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| ■ 『 絶対的信頼という名の元 』 水天宮拓仄 |
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ウォーターセブンより出発した暴走海列車“ロケットマン”にある唯一の車両に、ルフィ海賊団・ガレーラカンパニーの船大工達・フランキー一家の面々が乗車している。ルフィ達のために政府に捕まったロビンが乗る、海列車“パッフィング・トム”を一路追いかけている真っ最中だ。荒れ狂う海に横たわる線路上、波をものともせずに暴走していた。
「シャワーはないけど、このびしょぬれの服を着替えたいわね。ルフィもゾロも着替える?着替えは一通り持ってきたけど」
パッフィング・トムに到達するまでのしばらくの休息に、ナミがびしょびしょの服を気持ち悪そうにつまんで荷物の中に腕をつっこんだ。
「いや、俺はいい」
「そう。ルフィは着替えなさいよ。あんたのズボン、ドロドロよ。ほら!」
「サンキュー!」
荷物の中から黒い新しいズボンを取り出してルフィに放った。次に自分の服を取り出しておもむろに着ている服に手をかけると、ルフィもそれに習うようにズボンのファスナーを下げる。ナミとルフィの様子を見ていたゾロが“ぎょっ”とした表情をするが、ぐっと言葉を飲み込む。着替え終わるのを横目で眺めながら、周囲に視線を走らせると自分と同様に目を見開いた同乗者達の顔が目に飛び込んでくる。誰が誰を見ているかなんてことはわからないが、奴らの視界に仲間の裸体が入ると、なんだかイライラした気持ちになった。
着替えが完了した後にガレーラカンパニーのパウリーがゾロの飲み込んだ言葉を一部だが代弁したが、タイミングが遅かった。
そのままイライラとした気持ちを抱えながらも、ゾロは確実に近付いてきている戦闘の時を静に待ち構えている。
船大工達やフランキー一味が、先ほどルフィと共に切り抜けた大波を思い出して大騒ぎしている事がさらにゾロをイライラさせた。
「遊んでんじゃねェよ、てめぇら!」
思わず大声で怒鳴ってゾロは自分の感情を不思議に感じながら床に座り直そうとした時。
「おい、おめぇら!前に列車が見えた!」
外に出て見張りをしていたルフィが車両に顔を覗かせて大声を発した。前方に現われたのは機関部のない車両のみ。あのままでは、障害物以外のなにものでもない。車両の中にサンジ達がいるかどうかを確認するためにルフィがゴムゴムの能力を使って止める暇もなく飛び出していく。
背後から打たれながらも仲間が乗っていなかった事を手でバツを作って伝えてきた。だが、このままでは車両がロケットマンにぶつかってしまう。だが、ルフィは普通に判断した。
「ゾロー!きれ、じゃま!」
「ああ」
ゾロなら難なく斬れると普通に思うことができるルフィの信頼に、ゾロも普通に斬れると請け負った。二人の中には見えない信頼という糸がある。
「羅生門!」
あっという間に車両を切り裂き、ロケットマンは先に進む。その先に、ゾロはただならむ殺気を感じて腕に巻いたバンダナを頭に巻きなおし、気合を入れた。先にいる敵はただ者じゃないことは気配でわかる。
後ろの連中が目の前に立ちはだかる人物の事を叫んでいるが、ゾロにはそんなことは関係なかった。自分は、ただルフィの目指す物を邪魔する物をすべて切り捨てるために存在する。それがどんなに強かろうが関係ない。自分に向けられたルフィの信頼は絶対的なものだ。
「ゾロに任せろ。邪魔すんな!」
その言葉が今のゾロにはすべて。自分のすべてを信頼してくれている船長・ルフィを前に進ませるために剣を抜いた。
線路の上に立つ人物が名乗りをあげた。
「私は【海軍本部】大佐!生き恥などさらさぬ!貴様らなど真っ二つにして止めてくれる!」
そんなのは自分には関係ない。
「そうもいかねェ。俺達の目指す場所はお前のいるその先にあるからな!」
そう、ルフィの目指す場所だ。
勝負は一瞬でついた。船に戻るとルフィは特に心配した風もなく、ゾロが海軍大佐を切り捨てた場面すら見ていなかった。それが、ルフィからの絶対的な信頼である。
先ほどまで感じていたイライラが治まったゾロはソファに身を預け、ひと時の仮眠をとるべく瞳を閉じた。
周囲の雑踏すらも心地よく感じながら、ゾロは瞬く間に眠りに落ちていった。
end
※近海ゆーら様主催ゾロルアンソロジー『ドリーマー』収録 |
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