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企画用短編1(テーマ:夢&精霊)
「君は誰?」
僕は常に感じる気配へ向けて声を発した。
この世界には、何も存在しないのに。
確かに、ソレは存在している。
でも、見えない。
僕が眠りについた時から感じる穏やかな存在だった。
いつもは、感じているだけで安らぎに身を任せていたけど、
今日はどうしても、ソレの存在を確めたくて声に出してみることにした。
「ねえ、君は誰なの?どうして、ココにいるの?」
真白な空間が広がる中、僕はできるだけ優しい口調で話かけた。
僕以外は存在できないはずの、この場所。
問いかけた後、ほんの少しだけ間をあけて空間に僅かな振動が走った感じがした。
ふわりとした感覚が僕を包むのがわかる。
<わたしは、あなたよ。だから、ココにいるの>
耳からではなく、頭の中に響く声。それが”声”なのかもわからないが
確かにココに存在する僕以外の気配から発せられた言葉だ。
「君が僕?わからないよ」
<それは・・・そうでしょうね>
少し笑いを含んだような言葉が頭に響いてきた。
「ねえ、姿を現してよ。いるんだろう?一人で退屈なんだ」
何もない真白な空間。天井も床も壁も存在しない空間に僕はいる。
ココがどこなのかも知らないし、いつからココにいるのかも知らない。
でも、ココには僕以外の存在が無い事だけは始めから知っていた。
<わたしは、もうあなたの傍にいるわ。あなたがココに来た時からずっと>
「どこ?見えないよ?」
方向もわからないのに、僕は周囲を見渡す。
やはり見えるのは真白な空間。
「なんで見えないの?」
<だって、わたしはあなただもの。あなたはココで自分の姿を自分で見れる?>
言葉の意味はわかるけど、納得はできない。
僕は君で。君は僕?僕は男なのに頭に響く言葉は女の子の声だ。
「ねえ!君の名前は?」
<わたしは、ココに存在するだけ・・・名前はないし、必要ない>
寂しそうな空気を感じ取った。名前がない事が悲しいのだろうか?
「じゃあ僕が君の名前をつけてあげる!”優子”でいい?僕の名前と同じ文字だよ」
<ありがとう・・・あっ!>
優子が声を上げた。
「どうしたの?優子!」
だんだんと周囲が白から灰色・・・そして、黒に近づいてきた。
なにこれ?今まで感じた事もない感覚が僕に襲いかかってくる。
頭にズキリとした痛みが走った瞬間、僕の意識は優子の声を聞いた。
<さよなら・・・優人>
「優子待って!」
激しい痛みが僕を襲う。
目を開けて手を伸ばそうとすると、誰かが僕の手を握っていた。
「優人!大丈夫?」
目の前にいるのは、優子じゃなかった。
「かあ・・・さん?」
上に広がるのは、見覚えのない天井とボロボロに泣いている母の顔。
「ああっ優人よかった!目が覚めたのね・・・」
「・・・ここは?僕・・・どうして、ここに?」
思ったように言葉が出ないのは、自分の鼻と口に通された無数のチューブのせいだ。
「あなた、交通事故に遭って・・・もう二週間も眠っていたのよ!
かあさん先生呼んでくるから・・・ああ、それと父さんにも電話しないと」
涙を手に持ったタオルで拭うと母はバタバタと僕の傍から立ち去った。
「交通事故・・・?ここは病院?」
自由に動かない頭をめぐらし、周囲を見渡す。
さっきまで感じていた、優子の気配がまったく感じられない事に気づいた。
優子は、最後に”さよなら”と僕の名前を呼んだ。
とても優しく、とても悲しい声、でも・・・嬉しそうな気持ちで。
君は僕で、僕は君・・・
「あれは夢?」
僕の中に優子がいた。
でも、もう二度と優子の声を聞くことはないのだろう。
僕は目覚めてしまった。
でも、あのまま眠りつづけていたら、僕の命はなくなっていたらしい。
だから優子は、僕との別れを喜んでくれたのだ。
夢の中に存在する、もう一人の自分。
優子は僕の夢の中に住む精霊だったのかもしれない。
目覚めてよかった。
だって、優子を死なせたくないから。
fin |
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