■ 『ライバル』 (ロビン&ゾロ/コミック50巻ネタ) 水天宮拓仄

サウザンド・サニー号見張り台兼トレーニングルーム。
 スリラーバークにて負った傷を、驚異的な回復力で克服したゾロが黙々とトレーニングを重ねている。
 そこへ音も無く入り込んだ一人の影。

「ロビン何の用だ?」

 何トンもある巨大なバーベルを足の上に乗せた逆立ち状態。
 さらにニ本の指だけで腕立てふせをするゾロが、振り向きもせずに入ってきた人影に向かって不機嫌な声を発した。
 彼はトレーニングしている時に話しかけられる事を嫌う。
 よほどの事がなければ集中力を途切れさせる事はないが、それでも気が緩む瞬間を作りたくない。

「用はないの。ただの見学よ、気にしないで続けて」

 壁に背中を預けて、腕立て伏せを続けるゾロを微動だにしないで見つめる。
 数分もの沈黙が続き、気配が一向に動かない事に舌打ちをして、ゾロがバーベルを床に下ろして体を起こした。

「あら、もういいの?」

「休憩だ」

 ムスリとした顔でロビンから顔を背ける。


 しばらくして突然ロビンが口を開いた。

「スリラーバークの傷はもう平気なの?何せ二人分ですものね」

「なぜ知ってる」

 誰にも言った記憶がない上に、ルフィが負っていた怪我と疲労を引き受けた時は一行から離れた場所だったはず。
 さらに仲間達は自分以外の全員が意識を失っていたのだ。
 その事実を知っている存在はいないはずだった。
 ゾロの言葉に微笑みながら、壁からすっと背中を離すと静かに歩を踏み出す。
 数歩進んでゾロの真正面に立つと、すっと腰を屈めた。
 床に腰を下ろして汗を拭っていた彼の顔をじっと見つめて小声で囁く。


「あなたみたいな男はどこにもいないわ。好きになってしまいそう」


「はっぬかせ。お前の頭の中はルフィしかいねぇだろ?」

 ロビンからの告白にも動じずに、鼻で笑い飛ばして立ち上がった。
 習ってロビンも立ち上がると踵を返して出入口に向かう。
 扉を開け、汗の臭いで満ちた部屋から半身だけ外に出たロビンは笑顔で振り返った。


「それはあなたもでしょう?」

 それだけを言い残すと、扉をパタリと閉めた。
 小さい足音を発しながら見張り台から降りていくロビンの表情を思い出してゾロは軽く舌打ちをした。

「やっかいな女だぜ」


end