姿が見えなくなっていることに気づく。
「ルフィ?」
 周囲を見回してもルフィらしき姿は見当たらない。どこを見ても見知らぬ他人に溢れるばかり。
「あの馬鹿っ!あれほどはぐれるなって言っておいたのにっ」
「あいつ方向音痴よね?この人込み大丈夫かしら…」
 ナミも心配そうに周囲を見る、ゾロも少し高い目線をいかして見渡すがルフィを見つけることはできなかった。
「仕方ねぇな…ひとまず境内に向かおう。この人の流れに乗っていけばあそこに着くだろ」
「そうね、その方がいいかも。下手に動きまわるとますますわからなくなるわ」
「…ルフィ…ったく。何が気にいらなかったんだよ」
 自分がナミにデレデレとしたことを棚にあげて見当たらないルフィに毒づいた。


 数分かけて三人は神社の境内に辿りつくと、境内の真中を陣取って神妙な表情で手を合わせているルフィを発見した。一番にサンジが駆け寄る。
「ルフィ!探したぞっ!勝手に動くなよ…心配するだろ?」
 心底ほっとした表情でルフィの手を取るとサンジの手を振り解いて、再び手を合わせるルフィ。そのあまりに真剣な様子に三人は見守るだけだ。しばらくの沈黙の後、ようやくルフィが手を合わせるのやめて、サンジ達に向かって笑顔を向けた。
「悪りぃ!ちょっといっぱいお願いしてたんだ!」
「もうっ心配したじゃないルフィ」
「…ったく」
「何をお願いしたんだ?」
 あんなに長い時間を使ってお祈りをしていたのだ、当然気になる。すっかり冷えてしまったルフィの手を握りしめながら疑問を口に出した。
「んっ?秘密だっ!」
「ああ、そうかよ。じゃあ、オレのお願いも秘密だ」
 懐からお賽銭を取り出して、箱に投げ込むとパンパンと手を叩き、短くお祈りをしてサンジも笑顔を見せる。その横から、ゾロとナミもそれぞれお賽銭を投げ込む。ゾロは手を叩いただけだったが、ナミもルフィと同じように真剣な表情で手を叩いた。
 お参りを終えたナミが笑顔で3人の顔を見つめてにっこりと笑った。
「さ、お参りも終ったし。新年会でもやりましょうか!」
「賛成!ウソップとかシャンクス達も呼ぼう!」
「そうだな…元旦に新年会ってのもたまには悪くない」
「料理はオレが腕によりをかけて作りますよっ」
 四人は肩を並べて神社を後にした。それぞれの願いを胸に秘め、一年の幕開けを楽しんでいるようだった。

彼らが何をお願いしたのかは、神のみぞ知る…


fin