■海賊王の約束 (エース×ルフィ) 文/水天宮拓仄 絵/まつのさん

 ここはとある無人島。
 今日は世界を騒がす海賊・麦わらの一味が勝手に上陸して勝手に大宴会の準備を済ませていた。
 年に一度の麦わら一味船長のモンキー・D・ルフィの誕生日を祝う宴がまさに今、始まろうとしている。
 海に面した綺麗な砂浜の上に大きな布を敷き、布の上には豪勢な料理が次々に運び込まれて、
そのすぐ横では臨時のキッチンスペースまで作られていた。
 そうでもしないと尋常じゃない胃袋を持つルフィの食べっぷりに追いつかないからである。
 船の中にある食料もすべて料理に化ける。
 この日の為に買い溜めていた酒も氷につけて準備万端だ。

「皆、自分のグラスは持った?」

 ナミが仲間達を見渡すと、全員がグラスを持って頷いた。
 乾杯の音頭はルフィと一番付き合いが長いゾロを抜擢し、目配せする。
 普段、寡黙で大勢の前で演説するような事があまり無いゾロは少し照れながらグラスを頭上に掲げた。

「・・・ルフィ。誕生日おめでとう。何言っていいかわかんねぇから。このまま乾杯だ!」
「おー!!おめでとー!」
「ルフィにカンパーイ!」
「ルフィおめでとう!」
「おめでとう」
「おう、おめでとーさん」
「おめでとうございます」

 それぞれが思い思いの言葉でルフィの生誕した日を祝い、グラスをいっせいに煽った。
 それを皮切りに飲めや歌えの大宴会に突入するのは毎回の恒例だ。
 宴の最中に何かプレゼントを用意してきた仲間は、
自分のタイミングで渡しに行くし、芸を披露する者も勝手にやるといった感じになる。
 とにかく自由に、楽しく、誕生日を祝うのが麦わら一味の宴会なのだ。

「ルフィ、誕生日おめでとう」
「おう、ロビンにナミ!サンキューっ」

 にししっと笑みを浮かべながら、目の前にある料理をバクバクと口に放り込み、
会話をする合間もルフィの手と口が止まる事はない。
 ルフィの脇に大きな箱を持ってロビンとナミは無言でサインを交わすと、食べ続ける手を二人で止める。

「わっ何すんだよ!まだ食ってんだぞっ」
「少しだけでいいから!私とロビンからのプレゼント受け取りなさい」
「おー!ありがとうな!」

 嬉しそうに二人の方へ向き直って箱を受け取ると、
ワクワクした気持ちで箱を開けて大きな瞳をより一層大きく開いた。
 箱の中に入っていたのは真っ赤なキャプテンコートである。

「ナミと私で作ったのよ。お気に召してくれると良いのだけど」
「すっげー!カッコイー!!お前達すげぇっな〜」

 感心しながら箱からコートを取り出し、立ち上がると「ほぉ〜すっげぇ」と何度も下から上まで眺めてみる。
 ルフィの身長に合わせた長さで膝下まであるロングサイズに真っ赤で丈夫な生地を使い、
細かい刺繍も裾や袖にも施され、両肩には立派な黄色の飾りも着いていた。
 喜ぶルフィの周囲に仲間達も集まってくる。

「未来の海賊王に私達からのプレゼントよ」
「着てみろよルフィ!」
「おおっ」

 にっこりとナミとロビンが告げると、調理の手を休めたサンジがキャプテンコートに腕を通してみろと促す。
 すかさずナミがコートを手に取り、ルフィの背後で広げた。
 広げられたコートに腕を通してズッシリとした重さを感じ、しばらく感触を楽しんで周囲の仲間達を見回す。

「似合うだろ?」
「とってもよく似合うわ」
「私達が作ったんだもの、似合って当然よね」
「馬子にも衣装ってやつだな。俺の方が似合うだろ!どれキャプテン・ウソップ様にも貸してみろって!」
「だめだ!これはオレが海賊王になった時に着るんだぞっ」

 コートを奪おうとするウソップの手から逃げて砂浜をバタバタと走り回ると、
いつしかチョッパーも加わって賑やかな宴が一層騒々しくなってきた。
 そんな時、海の方から小さな船がゆっくりと近づいてくるのが見える。

「おいっ誰か近づいてくるぞ!」
「船だっ」

 走り回っていたウソップが海を指さし、手を額に当てて目を細める。
 足を止めてルフィも海の方を見つめると、顔を輝かせた。
 小船に立ち、マストを掴んでこちらを見ているシルエットには見覚えがあった。

「エース!!」

 今日見せた笑顔で一番の輝きを放ってルフィがコートのまま海に駆け出した。
 まだエースが乗っている小船は沖の方で、カナヅチのルフィが行くには無理がある。
 大慌てでサンジとゾロがルフィの後を追い、浅瀬に足をつっこんだ時点で止める事に成功した。

「この馬鹿!お前、海入ったらダメだろうがっ」
「まったく」

 前面でゾロが体で呈して、背後からはサンジが羽交い絞めでルフィを止める姿を見て仲間達も胸を撫で下ろした。
 どんどん近づいてくる小船の上、橙色の帽子をかぶり、半裸の男が笑顔で手を振る姿が鮮明になってくる。


 浅瀬に小船を泊めて軽い跳躍でルフィ達のいる砂浜に上陸してきたのは、間違いなくエースであった。

「今日は弟の誕生日にご招待くださってありがとう」

 にこりと笑顔を仲間達に向け、片目をパチリと瞑り、ペコリと頭を下げた。
 改めてルフィの方に体を向けると、真っ赤なコートを翻して愛しい弟が駆け寄ってくる姿が目に映る。
 両手を大きく広げて飛び込んできた弟を受け止め、ぎゅっと腰に腕を回して抱きとめた。



「エース!」
「ルフィ。誕生日おめでとう」
「うんっ」

 エースの首に両腕を回して力いっぱい抱きつくルフィは年齢よりもずっと幼く見える。
 その顔は敵に見せる表情、仲間達に見せる表情のどれとも違う、エースにだけ見せる表情だった。

「ルフィ、すごく可愛いわね」
「なんだか、ね」
「まだアイツもガキって事だろ」
「ルフィ、いいな〜」
「なんとか、間に合ったな」
「ルフィさん、喜んでくださってよかったですね」
「あれが”ブラコン”ってもんか」

 抱き合う兄弟を見つめながら仲間達は、その場に流れる温かい空気を感じながら静かに二人から離れていく。
 普段はそれぞれに違う道を歩む兄弟が久しぶりに再会したのだ。
 二人で積もる話もあるだろうと気を利かせる。


「エースが来るなんて全然知らなかったぞ!」

 いつまでも浅瀬に足をつけたままは力が入らないと、エースはルフィを抱えながら砂浜まで移動して腰を下ろした。
 向かい合ったままお互いの体に両腕を回して見つめ合う。

「うん。いい表情になったな、お前」
「もうすぐオレは海賊王になるんだから、当たり前だ!」
「そのコートは仲間からのプレゼントか?似合うな」
「だろ?」

 ニカっと歯を見せて笑うルフィにエースも満足気に微笑み、首から背中へ下げていた麦藁帽子を手に取った。

「これも被れば、もっと良いな」
「あっ」
「赤髪には再会できたのか?」
「ううん、まだ」
「そっか」

 複雑な表情を浮かべ、麦藁帽子から手を離して元の場所に戻すと、エースは立ち上がって尻についた砂を軽く払う。
 急に立ち上がった兄を見上げてキョトンとするルフィ。

「赤・・・いや、シャンクスに早く会えるといいな」
「エース?」

 視線を逸らし、永遠に広がる海を見つめるエースの表情が自分からよく見えなくて不安になった。

「今日はこれで帰るよ。お前の仲間達にも礼言っておいてくれよな」
「もう帰るのか?もっと一緒に・・・」
「そんな顔すんな。もうすぐ海賊王になるんだろ?」

 寂しそうな表情を浮かべるルフィの頭をくしゃりと撫でて、踵を返すと海の方向へ足を踏み出す。
 思わずエースの腕を掴んで引き止めると、ルフィは一瞬唇をパクパクと動かし、一呼吸おいて笑顔を作った。

「サンジの料理食べてけよ!すっげー美味いんだぞ!エースもあいつら気に入ると思うんだ!だから・・・」
「だから?」
「だから、オレと・・・に」

 最後の言葉は言えなかった。
 言ってもエースが頷かないとわかっていたから。
 エースの腕を掴んで顔は砂浜に落とされたまま二人の動きが止まる。

「そうだな。お前が海賊王になったらまた来るよ。その時は、約束できる」
「エース!」
「ん?ほら、情けない顔すんな。そんな顔してちゃ仲間達に笑われるぞ」

 今度はエースを見上げ、零れ落ちそうになる涙を瞳に溜めて唇をぎゅっと噛みしめる。
 ルフィにそっと歩み寄って瞳に溜まった雫を指で掬いとると、額にちゅっと唇をつけてすぐに離れた。
 砂浜を蹴って浅瀬に泊めたままの小船に乗ると、手を振る。

「じゃあなルフィ!また会おう・・・絶対だ!」
「エース!オレ・・・絶対に海賊王になるからっ!そしたら約束だぞ!」

 立ち上がると海に向かって両手を勢い良く振り回し、流れ落ちる涙が砂浜に落ちては消えた。



Happy birthday!!
Pirate king in the future.






船長感謝祭の船長誕生日チャット会で知り合ったまつのさんと兄弟愛コラボ実現!
きっかけはまつのさんが私の名前をちょこっと間違えてくれたおかげです♪
その些細な間違いがなければ、このコラボは生まれませんでした!ありがとうv
自分では、コラボやリクが無いとめったにに書かないD兄弟のお話となりました☆
兄弟の関係やルフィと麦わら一味との相関はまつのさんからの提案で、
シャンクスは私の勝手な妄想でございます(笑)
エースはきっと弟がシャンクスに懐いてたの面白くなかったんじゃないかと妄想。
コラボしてくれたまつのさん、ありがとうございました!また機会があれば是非★
このコラボ作品は船長感謝祭さんにも投稿させていただきました。