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■ 『LONELY MOMENT』 水天宮拓仄
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エニエス・ロビーから無事に水の都”ウォーターセブン”に戻り、
現在はフランキーの”夢の船”完成を待ちかねている日々。
そんな中、ルフィはガレーラカンパニーの社員や島の住民を呼び大宴会を開いた。
次々と肉や料理を頬張り、酒を飲み、大騒ぎのルフィ。
料理を作りながらサンジはその様子を観察していた。
ー無理・・・してんなー
一見、陽気で騒がしいように見えるルフィだったが、瞳の色が暗くなる瞬間があった。
”夢の船”完成を待つ一方で、麦わら海賊団・・・特にルフィは大きな不安を抱えていた。
それは、エニエス・ロビーに発つ前に、メリー号を巡る決闘を仲間であるウソップと行い勝利した。
その勝利は一人の仲間を失い、ルフィの心に大きな傷を負わせていた事をサンジは知っている。
死闘の中でこそ、その事実に向き合う事も無く切り抜けたが、今は平穏に過ごす日々。
考える時間はいくらでもある。
考えないようにしていても自然にその事が頭によぎり、徐々に傷を深くしていく。
離れた場所からただ見ている事が辛くなり、サンジは料理に集中した。
新しい船の完成予定日の5日前の事だった。
サンジは島の外れで仲間に戻る為の練習を繰り返すウソップを見つけ、仲間に報告する。
それを一番喜んだのはルフィだったが・・・それは一時的なものに過ぎない。
このままケジメをつけない男を仲間に再び入れる事はできないと結論を出したのだ。
夜、ガレーラカンパニーから提供された小屋の外で地べたに寝転び星空を眺める人影が1つ。
「いくらお前が馬鹿でも風邪ひくぜ?」
湯気のたつカップを両手に持ったサンジが空を見上げているルフィの隣に腰を下ろした。
自分の腰かけた横にカップを並べて置く。
「なぁ、サンジ」
「ん?」
「ウソップ戻ってくるかな?」
船の完成と同時にこの島から出て行く事は、先日全員で話し合って決めていた。
完成が近づくにつれ、ルフィの傷は大きくなる。
今まで共に命をかけて一緒に冒険してきた大切な仲間を信じているはずなのに、
ルフィは襲いかかる不安に夜も眠れなくなっていた。
昼間の彼を見ていると普段と何も変わらず、明るく陽気な姿。
こんなにデリケートな部分を持っていた事を知る者は自分以外に居ない。
そんな優越感に浸りながらサンジは唇の端を吊り上げた。
「戻ってくるさ、心配すんな」
寝転ぶルフィの顔を覗きこみ、安心させるように笑みを浮かべてカップを手に持つ。
「ほら、これでも飲め。体が冷えきってるじゃねーか」
両腕を掴むと、驚くほどに冷えた体温に何時間もこうしていたと容易に想像できる。
水に囲まれた都の夜風に、冷たい地面がルフィの体温を奪っていた。
掌にひんやりとした感触を感じていると、手の甲も冷たさに包まれる。
「サンジの手は温っけーな」
シシっと歯を見せながら笑うルフィが自分の腕を掴む手に手を重ねたのだ。
「冷てぇな、お前の手・・・ガキみてぇにいつもは熱いのに」
手を重ね合いながら視線を絡ませる。
「ガキじゃねーよ」
少し怒ったような表情を見せルフィはサンジの唇に触れるだけの接吻を落す。
「珍しいな。お前から」
「そーいう気分だったんだよ」
唇を離してからも2人の手は重なりあっていた。
ルフィの掌に少しだけ熱が戻る。
華奢な腕を解放し、手の甲を包んでいた冷たい手を握って指を絡ませる。
絡ませた指に力を籠めたのはルフィの方だった。
「寂しいのか?」
あえて主語をつけないまま問いかけたが、その返事は返ってこない。
無言で指に籠めた力を緩め、するりとサンジの手から離れていった。
地面に置いた冷めかけたカップを手に取り、唇をつける。
カップの中身を飲み干したルフィが腰を浮かせ、立ち上がろうとした時。
「・・ジ・は・・・居なくならないよな」
耳元で囁くように告げて歩き出した後ろ姿を静かに見送る。
小屋の中に消えた後姿に一人残されたサンジは自信たっぷりに応えた。
「当たり前だ。いつまでも、な」
独り言に自嘲し、肩をすくめてサンジも小屋に足を向けた。
end |
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