|
 |
|
 |
|
| ■ 『 出会いの時 』 水天宮拓仄 |
|
とある海賊団が次なる航海の拠点となる港に寄港した。その港は、そう大きくなく、町というよりも村のようだ。地図に載っている地名では「フーシャ村」。
「うわーーー!でっかい船っ」
港には、一人の少年が好奇心に輝く瞳で海賊船を見上げていた。その少年の元に若い女が駆け寄るとがばりと抱き上げ、港から逃げるように村の中に戻る。
「ルフィ!ダメよっ」
「あ、マキノ!何すんだよっもっと良く見てぇよっ海賊船ってやつ」
抱きかかえながらマキノが切り盛りしている村の酒場に入ると、カウンターの上に座らせた少年は口をとがらせた。少年の名前は、ルフィ。海賊を夢見る元気な子だった。
「海賊には悪い人がいっぱいなんだから近づいちゃだめよ、ルフィ」
言い聞かせるように目を見つめるが、ルフィは相変わらず口を尖らしたまま。浮いた足をぶらぶらさせて視線をマキノから外す。どうやら、マキノの言いつけを守る気はないようである。
「そんなの会ってみなきゃわかんねぇよ。マキノは海賊が怖いのか?オレは全然怖くないぞっ」
「悪い人だから、海賊をやってるのよ?海賊は怖い人ばっかりだから、近づいちゃだめ」
マキノが少し大きな声でルフィに言って聞かせていると、彼女の背後で店の扉が開く音がする。まだ開店する時間には早い。
「すみません、まだ…きゃっ」
店に入ってきたのは、どう見ても村の人間ではない。赤い髪に麦藁を被り、腰には使いこんであるサーベルに、ピストル。肩から綺麗とはいえないマントを羽織った精悍な男。さっき港についたばかりの海賊というのが一目でわかる。マキノはひざがガクガクと震えるのを自覚しながら口を開いた。
「す・・すみません。まだ開店時間…には早いのですが」
声が震える。その様子に麦藁の男はくすりと笑うと、マキノにゆっくりと近づいてきた。ビクリとマキノ全身が震える。
「ああ、わかってるよ。酒を譲ってくれないかな?船に積んでいた酒がなくなっちまってね」
人なつこい笑顔を見せながらマキノに話かけると懐からお金を取り出して数えだした。小さい声で「ひぃふうみぃ…」と数える姿は、とても悪党には見えない。その様子にマキノは、警戒心をとくことができた。そして、カウンターの上から少年が麦藁の男に向かって飛びつく。思わず、数えていたお金を床にばらまいてしまった男は飛びついてきた小さな物体を受け止めた。
「うわっ!なんだぁ?」
麦藁の男がびっくりして飛びついてきた物体を覗き込むと、まぶしいくらいの笑顔を自分に向けた少年が自分の腕の中に収まっていた。
「あっ!す、すみません!さ、こっちへ来なさい」
マキノが少年の行動に驚いて、すぐに駆け寄ってくるが麦藁の男は手でそれを制する。
「ボウズ、名前は?」
「人に名前を聞くときは、自分が名乗れよ!それが男ってもんだぞ!海賊のくせに、そんなことも知らねぇのかよっ」
生意気な口をきく少年が一気に好きになってしまった麦藁の男は、少年のような笑顔を見せて豪快に笑った。少年を腕に抱きながらひとしきり笑うと、少年の額に軽く唇を寄せ
「俺はシャンクスってんだ。一応、赤髪海賊団の頭をやってる」
「本当?海賊の船長やってるの?すげぇーーー!」
少年のまなざしをやんわりと受け止めるシャンクスの様子を見て、マキノはほっと息をついた。この海賊は悪党とは思えなかった。床にちらばったお金を拾い集めると、奥にある酒を探しに行く。この気の良さそうな海賊にルフィを預けても大丈夫と。
「お前の名前は?」
「モンキー・D・ルフィ!いつか海賊王になるんだぞ!すげぇだろ!」
なんの疑いもなく自信に満ちた言葉を口に出す少年をいっきに好きになってしまったことを自覚したシャンクスは、また豪快に笑い出す。
「……これが一目惚れってやつかね」
ひとしきり笑い終わった後、不思議そうな顔で自分を見つめるルフィと名乗った少年の頭を撫でると、マキノから受け取った酒を持って自分の船に戻る道中に呟くのだった。
Fin |
|
 |
|
|
|