■船長誕大祭'09 〜12のお題〜■6.一番好きな… ( サンジ×ルフィ ) 水天宮拓仄

 この船の船長がこの世に生まれた日を祝う宴も佳境を迎えていた。
 もうこの段階になるとお祝いというよりも、各自が好きな事をして過ごしているだけだ。
 ゾロとナミは相変わらず呑みくらべをやっているし、
ロビンは一人で少し離れた場所でグラスを傾けて仲間達の様子を楽しそうに観察している。
 ブルックは会話の邪魔にならない曲をヴァイオリンで奏でてているし、
チョッパーはすでに部屋で寝息を立て、ウソップとフランキーは開発談義に華をさかせていた。
 そして本日の主役でもあるルフィと言えば、皿に残った料理を手当たり次第に口へ運び、
呑み慣れない酒をチビチビと飲んでいる。
 普段から酒にあまり耐性が無いルフィはほんの少量呑んだだけでも酔うし、
酔いが回るとすぐに眠ってしまう事を本人も自覚していた。
 なので料理をたくさん食べたい場合は酒をあまり呑まない様に自分なりに工夫しているようである。
 だが、頬が紅潮して目がトロンとなっている様子を見る限りでは、そろそろ限界が近いのかもしれない。
 ちょうど皿の料理もほとんど無くなり、あとはソースが残っていたり
皆の使っていた小皿に食べ残しが少々ある位で、ルフィが食べる物が無くなっていた。
 無意識に手を皿のある方へ伸ばしたが、すでに手に取る物が無くなった事に
気づいたルフィは甲板に座ったままキョロキョロと周囲を見回す。
 少し離れた場所に捜し求めていた人物を見つけて、ふらりと立ち上がって近づいていく。
「サンジィ」
「お、ルフィ。どうした?」
「なんか作ってくれ」
 良い感じに酔っているせいで、足元はふわふわするし目も潤んで、
上目遣いにサンジを見つめて支えのつもりでスーツの前をぎゅっと掴んだ。
「・・・ぐっ・・・料理って、全部食べたのか?あんなに用意したのに」
「だって、サンジの料理うめーから、もっと食いてぇよ」
 甘えるような声で強請られてサンジの心臓がバクバクと高鳴る。
「もっと・・・って。俺も作ってやりてぇけど、もう材料無いんだ。
明日の分はあるけど、それ使うと明日は飯抜きになっちまうんだぞ?」
「う〜」
 小さい子供がダダをこねるように体をゆすって、
その場にストンと腰を下ろして、さらに低い位置からサンジを見上げてくる。
 その瞳にうぐっと喉を鳴らして、サンジは視線を逸らしながらルフィの前にしゃがんで目線を合わせた。
「しゃーねぇな。明日はウソップに釣りさせて材料調達する事にして、今何か作ってやるよ。ちょっとだけだぞ?」
「ほんとか!?」
 キラキラを目を輝かせたルフィに笑いかけると、立ち上がりキッチンへ向かう。
 後ろからパタパタとルフィがついてくるのを認めて、顔がにやけてしまう。


 キッチンに入って、明日用として保管していた材料の一部を取り出して簡単な料理をルフィのためだけに作る。
 腹がふくれるようにと米をたっぷり使い、野菜や肉もバランスよく使って味付けにも妥協は無い。
 サンジが作る料理はどんなに簡単なものでも一流の味を出せるし、
ルフィの好みを知り尽くしているので、常に満足させてくれる。
 キッチンに併設されているカウンターに腰を下ろして、器用に動く指先を見つめてルフィはうっとりと瞳を細めた。
「ほらよ。それ、食べたら寝るんだぞ?お前にしちゃ、今日はよく呑んでたからな」
「おうっ!いっただきまーす!!」
 満面の笑顔を浮かべ、皿とスプーンを持って大きな口の中に料理をかきこみ、あっという間に平らげて、
食後にと出されたぬるめのホットミルクを飲み干した。
「ぷはぁ!!うまかったぁ」
「おう、美味かったか?そりゃ、よかった。じゃ、皿片付けるからな」
 カウンターの上に置かれた皿をサンジが取ろうと手を伸ばすと、突然その手首をルフィが掴まえる。
「なっ?」
「この指が毎日美味いもん作ってんだよなー」
 右手で手首を掴み、左手でサンジの指を一本一本触り、顔を近づけてしげしげと見つめられる。
 酔っているせいなのかルフィが吐く息がとても熱い。
「・・・・・ル・・・フィ!!」
 何を思ったのか観察していたサンジの指をルフィが唇に持っていき、
そのままパクリと咥えて、ねっとりと熱い舌を絡めてきた。
「ルっルフィっよ・・・よせっ!」
 慌てた様子で自分の手をルフィの唇から引き離し、胸に抱えて酔いとは違う真っ赤になった顔でルフィを見つめる。
 頬を赤くし、潤んだ目で自分を見つめるルフィが何を思って指を唇に運んだのか、
自分が都合の良い方向に考えてしまいそうになる。
 だが、そうできないのはルフィが酔っているとわかっているからだ。
 破裂しそうなほど心臓がうるさい。
「やっぱ、サンジの指って美味いんだな!美味い指で作るから料理もきっと美味いんだっ」
 得意そうに語ると椅子から立ち上がって、体が硬直して動けないサンジにたたっと駆け寄る。
「今日はサンキューな!すっげー美味かった!おやすみっ」
 ちょっとだけ踵を浮かせた背伸びをして、サンジの頬にちゅっと音を立ててキスをした。
 すぐに唇を離していたずらっ子みたいに笑うと、扉にかけていく。
 後ろ姿を固まったまま見送るサンジに、キッチンを出る前に振り返ると歯を見せて笑った。
「ほっぺも美味いな!」
 そう言い残すとバタバタと男部屋へと走っていく音を聞き、遠くで扉の閉まる音を聞いてようやくサンジは我に返る。
 遠くでブルックのヴァイオリンを聴きながら、キッチンに一人呆然と立ち尽くし、
ルフィに”美味しい”と言われた指をじっと見つめ、唇を寄せた。


end


※この小説は、船長感謝祭さん作成の2009年版船長誕12のお題を使用させていただきました。
【配布元】
『船長感謝祭』http://captainluffy.web.fc2.com/
(配布ページ)http://captainluffy.web.fc2.com/odai-09.html