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わがままな美人(2009年1月) 水天宮拓仄
「誰がこんな無茶を言ったんだ!」
一人の屈強な男が怒りを露に怒声を上げた。
目の前にいた小柄で華奢な男は困り顔で肩をすくめる。
「ですがお嬢様は是非あなたにと。お金ならあなたが望むだけ」
恐怖に耐えながら小柄な男は必死に訴えた。
「仕事は半年以上埋まってるんだ!それにこの仕事は俺がするものではない」
「ですが」
さらに言い募ろうとした男をにらみつけると、やっと口を閉じた。
「屋敷に帰ってお嬢様に伝えるんだな。この仕事はできないとな」
幾分優しい表情になったが怒りが収まらない。
「・・・では、また後程」
それだけ告げると小柄な男はトボトボと部屋を出て行った。
屈強な男は金持ちがの威厳を示すために行う決闘の代理を金で請け負う仕事をしている。
名前はアルマと言い、屈強な体に見合う力を持っており金持ちからは寵愛されている。
性格もまじめで引き受けたからには完璧に仕事をこなす男だ。
外見も女受けするために婦人からの仕事が多く、先程のようにわがままを言う客もいた。
「アルマ」
再び扉が開き綺麗な音が耳に届きアルマは顔を上げた。
扉の前にはいかにも金持ちそうな婦人と、追い返したばかりの小柄な男。
婦人は頭から暗い色のベールを被り顔を見ることはできない。
「直接来たのかい?だが仕事は断るよお嬢さん。これは金の問題じゃないんだ」
「どうしても駄目ですか?」
静々と近付いてくると頭一つ分以上の差がある彼女に視線を下げた。
ベールごしに見つめられている事を感じて顔をそらした。
「アルマ、私はあなたが必要なんです。どうしたらあなたは私の物になってくれるの」
ゆっくりとベールをめくり直に熱い視線を向ける彼女を見つめて息を飲んだ。
この世のものとは思えない美しい者が目の前にいた。
もうアルマには逆らう事ができなくなる。
「お嬢さん、名前は?」
視線を外す事もできず、瞬きも忘れてじっと見つめる。
「ヴィーナと申します」
「ヴィーナ。それは仕事か?それとも君のわがままか?」
肩に手を置き引き寄せて胸に抱く。
細い腕が背中に回されて胸に小さな体がすっぽり収まった。
「私のわがままですわ。聞いてくださるの?」
「こんな美人のわがままを断れる男はいませんよ」
にこりと笑いかけると細い体をガラス細工を触るように抱き締めた。 |
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