■ 『たった一つだけの【愛】を』  (サンジ×ルフィ) 文/水天宮拓仄

 一人の青年が小さな家のテラスに置かれた長くゆったりとした椅子に腰を下ろしていた。
 彼の隣には誰もいない。
 目の前に広がる大海原に赤く染まった太陽が今にも沈みそうになっている。
 そっと瞳を閉じて、穏やかな潮風を感じ、再び瞳を開ける。
 彼の隣には幼さを残す青年が麦わら帽子を両腕で胸に抱き、腰掛けていた。
 辺りは徐々に暗くなりはじめている。

「ルフィ・・・お前とこうして過ごすようになって、何年だろうな」

 穏やかに言葉を唇にのぼらせると、ルフィと呼ばれた青年は彼に微笑んだ。
 麦わら帽子を大事そうに横へ置き、そっと手を伸ばしてくる。
 金色の髪に軽く触れ、しばらく感触を楽しみながら頬に唇を寄せた。

「いつまでも一緒に過ごしたい・・・と願った俺は愚かなのか?」

 顔を両手で覆い、前髪をぐしゃりと掴む。
 その手にそっとルフィが触れるが、その感触は感じることはできない。
 言葉を交わし、笑い合うこともできぬまま、いくつもの季節が通り過ぎていく。

「声も聞こえない、触れ合う事すらできないお前」
「・・・・・・」

 顔を覆っていた両手を膝に乗せ、隣に座るルフィを見つめて笑顔を作った。
 その笑顔にルフィも極上の笑顔を返してくれる。

「俺はお前が誰よりも大切だ・・・これからも、ずっと一緒にいてくれるか?」

 悲痛な叫び、歪められた顔を見つめるのは無言のまま笑顔を向けるルフィだった。
 両腕を広げて、抱きしめる事もできない彼を胸に抱き、耳元に唇を寄せる。

「俺のたった一つの愛・・・どんなになってもお前に捧げるよ、ルフィ」

「永遠に俺達は一緒だ」

 二人は瞼を閉じて、遠い昔に感じた互いの体温を思い出しながら夜は更けていく。


end