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| ■ 『 別離 サンジ篇 』 水天宮拓仄 |
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「じゃあな……ウソップ。今まで……楽しかった」
傷だらけになりながらルフィが俺達の待つ、メリー号に向かって歩いてくる。
ルフィの後ろにはたった今、決闘で敗れたかつての仲間・ウソップが倒れた姿が
俺達に別れを告げているかのようだった。
そして、ルフィも堪えきれない涙を拭うこともしないまま、ウソップに別れを告げたのだった。
−サンジ篇―
メリー号が停留させている岩場の岬を一望できる場所にサンジはやってきていた。
自分達がウソップを除いて、メリー号を降りたことを知らないロビンが戻ったきた時のために。
煙草を懐から取り出し火を灯すと口に咥える。大きく煙を吸って、肺に浸透させた。
「ふ〜っ」
煙を吐き出してその場に座ると遠くに見えるメリー号を目を細めて眺めていた。
ふと、背後から近付く気配を感じてゆっくりと振りむくと、そこには…
「ルフィ…どうした?眠れねぇのか?」
「サンジこそ、何やってんだよ」
普段のルフィからは考えられないほど無表情のまま、
サンジが座っている隣にすとんと腰を下ろした。その存在は、とても小さく感じられた。
「俺はロビンちゃんが船に戻ってこないか見張りに来たんだ。
彼女は知らないだろ?俺達が船を降りたって」
「ふーん」
たいして興味なさそうに、それだけを呟くとルフィはじっとメリー号を見つめる。
「今ごろ…アイツ、なにやってんだろうな…。傷の手当てとかちゃんとやったかな」
膝を立てて座ったルフィは、自分の膝に頭を預けてボソリと呟いた。
あえて、名前を呼ばないのは、ウソップの名前を口にしたらまた自分が泣いてしまうことが
わかっていたからだ。
「大丈夫だろ…チョッパーが薬やら包帯やら大量に置いてきたんだ。心配か?」
「そりゃ…い、いや、なんでもねぇ!」
心配そうな表情をしながらメリー号を見つめていたルフィは、ふいと視線を逸らす。
「そうだよな。もうウソップは俺達の仲間じゃねぇし。心配する義理もねぇよなぁ」
煙草をぴっと指ではじくと次の煙草を取り出そうと懐に手を入れた。
「それに…もう走れねぇ船にこだわって命を落としたら、どうしようもねぇだろ?」
無言のルフィをチラリと横目で見ながらサンジは更に口を開こうとした。
「…ンジ…」
「ん?お前もそう思うだろ?あいつの意地に付き合ってこっちまで死ぬなんてごめんだ」
『サンジ!』
立ち上がったルフィが座ったままのサンジに詰め寄ると、
ぐいっと胸倉を掴むと涙で潤む瞳で睨みつけてきた。
「なんだよ?お前だって、そう思ったからウソップとメリー号と別れたんだろ?違うか?」
「違う!俺は…俺だってメリー号と一緒にまた冒険してぇよ!」
サンジの胸倉を掴みながらルフィは涙をぼろぼろ流す。
「でも…メリー号がもう走れねぇってわかった…これ以上無理させることもできねぇって知ってる!
だから、ここで別れようって決めたんだ…」
ルフィの悲痛な叫びにサンジはつかまれた胸倉をそのままに無言で耳を傾け続けた。
「ウソップは…俺達よりもメリー号を選んだんだ…。俺は…ウソップに捨てられたってことだ」
そこまで一気にまくし立てるとルフィはそれ以上言葉が続かない。
次から次へと涙が溢れ出てきて、自分ではどうしようもなくなってしまった。
「…ルフィ…そんな風に考えてたのか?お前…馬鹿だな」
サンジの言葉に流れる涙をそのままに顔を上げると、
掴まれた胸倉にすっとサンジは手を上してルフィの手に自分のそれをそっと添え、
ぎゅっと握りしめた。
「ば…ばかだ…わりぃかよ」
少し力をこめてルフィの手を胸倉から引き剥がすと、両手を自分の背中に回させて抱き合う格好にする。
「あいつにも男の意地とプライドってもんがある…お前と決闘をしてまで、
それを貫こうとしたんだぜ…あのホラ吹きのウソップが本気でお前と決闘をしたんだ」
「……」
(それに…お前に“出ていけ”と言わせないための決闘だったんだぜ…)
ウソップの優しさをサンジは知っていた。
「さっきは…悪かったよ…ウソップのこと悪く言って」
「サンジ?」
「お前があんまりしょげてるからよ…調子狂うんだよ、こっちも」
ぎゅっとルフィを抱き締めた。ルフィもそれに応えるようにサンジの背中に回した腕に力をこめる。
「もう…前みたいに戻れないんだな…三人で馬鹿騒ぎした頃に」
「…ああ、そうだな…」
その言葉にルフィの肩が小刻みに震えるのがわかった。
再びルフィが泣いていることを物語っている、サンジは抱いていた腕を更に強くした。
「わりぃ…サンジ…」
「ああ」
「明日になったら…も、泣かねぇから」
「おう」
言葉少なに応えたサンジの瞳にも、うっすらと涙が浮かんでいたことをルフィは気づくことはなかった。
二人で静かにメリー号の見えるこの場所で抱き締めあっていた。
End |
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