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【 愚者 】
錬金術師の町・ヴィシュベル。
この町は、多くの錬金術師が集まる町として有名である。
もちろん、錬金術が使えない人々も住むが、彼らは錬金術師達を支える役目を担う住民がほとんどだ。
錬金術師を育てる”ヴィシュベル錬金術養成院”等も存在する。
ヴィシュベルは、国を挙げての優秀な錬金術師を養成・支援を目的とした、一大プロジェクトと言っても過言ではない。
国からの援助もあり、錬金術師として成功した人間は、数代先の暮らしまでも保証できるほどの地位と名誉が与えられていた。
だが、錬金術師を名乗っている者でも、その実力には個人によって大きな開きがあった。
この物語は、お世辞にも”優秀な錬金術師”とは呼べない男の日常である。
ヴィシュベル錬金術養成院を卒業してから1年。
ようやくルトガーも自分専用の錬金術研究部屋を得る事ができ、夢に向かって意気揚々と古めかしい扉の前に立った。
錬金術師は、主に2通りに分ける事ができる。
1つは、錬金術を用いて商いを始めて生計を立てる者。
もう1つは、自分の錬金術を研究し、後世に名前を残す努力をする者。
より高い地位や名誉を求める者は、後者に属する事になり、養成院での成績や家柄なども良い人間がほとんどを占める。
ルドガーは家柄もごく平均的な一般家庭に育ち、錬金術師としての才能もさほど高くは無い。
だが、彼の夢は大きかった。
「僕は錬金術を極め、国に必要とされる人間になるのだ」
これがルドガーが養成院へ入る前からの口癖だった。
夢に似合う才能も実力もないルドガーは養成院では、良い笑い者となっていた。
さて、つい先日やっと手に入れた研究室に足を踏み入れたルドガーは目を輝かせていた。
「よし、まずは掃除からだな!良い研究には、良い環境から!」
長い袖をくるくると捲くり上げ、埃が積もった部屋の窓を開ける。
この部屋は、数年前まで年老いた錬金術師が使っていたもので、引退した老錬金術師から安価でルドガーが買い取ったのだ。
部屋には、老錬金術師が使っていた年季の入った道具も転がっており、
資金が少ないルドガーは、ありがたくそれらを使わせてもらうことにする。
棚や机にかぶった埃を払い、床を掃いてから水を含ませた布で拭き磨く。
みるみる綺麗になっていく部屋の様子にルドガーは楽しそうに掃除の手を進めていくと、
開けっ放しにしておいた扉を叩く人物が現れた。
「よお、ルドガー。研究室をやっと手に入れたって聞いて、祝いに来てあげげたよ。おめでとう」
現れたのは、養成院で同期だったハーラル。
同期では、家柄もトップクラスで錬金術の実力は常にトップを誇っていた男だ。
養成院では、劣等生で貧しい家柄のルドガーを見下していた。
とある事件が起こるまでは、ルドガーはハーラルにとっては良い引き立て役に過ぎなかった。
だが、その事件が起きてからハーラルはルドガーを疎ましく思うようになる。
「やあ、ハーラル!君にお祝いを言ってもらえるなんて、光栄だなぁ。
君は卒業と同時に立派な研究室を国から与えられるほど優秀だったんだろう?すごいじゃないか!僕は同期として誇らしいよ」
埃と汗にまみれた状態で近づいてくるルドガーを見て、ハーラルはククっと笑った。
「ん?」
「いや、失礼。君にお似合いの研究室だと思ってね。これから、思う存分研究をするといい。
この使い込まれた道具達も君にはお似合いだ。
そうそう、困った事があったら私の研究室を訪ねて来るといい。足りない物は分けてあげるから」
古びた試験管やビーカーなどを指先でつまみあげ、見つめるハーラルの笑いは止まらない。
明らかに自分自身の貧しさと、錬金術師としての腕に侮辱を受けたというのにルドガーは平然としていた。
「ありがとう。困った時はお言葉に甘えさせていただくよ。それより、これから時間あるかい?
研究室を手に入れたお祝いに、食事でも一緒にどうかな?」
笑顔でそう告げるルドガーにハーラルはギリっと歯を食いしばった。
「いや・・・遠慮しておこう。私はこれから研究室の仲間達とパーティの予定があってね。リリーと一緒に君もどうだい?」
「え?」
「おっと、リリーは物を食べられないんだったね。それはすまなかった。では、私はこれで失礼する。
リリー?いつでも私の研究室へおいで!君を完全な人にしてあげられるのは私だけだよ」
扉から出ていったハーラルを見送って、ルドガーは困ったような表情を浮かべた。
「リリー、聞いていたかい?」
「・・・」
ルドガーが暗い部屋の奥へ向かって声をかける。
ゆっくりとした動きで無表情のリリーと呼ばれた少女が現れた。
人の形をしているが人とは異なる存在。
養成院で錬金術を学んでいた頃、ルドガーが偶然造ってしまったホムンクルス。
錬金術師にとって、ホムンクルスを造る事は誉れである。
誰もが研究する対象だが、偶然に創りあげられるばかりで、確かな研究の下で造り出されたホムンクルスは存在しない。
ルドガーはホムンクルスを造るつもりなど毛頭無かったが、
養成院でハーラルが行った動物への仕打ちを見るに見かねて、
彼がいない時に、実験に使われていた動物を救う為に錬金術を施した結果、リリーが造り出された。
その当時も現在もハーラルの研究は、ホムンクルスの錬成方法を確立する事にある。
同期トップの才能と実力を持つ自分が、偶然でも作り出せなかったホムンクルスを
同期では落ちこぼれに近いルドガーが造り出した事は、彼のプライドを酷く傷つけた。
「リリー。君さえよければ、ハーラルの研究室へ行くかい?
そうすれば、君はきっと言葉を話す事も、心を手に入れる事もできるよ」
その言葉にリリーは小さく左右に頭を振る。
「僕の傍に居ても、君はいつまでも人形と一緒なんだよ?それでもいいと言うのかい?」
無表情のままコクリと頷く。
「そう。なら・・・これからも僕の研究を手伝っておくれ」
再び小さく頷いたリリーは、ルドガーの手を取った。
冷たく小さな掌を握り返し、そのまま扉へ向かう。
「今日は遅いから掃除はここまでにしようか。明日からがんばるよ。君のためにもね」
扉を閉め、卒業後も間借りをしている養成院の寮へ向かう。
町の通りを錬金術師と少女が歩いて行く。
誰も錬金術師が連れている少女が、人によって造られた物とは思わない。
ホムンクルスは、決まった錬成方法が存在しない偶然の産物である。
だが、完全なホムンクルスもこの世には存在しない。
ホムンクルスは感情と言葉を持たない。
それが、人々に”動く人形”と言われる所以だ。
いつか、完全な人間を作り出す事・・・
人は神に近づきたいという願望を胸に秘め、
日々研究を続けている愚かな生き物なのである。
【 偶然 】
ヴィシュベル錬金術師養成院。
創立60年以上を誇る由緒ある錬金術師養成機関である。
養成院の教育課程は5年間とされ、入学できるのは12歳以上で、
基礎能力試験にパスした人間なら誰でも入学できる学院だ。
この学院の3学年にルドガーという15歳の少年がいる。
ルドガーはヴィシュベルの町より山二つを越えた小さな村に住んでいた。
彼は錬金術師を目指して3年と少し前にヴィシュベルにやってきた。
基礎能力試験も中の中程度の成績で、さしたる得意な分野も無い
平凡な少年である。
そして、ルドガーと同じ3学年に在籍しているハーレルは14歳。
ハーレルの家は何代も前から優秀な錬金術師を輩出し、
三代前の当主は国王付きの錬金術師にまでなった事があるという
由緒正しい錬金術師一族の生まれ。
彼自身も家柄と自分の錬金術師としての高い能力を誇りに思っており、
この学院の生徒全員と比べても自分に勝る人間はいないと考えていた。
実際、ハーレルより高い能力を持つ生徒は上級生にも存在しない。
その事実がハーレルを増長させ、彼に媚びへつらう生徒達も少なく無い。
ルドガーやハーレルが3学年に進級してから半年が経った頃。
教室の片隅でハーレルとその取り巻き数人が小声で話し合っていた。
「今度は哺乳類以外の動物でもやってみようと思うんだ。
哺乳類はあらかた試したけど、できるのは出来損ないのキメラばかりだ」
「いや、ハーレル。この学院でキメラを作れる人間は、
教授でも数える程度だよ。やっぱり君にはすごい才能があるんだね!」
たまたま、彼らの近くで椅子に座って読書をしていたルドガーの耳に
”キメラ”という言葉が耳に入り、本に視線を落しつつもルドガーは
彼らの会話に聞き耳を立ててしまう。
”キメラ”とは種類の違う生物同士を錬成し、新しく造り出された
動物の事である。
その技術は錬金術の中でも高度な物に属し、
錬金術を学習している未熟な学生が到底できる物ではない。
だが数多くの命を弄ぶ事になりかねない事から、学院に通う生徒達は
キメラを造り出す事を禁じられている。
校則で禁じられている”キメラ”についてを学院一優秀だと噂される
ハーレルが口にしたのだから、ルドガーじゃなくても興味を持つだろう。
取り巻きの1人が周囲を気にしながら口を開いた。
「ねぇ、今までの実験体はどうするのさ?捨てるわけにもいかないよ」
「そうだな。そろそろ僕の研究室にある檻もいっぱいになってきたし・・・
今週中にでも始末しようかな。欲しいヤツいるかい?」
笑いながらハーレルが周囲の取り巻きを見渡すと、取り巻きの生徒達は、
青い顔をして頭を左右に振り”不要”だとハーレルに伝える。
今までの実験だって、ハーレルには研究用の個室が特例で与えられて
いるからこそ付き合っていたのであって、自分個人が扱える代物ではない。
「要るヤツいないのか?じゃあ、今日から1匹ずつ始末するから
皆も付き合ってよ。1人じゃ運ぶのも一苦労だからね」
そう言ってハーラルが笑うと、取り巻き達も引きつった笑い声をあげていた。
ーハーレルは何をしようとしているんだろう?−
所々しか聞き取れなかったルドガーは手を止めて思考していた。
聞こえたのは”キメラ”、”始末する”、”今夜から〜”という事。
それらを繋ぎ合わせて、わかった事はハーレルが何らかの目的で
動物達を実験体に個室の研究室で取り巻き達と実験を繰り返しており、
その実験は失敗して”キメラ”が造りだされた。
失敗体である”キメラ”が研究室内に入りきらなくなった為、
今夜から1匹ずつ”始末”つまり殺して捨てるという事だ。
ー動物を実験体にした研究は最終学年まで禁じられているはずだ。
いくらハーレルが優秀で個人の研究室が特別に与えられていると
言ってもそんな事は許されない・・・でも、僕に彼を咎めるだけの勇気も
実力も無い・・・・。だったら!−
ルドガーがハーレル達の話を聞いた日の夜。
学生寮をハーレルと取り巻きの生徒2名が抜け出す所を待ち伏せした
ルドガーは彼らの後を暗闇に紛れて追っていく。
彼らは夜になり、誰もいなくなった学院に忍び込んで、まっすぐに
ハーレルの研究室に向かった。
ルドガーも彼らに気づかれないように距離を取りながら学院に忍び込む。
研究室の灯りもつけずにハーレルは小さなランプを手に持ち、
取り巻きの2名に大きな布包みを持たせ、先頭に立って学院の中庭に
続く廊下へ歩を進めていった。
しばらく研究室の方向を伺っていたルドガーだが、誰も戻って来ないと
確信し、勇気を振り絞って扉のノブを捻った。
音を立てないようにそっと扉を開き、研究室の中に足を踏み入れる。
携帯用の小さな足元を照らすだけのランプを頼りに、ゆっくりと部屋の
内部を観察するとルドガーは驚きのあまり思わず小さく声をあげた。
「・・・・あっ!」
ランプを床に落し、声をあげて我に返る。
両手で口を抑え、ランプを拾う。
少し開けておいた扉の外に耳を澄ませるが、誰も戻ってくる気配はない。
ほっと小さく息を吐き出し、改めて先ほど発見したもの達にランプを当てた。
小さな檻、大きな檻が全部で3つある。
大きな檻の中身が空という事は先程ハーレル達がここに入っていた
物を運び出したに違いなかった。
小さな檻の1つには、犬のような形をした見たこともない動物が
小さな瞳でルドガーを見つめていた。
小さな体が小刻みに震えている事から酷く怯えているのがわかる。
「これは・・・たぶん子犬か小型犬と・・・鼠類を錬成したのか?」
もう1つの小さな檻の中には、明らかに猿を主体に
錬成したと思われるキメラが入れられていた。
こちらのキメラはやせ細り、今にも餓死しそうな様子である。
おそらく、ハーレル達は失敗した実験体に餌も与えていないのだろう。
「可哀相に・・・・・・」
瞳に涙をため、じっと猿系のキメラを見つめていていると、
先ほど震えていた犬系のキメラが小さく鳴いた。
「キューン・・・キューゥン」
切ない鳴き声にルドガーの胸が締め付けられる。
「・・・君だけでも」
犬系キメラの檻に近づき、鍵を開けて中から震え続けているキメラを
胸に包み込み、扉に向かう。
かすかに中庭へ続く廊下から物音と話し声が聞こえた。
ハーレル達が大きな檻に入れていたキメラの始末を終えて戻ってきたのだ。
猿系キメラを悲しそうな瞳で見つめ、ルドガーは部屋をそっと出た。
「ごめんね」
ハーレルの研究室から犬系キメラを抱えたルドガーは、
いつも自分達が授業で使う錬金術実験専用の教室に居た。
「なんとか君を・・・いや”君達”を元の体に戻してあげたいな・・・」
実はルドガーも密かにキメラについての勉強を独自に行っていた。
勉強と言っても実験などには程遠く、過去の文献を読んだり解析したり、
机上で論理を組み立てるだけに留まる。
錬金術師を志す者は、たいがい自分の専門分野を決めるものだ。
ルドガーが将来を見据えて選んだのが”異種錬金術”である。
「僕にできるかわからないけど・・・できるだけの事はやってみるよ」
胸の中で震えているキメラを優しく撫でながら、
自分を見つめる瞳に笑顔をむけた。
すると震えが次第に収まっていき、小さな顔を摺り寄せてきた。
「ちょっと大人しくしていてくれよ?」
自分が着てきた上着を脱いで、その上にキメラを座らせると
錬金術に必要な錬成陣を、教室の中央にある専用ボードの上に描く。
数十分をかけて錬成陣を書き上げると上着の上からキメラを抱き上げ、
陣の中央にそっと下ろすと、そっと撫でた。
「さあ、準備は万端だ。痛くないハズだから、ちょっと我慢してね」
言葉が通じているのか、キメラは大人しくルドガーの動きを見つめる。
小さな声で錬成に必要なスペルを唱え、自分の気を高めていく。
うっすらと錬成陣が輝き、徐々にその光が強くなっていき、
キメラがその光に包み込まれていった。
その光はルドガーが予想していたよりも強く激しく輝き、学院内を照らす。
研究室から犬系のキメラが消えた事から慌てふためていたハーレル達も
その光に気付いて、廊下をバタバタと走って教室に駆けつけた。
「あれ・・・は、ルドガー?」
扉を最初に開けたのはハーレルだった。
意外な人物が学院内に居た事に驚く。
光を放ち続ける錬成陣の中央へ視線を向けると、自分が造り出したキメラ。
「お前だったのか、僕の研究室からソレを持ち出したのは!」
つかつかと錬成に神経を集中しているルドガーに歩み寄って胸倉を
掴んで怒鳴りつけた。
「あ・・・ハーレル?」
錬成に集中していた意識が散り、自分の胸倉を掴むハーレルに気付く。
「お前、どういうつもりなんだ!人の実験を盗むのか?」
「あ・・・ああ!何てことだ!まだ、途中だったのに!離して!」
いつもの大人しいルドガーから想像できない剣幕に気圧されて
ハーレルは彼の胸倉から手を離す。
まだ鈍く光っている錬成陣の中央に駆け寄るとルドガーは驚愕に
体を硬直させ、一歩二歩と後ずさり、最後には床に座り込んだ。
「おい?どうしたんだ!」
「ハーレル!こいつ・・・」
扉の外から様子を見ていた取り巻きの1人が大声を上げて錬成陣の
中央を震える指で示す。
「一体どうし・・・じょ、冗談だろう?」
座り込んだルドガーの横に立ち、信じられない光景をハーレルは見た。
「ホ・・・ホムン・・クルス?」
「嘘だ・・・僕は、ただ元に戻してあげたくて・・・・そんな・・・」
ガクガクと震えながら、隣にハーレルが居る事も忘れてルドガーは
目の前の自分が造り出してしまった生命体を見つめていた。
錬成陣から光が消えるとホムンクルスはスクリと立ち上がった。
その外見は小さな少女そのものである。
だが、表情は無く、声も無い。
頭をゆっくりと巡らし、近くにいるルドガーとハーレルに気がついた。
「・・・・!そ・・・うだ。おい、ホムンクルス!こっちへ来いっ」
利き腕の右腕をホムンクルスに向け、自分の所へ来るように命じる。
だが、ホムンクルスはハーレルに見向きもしない。
すぐに視線を座り込んだままのルドガーに向けると、
ゆっくりと2人のいる所へ足を進めた。
「よし、それでいいんだ。お前は僕が造り出したという事にしてやるよ」
唇の片方を吊り上げ、近づいてきた彼女の腕を取ろうとしたが、
それは急に目の前で屈まれた事で叶わなかった。
「・・・・・・」
座り込んだルドガーを見つめ、そっと頭を撫でる。
「君・・・僕の事を覚えてるの?」
泣きそうな声で少女のホムンクルスに問いかけると、彼女は小さく頷いた。
「・・・・」
無言だが、何かを言いたげな瞳をルドガーに向ける。
「ハーレル・・・悪いけど、彼女の事は僕に任せてくれないかな?」
「お前は僕の研究室に無断で忍び込んで、ソレを盗み出したんだぞ?」
この学院で一番優秀な自分でも造りだせないホムンクルスを
学年でも下位から数えた方が早い平凡な生徒が成しえた事は、
彼にとっては屈辱以外のなにものでもない。
「その事については謝るよ・・・でも、彼女は僕を慕ってくれている」
「ふん・・・ホムンクルスに感情なんてありえない!」
「もしかしたら、彼女は今までのホムンクルスとは違うのかもしれない」
床から立ち上がるとホムンクルスの少女の手を握った。
小さな力できゅっと握り返される。
「感情が無い・・と聞いているけど、僕の感情には応えてくれているんだ」
「・・・わかった。ソレの事は君に任せるよ・・・ソレも寮に連れて
帰れないだろう?僕の研究室にある仮眠室を貸してやる。
ただし、君も僕の研究を手伝う事が条件だ」
屈辱に顔を歪めている所を見られたくなくて踵を返し、背中を向けて、
一気に言葉を連ねると無言で様子を見ていた取り巻き達の方に歩き出した。
「あ・・・ありがとうハーレル!僕、君の研究に協力するよ!」
「僕は研究室で待っているから、ここを片付けてすぐに来いよ」
そう告げると教室から離れて行くハーレルに慌てた様子で取り巻き達も続く。
教室に残されたルドガーと少女のホムンクルス。
改めて少女に視線を向けてルドガーは真っ赤になって視線を逸らした。
少女の体には何も羽織られておらず、真っ白な裸体を露にしている。
身内以外で異性の裸体など見た経験がないルドガーには、
いくら少女とは言え刺激が強い。
慌てて上着を拾って少女に羽織らせた。
「ごめんよ。元に戻してあげるつもりだったのに、こんな姿にして・・・」
少女の両肩に手を置いて、頭を下げる。
それを無表情で見つめる少女。
「・・・・・・」
「そうだ、君に名前をつけなくちゃね・・・。リ・・・【リリー】なんて、どう?」
「・・・」
「いい名前だろう?僕のふるさとにいる子と同じ名前だ。
ちょっと似てるんだ、君に」
リリーに笑顔で話しかけるルドガーの表情は切なさを感じさせた。
だが、それがリリーに伝わる事は無い。
end

イラスト cris会員:みずか 緋未様 HP「Cool Goddess」 |
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