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| ■ 『 最高の告白 』 水天宮拓仄 |
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デービーバックファイトは、ルフィ達の勝利で終った。だが、最後の試合を闘ったルフィは試合に勝った瞬間に気を失っていた。倒れるルフィを、仲間に戻ってきた船医のチョッパーが必死に介抱する中、サンジが見つめていた。
「…おれの仲間は死んでもやらん…か」
小声で呟いて、ルフィの目が覚めるといつもの彼に戻る。仲間達と勝利を喜び合い、ルフィの勝利を称える“仲間”だった。
昼間のお祭り騒ぎが嘘のように船全体は静まり返っていた。サンジは中々眠りにつくことができずに、夜中に一人甲板に腰を下ろし、煙草を口に加えていた。その表情は、試合に勝利した後の男としては暗い。
「…なんだ?夜食ならねぇぞ」
背後から近づく足音に気づいたサンジは振り返りもせずに言葉を放つ。その言葉に一瞬立ち止まった足音の主は試合で傷つきながらも仲間のために勝利したルフィだ。いくらルフィがゴム人間で強いと言っても、刃物で傷つけられたら体にも傷が付き、痛みも当然ある。今もチョッパーによって施された包帯が全身に巻きつけられていた。所々、血がにじんでいる所もある。
「今日はいらねぇって…」
「珍しいな?」
意外な言葉にサンジはすっと近づくルフィを振り返った。あまりにも痛々しい姿に目を見開くが、次の瞬間には固く目を閉ざし、唇を強くかみ締めていた。
「サンジ?どうしたんだ?そんなに噛んだら口切れるぞ?」
咥えていた煙草がぽとりと床に落ちるがサンジは気にとめない。サンジの様子にルフィは戸惑うとすっとサンジの前にしゃがみこみ、サンジの足の間に落ちた煙草を拾って海に投げ捨てた。
「なあ、サンジ?どうしたんだよ?どっかいてぇのか?チョッパー起こしてきたほうがいいか?」
「…ねぇんだよ」
唇をかみ締めながら、隙間からこぼれたサンジの声をよく聞き取れずにルフィは頭を傾げる。
「え、なに?」
「お前がいなきゃ、意味ねぇんだよオレは」
(オレノナカマハシンデモヤラン)
真正面にしゃがみこむルフィの両肩を掴むとじっと瞳を見つめるサンジにルフィはいつもの笑いを見せた。しししっと口元をほころばせる。
「おれもお前らがいなきゃ海賊やってても楽しくねぇもん」
その笑顔と言葉にサンジのどこかが切れた。両肩を力強く掴みそのまま甲板に押し倒すと、傷と肩を掴まれた痛みに顔を歪めたルフィの唇を奪う。
「う…・むっ…なっ…サ…ンジ!や・・めろっ」
突然のことでルフィは混乱しながらも抵抗をする。それを上からの圧力と、胸の傷を抑えることで制したサンジは更にルフィの唇を犯しつづけた。
「…っう!…いてぇな、クソ」
唇の端から血を流しながらサンジは自分の下で荒くなった息を整えようとしているルフィを残酷な気持ちで見つめていた。自分とルフィの気持ちの違いに腹が立った。自分は所詮、仲間の一人でしかないというルフィの言葉。わかっていたが、言葉にされると暗に自分の気持ちをわかりつつも牽制されたような気分になった。
「…ンジこそ、なんだってんだよ」
自分の口内に侵入してきたサンジの舌に歯を立て、自分の唇にもサンジの血が滲んでいた。口の中に広がる鉄の味とわずかに混じる煙草のにおい。不思議とそれに自分が嫌悪感を覚えないことにルフィは少し戸惑う。その戸惑いが表情に出たのかルフィの表情の変化にサンジの凶暴になっていた心が静まる。
「悪かった…お前の気持ちとオレの気持ちにギャップがあるのは最初からわかっていたことだし、それをお前に押し付けるつもりはねぇ」
すっとルフィの体を解放すると懐の中を探り煙草とマッチを取り出した。煙草を再び口に咥え、火をつけた。火のついた煙草を横から、いつの間にか立ち上がっていたルフィが横取りするとサンジは目くじらを立てルフィの方へ振り返った。
「あ、てめぇ…って、何やってんだ?」
サンジから横取りした煙草を咥えていっきに煙を吸い込んだルフィは、激しく咳きこむ。ゲホゲホと苦しそうに煙草をさらに唇に運ぼうとする手をサンジが止めた。
「ばーか、お前にゃ似合わねぇよ」
「げほっ…うぇっまじぃ…」
まだ苦しそうな表情でサンジの持つ煙草を見る。
「いつもは煙たがるだけのくせに」
横目でチラリとルフィを見て改めて煙草を口に運ぶ。今度はルフィの邪魔も入らなかった。
「…さっき、嫌な味しなかったから…うまいのかなって…」
サンジに唇を犯されたときにことを思い出したルフィの頬がわずかに赤らむのを見て自分の頬も赤く染まる。まるで意表をついたルフィの反応にどうしてよいのかわからなくなるほどだ。
「え…さっき…ってのは…その、なんだ…接吻のことか?」
「…ん」
二人で赤くなりながら、ルフィが小さく頷く。
「嫌な味しなかった…」
「それで吸ってみようと思ったのか?」
煙草を唇から離して火の灯った先端を見つめる。赤く燃える先端からは白い煙が細く高く立ち上って夜空に吸い込まれた。
「ルフィ…もういっかいしてみるか?」
「なに…を?」
問いかけてる最中に迫ってくるサンジの唇。だんだんと自分に近づいてくるサンジ。綺麗な瞳は今は閉じられ、薄い唇は少しだけ開かれている。近づいてくるサンジをなぜか正視できなくてルフィも瞳を閉じた瞬間、さっきとは違う優しい口付けを交わした。
「…んっ」
少し唇を開かせ角度を変えゆっくりとルフィの口内を味わう。さっきの余裕がなかったキスとは違い、サンジも存分にルフィの唇を感じることができた。ルフィは、再びサンジの舌に煙草のにおいを感じるが、それが嫌と感じない。まずいとも感じない。その答えがなんなのか、今のルフィにはわからないことだった。
「んんっ…はっ…サンジ」
「ルフィ……オレは…お前のこと好きなんだぜ…わかってんだろ?」
唇を離して真剣な瞳で見つめてくるサンジの言葉。自分もサンジは“好き”だというのは出会った時から変わらない。それはサンジも知っていることだ。でも、サンジの言っている“好き”は自分がサンジに伝えてきた“好き”とは違うような気がして言葉がうまく出てこない。
「……」
返す言葉が見つからないルフィにサンジは更に言葉を続ける。
「お前は卑怯だ…。オレがお前を“好き”だというのを知っていて、あんなことを平気で抜かしやがる」
―オレノナカマハシンデモヤランー
「あんなこと?」
「おれの仲間は死んでもやらん」
一言一句ルフィの言葉を感情のこもってない朗読で復唱するサンジ。
「それは本気だ!おれの仲間は死んでも誰にもやらねぇ」
「ああ、本気だろうな。オレ達はお前が死んでも、お前の“仲間”だ。お前が船長じゃなきゃ、オレは海には出なかった…オレは、お前のために命の恩人を捨てて海に出てきた…それが、何を意味してるかお前は考えたことがあるか?」
サンジの言わんとすることが理解できずにルフィは表情を歪める。
「なあ、ルフィ?オレはお前にとって、ナンだ?ただのコックで仲間の一人か?」
そう言われてルフィは大きな瞳をさらに見開く。サンジの気持ちがやっとはっきりと理解できた。サンジの“好き”は自分が仲間に対する“好き”とは違う種類だということ。そして、自分もサンジが同じ“好き”なのか?と。
「サンジ…おれ…」
何かを言おうとしたルフィの言葉をさえぎってサンジはさらに続ける。
「オレのこの気持ちを知ってるくせに、お前はいつも“死”を軽々しく口にしやがる…お前が死んだら、オレも死ぬってわかってんだろ?」
その言葉を聞いたルフィは迷うことなく頭を縦に振っていた。
「……だから、おれも好きなんだ、サンジが」
満面の笑みをサンジに向けてルフィは明るくなりはじめてきた空を見上げる。
「死ぬ時は一緒だ、サンジ」
「…最高の返事だ…ルフィ」
涙がこぼれそうになるとサンジもルフィの横で消えかけていた星の光を見つめていた。
Fin |
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