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| ■ 『Happy Christmas Birthday』 (2008チョッパー誕生SS) 水天宮拓仄 |
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その日、麦わら海賊団の船医を務めるトニー・トニー・チョッパーはいつもよりずっと早く目が覚めた。
今日は自分の誕生日。
ドラム王国に住んでいた頃は、ヒルルクやドクトリーヌにささやかに祝ってもらった事があるだけ。
チョッパーが海賊なって始めての誕生日に昨夜はほとんど眠る事ができなかった。
この船の仲間達は誕生日となると盛大に宴会を開き、数日間は誕生日という一大イベントを祝ってきた。
きっと、自分の誕生日もみんなと同じように祝ってもらえるものだと想像するだけで、胸が高鳴るのだ。
「・・・まだ真っ暗だ」
男部屋から甲板に出てみると、空には星がまたたき船の中は静寂に包まれている。
明かりが灯っているのは料理人であるサンジが今日の食事やパーティー用の料理を仕込んでいる厨房だけだ。
いつもは気軽に訪ねられる厨房も、今日はなんだか行きにくい。
時間をもてあましたチョッパーは自分の部屋として言っても過言ではない、医務室へ向かう。
医務室に入って妙に心拍数が高い自分に照れてしまって、患者用のベッドに身を投げ出してゴロゴロ転がる。
「あー早く夜にならないかなぁ」
緩みっぱなしの頬を桜型の蹄でパンパンと叩いたり、帽子をとったり被ったりを繰り返して落ち着かない。
まだ朝にもなっていないのに、もう夜のひと時を思って一人で騒ぐチョッパーであった。
一人で騒いでいたチョッパーだったが、仲間達も起きてくる時間にドキドキしながら医務室から出る。
もしかしたら、もうパーティーが始まっているかもしれない。
仲間に声をかけられたり、プレゼントを貰ったらなんて言おう?なんて考えながら甲板に出た。
最初に顔を合わせたのは、新聞屋の鳥から朝刊を受け取ったばかりのナミ。
自覚のない笑顔を向けながら近づいてくるチョッパーに微笑みかけながら、ナミは口を開いた。
「おはようチョッパー。今日はずいぶん早起きね」
「そ・・・そんな事ないぞ!いつもと一緒だっ」
赤くなりながら、モジモジとするチョッパーの様子を見つめながらナミはふふっと口元を緩ませる。
なぜチョッパーが早く目を覚まして、落ち着かない様子なのかは容易に想像がつく。
彼は嬉しくてもそれを言葉ではなかなか表さないシャイな一面があるが、感情を隠す事は下手なのである。
ナミはそれに気づかないふりをして、わざと大げさな動きで踵を返した。
「そうそう、今日の食事は甲板で食べるから時間になったら来てね。厨房には入らないようにってサンジくんが言ってたわ」
「おうっ」
自分の誕生会を準備しているんだと解釈したチョッパーはますます嬉しそうに笑うと、スキップをしながらナミの横を通り過ぎる。
小さな背中を見送りながらナミはペロっと舌を出していた。
朝食を食べながら、チョッパーは衝撃の一言を耳にした。
「今日はクリスマスパーティーを開くから楽しみにしとけよ皆!」
厨房でその料理を準備していると話すサンジが仲間達に向けて、こう言い放ったのだ。
”チョッパーの誕生会”じゃなくて”クリスマスパーティー”とコックが言ったのだから無理もない。
ガックリと肩を落として、食べていた途中の料理の皿をテーブルに置くと、トボトボと医務室に向かっていく。
その落胆ぶりは、仲間達の同情を買うほどだった。
だが、今夜のパーティーはまぎれもなく彼の誕生会なのだが、それをクリスマスパーティーと言っておいて、
その場で本当の事を明かしてびっくりさせてやろうという作戦なのだ。
「なんだか可哀想ね」
心底気の毒そうな表情をしたロビンが立ち去っていくチョッパーの方を見つめてつぶやいた。
それに頷いたのは、仲良しのルフィとウソップ。
「だよな。別に、ドッキリ演出いらないんじゃねぇのか?あれじゃ一日医務室に篭るぜチョッパーのやつ」
「おう、オレも隠す事ないと思うけどな!チョッパーが可哀想じゃん」
そう言いながらもナミが提案した事については、ついつい従ってしまう男性陣。
ゾロは馬鹿馬鹿しいと言いながらも、落ち込むチョッパーに本当の事を言ってしまうような事はしない。
フランキーやブルックは若い仲間達の楽しい企みに全面協力の姿勢を示している。
「あの調子じゃ、一日中医務室に篭るわね。パーティーの準備にはもってこいよ」
ドッキリバースディパーティー主宰者のナミが笑いながら皿に残った新鮮な野菜を口に運んでフォークをテーブルに置いた。
その夜。
甲板はパーティーのために豪華に飾りつけされ、美味しい料理の数々が仲間達の手によって運び出される。
相変わらずチョッパーは医務室に篭っているのか、昼食に呼んでも出てこなかった。
そんなに落ち込むとは思っていなかったナミはさすがに悪い事をしたかな・・・と思いはじめていたが、
もうすぐ準備していたパーティーの準備が終わり、主役のチョッパーを呼んでくるだけとなって気持ちを切り替える。
心を鬼にしたのも、この瞬間のため。
チョッパーを喜ばせてやりたかった一心なのだから。
ナミが医務室の扉を開けると患者用のベッドに寝転びながら、医学書をなんとなく眺めているチョッパーがいた。
「チョッパー。パーティーを始めるから甲板に行きましょう」
「オレ、いい・・・。この本読んでるから」
「そんな事言わないの!さ、本を置いて!」
強引に本を取り上げて机の上に置くと、両手でチョッパーの小さな体を持ち上げると本人の意志と関係なく医務室から連れ出す。
バタバタと暴れるチョッパーをなだめながら甲板に駆けていく。
「離せよナミ!オレは食欲ないから行かない!」
「ダメよ。チョッパーがいなくちゃパーティーを開けないんだから」
「別にオレがいなくてもいいだろ!クリスマスパーティーなんかっ」
涙ぐみながら暴れる手足から力を抜いてナミに持たれるままに任せた。
両脇を持っていたナミだったが、甲板に出てその場にチョッパーを下ろして立たせると自分も仲間達の輪に入る。
振り返って仲間達に目配せをして、一回だけ頷いてみせる。
「せーのっ」
『誕生日おめでとうチョッパー!!』
「!!」
自分に向かって仲間達が笑顔を向け、手に持ったウソップ特製のクラッカーを次々に鳴らす姿が視界いっぱいに広がる。
もやもやと視界がボヤけるのは大粒の涙が溜まっては頬を伝っていくせいだ。
「みんな・・・み・・んなっ」
しゃくりあげながら必死に言葉を出そうとするチョッパーの言葉を一同で待つ。
泣きやまないチョッパーだったが、胸を張ると仲間達に向かって満面の笑みを浮かべて。
「ありがどうっみんな!!大好きだーーーーっ」
「オレ達もチョッパーの事大好きだぞ!なっ?」
ルフィが肉を手に持ちながら叫び、仲間達に同意を求める。
全員が揃って縦に頷くとチョッパーは大好きな仲間達の元へ駆け出していった。
Happy Birthday!! Dr.チョッパー!
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