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| ■ 『 別離 ゾロ編 』 水天宮拓仄 |
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「じゃあな……ウソップ。今まで……楽しかった」
傷だらけになりながらルフィが俺達の待つ、メリー号に向かって歩いてくる。
ルフィの後ろにはたった今、決闘で敗れたかつての仲間・ウソップが倒れた姿が
俺達に別れを告げているかのようだった。
そして、ルフィも堪えきれない涙を拭うこともしないまま、ウソップに別れを告げたのだった。
−ゾロ篇―
「重い……!」
肉体も傷つき、心までも深く傷ついたルフィを俺は優しく慰める気はない。
お前は誰よりも強い男だと信じているから。
「―それが船長だろ…!―迷うな。
お前がフラフラしてやがったら、俺達は誰を信じりゃいいんだよ!」
慰める気はないが…お前を信じることはできる。
俺は、最後の時までお前と共にいると誓ったから。
「船を空け渡そう。俺達はもう……この船には戻れねぇから」
俺の代弁にルフィも仲間たちも頷いた。これでメリー号ともお別れだ。
だが、船が変わっても俺の誓いも野望もかわることはねぇ。それはルフィも一緒だ。
だからこそ、ウソップとメリー号と別れることを決意した。
船にある自分の荷物をみな無言でまとめている。
ルフィもウソップとの決闘から言葉を発することもなかった。
倉庫の荷物を整理しようとルフィとゾロがそこに入ると、ウソップの私設ラボがそのままにされている。
「…これは、そっとしておこう。ルフィ」
「……ああ」
やっと涙も収まったルフィの瞳が再び揺らいだのを見てゾロの胸が痛んだ。
「…なぁ…本当にこれでよかったのか?」
涙声になりながらルフィが少し背の高いゾロを見上げてきた。
この別れは自分で決断したこととはいえ、
今まで一緒に冒険してきた日々を思うと悲しみがまたこみ上げてきたのだろう。
ボロボロと涙をこぼしゾロの胸に額をこつりと当て、肩を震わせて泣いているルフィ。
「俺は…いや、俺達はお前の決断を信じるぜ…お前は俺達の船長だ。
お前の決断は間違っていようが何だろうか、俺達にとっちゃ正解なんだよ」
「でも…ウソップを切り捨てたんだぞ、俺は」
ゾロの胸を両手でドンと強く叩く。
その衝撃を受け止め、ゾロはルフィの両肩を持ち、ぐいっと自分から引き離した。
強い瞳でルフィの涙に濡れた瞳を見つめ口を開く。
「ああ、お前はウソップを切り捨て“海賊王”の野望を選んだ!奴もそれを望んだ!
俺達もお前の決定に従う。野望を掴むためにゃ、こうして進んで行くしかねぇからだ!
俺もお前と一緒に野望を果たすを誓ったから、こうしているんじゃねぇか」
「じゃあ、ウソップの野望はどうなるんだよ…俺の決断でそれをぶち壊したんだぞ!」
まだ何かを言おうとしたルフィをゾロはぐいっと引き寄せると唇を自分のそれで塞いだ。
これ以上ルフィのこんな弱気な言葉は聞いていたくなかった。
なにより、ルフィの涙を止めたかった。
「んんっ…?」
「すまん…」
突然の口づけにルフィの涙も止まり、目を白黒させてゾロの顔を見つめた。
「ルフィ…お前は、自分の野望を果たすために海に出たんじゃないのか?」
「…もちろんだ」
「だったら…いつまでも泣いてんじゃねぇよ!前だけ見て進んでいけばいい」
「……」
更に言い募ろうとしたが良い言葉が浮かばずゾロは頭をがりがりと掻く仕草を見せる。
「とにかく。お前がそんな調子だと俺も困るんだよ…もう、泣くなよルフィ」
「ゾロ…俺は自分の野望を叶える為に海賊になった。そして海賊王になるって決めた」
「ああ」
「ナミもサンジも…チョッパー…そんで、ゾロの野望も抱えてるんだな…俺」
「そういうことだ、頼むぜ。船長」
腕に巻いたバンダナをするりと取るとルフィの涙を手荒く拭い、バンダナをルフィに手渡す。
「いてぇ…そんなに強く擦んなよ」
「悪かったな、それ、しばらく持ってろ。また泣いたらそれでふけばいい」
「もう泣かねぇよ!」
ムキになってバンダナを片手に駆け寄ったルフィをゾロは無言で迎えると
二人で並んで倉庫の荷造りを再開したのだった。
End |
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