心が通じる(2008年9月) 水天宮拓仄


少年は深い森の中に迷い込んでいた。

辺りは薄暗く、自分が通ってきた道はすでにわからなくなった。

方向感覚もわからない、周囲の景色も見たことがない。

少年は一人森の中で昆虫や鳥を夢中で追いかけた。

ふと気づくと森の奥深く。

「誰か・・・助けて」

涙を浮かべて小さく消えそうなほどに小さく呟くが応える者は居ない。

これからどうすれば良いのかわからない。

その場に座り込んで両手で両目を覆って大声で泣いた。

しばらく泣き続けると、ふと目の前がぽうっと光る。

両目から手を離し、泣きはらした目を開くと目の前には少女が立っていた。

今は冬で吐く息も真っ白になるのに、目の前に立つ少女は素足に

薄布一枚で作られた短いワンピースだけを身につけて、きょとんと大きな瞳を少年に向けていた。

「君は誰?」

ーアナタハニンゲンネ?ナゼ、コンナトコロニイルノ?

少女が何か言葉を発したがそれは少年には理解できなかった。

頭を左に少し傾けながら少年は大きな瞳をさらに開いた。

ーソウカコトバガワカラナイノネ。

少女がニッコリと笑いかけると、少年もニッコリと笑顔を浮かべる。

さきほどまでの恐怖が無くなり、少女の優しさを感じた。

ーワタシガムラマデツレテイッテアゲル。

「ありがとう」

無垢な存在は言葉なくとも心が通じあえるという。