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泣き虫のうさぎさん
「ねーねー!お母さん」
「なぁに?」
暖かな日差しが差し込む小さな家の小さな庭の光景。
庭には、小さいが見事に手入れされた花壇もあり、庭の隅には小さな建物が建っている。
その建物は真新しく、中には何も住んでいない。
建物の方から、幼い女の子が花壇の中で土に触れている母に無邪気に駆け寄ってきたのだ。
「うさぎさんの目が赤いのはどうして?」
幼い娘の素朴な疑問に、若い母は微笑んだ。
「じゃあ、お話してあげる・・・それはねー」
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むかしむかし
まだ動物と人間が仲良く暮らして頃のおはなし。
とても仲の良いうさぎの家族と人の家族がいました。
うさぎ達は森の恵みを、
人間達は、森の安息を守り続けてきました。
それはそれは仲良く暮らしていました。
−こんにちは。今日は木の実をたくさん持ってきたよー
−ありがとう!いつも助かるよー
うさぎのお父さんが持ってきた木の実を受け取った人のお母さんは
笑顔で家の中に招き入れる。
−よかったら、この前もらった木苺の煮込みを食べて行くかいー
−ああ、それは美味しそうだな。じゃあ、お言葉に甘えるよー
こんな会話は、うさぎと人の家族の間では日常茶飯事です。
人のお母さんが出してくれた木苺の煮込みを美味しそうに食べた
うさぎのお父さんは、満足そうに森へ帰って行きました。
穏やかな暮らしが続いていたある日。
人の家族達がなにやら騒がしい事にうさぎの家族達が気づきました。
心配になって、一家全員で人の家族が住む家へ訪ねる事にしました。
うさぎの家族は、お父さんうさぎ・お母さんうさぎ・お兄さんうさぎ・末娘の子うさぎでした。
4匹で人が暮らす家を訪ねると、なにやら皆が泣いています。
−もしもし、一体何がそんなに悲しいの?−
お母さんうさぎが人のお母さんに声をかけました。
−ううっ私の子供が・・・急にー
−お子さんが?どうしたのです?−
−木の実を食べたら、死んでしまった・・・あんた達から貰った実で!−
その言葉にお父さんうさぎは驚きます。
同じ木の実を食べても自分達は大丈夫だったからです。
−ぼくらも同じ実を食べた。勘違いなのではないかい?−
−いいえ!あんた達のせいで私の子が!−
振り向いた人のお母さんは、涙を流しながらとても恐ろしい目でうさぎの家族を睨みます。
ー何かの間違いですよ・・・何かの病では?−
怯える子供達を守るようにお父さんうさぎは人のお母さんに懸命に話します。
ーもう、どこかへ行ってちょうだい!二度と此処へ来ないでー
動かない子供の体を抱きしめながら人のお母さんは泣き喚きます。
今まで、とても仲良く暮らしていたのに。
そんな思いをうさぎ達は思いながら、森の中に帰っていきました。
うさぎの家族と人の家族が触れ合わなくなってから、悲劇は起きました。
人間達が暮らす小さな村で、病が流行ったのです。
あっというまに、そこに暮らす人々は生き絶えてしまいました。
その病はすぐに森の中に住む動物にまで伝わりました。
次々と息絶えていく仲間達を見つめながらうさぎ達は毎日泣きました。
−お父さん、どうして皆が死んでしまうの?−
うさぎの末娘が泣きながら、お父さんうさぎに聞いてみますが、お父さんにもお母さんにもお兄さんにも、その答えを知りません。
どうして、自分達ばかりが大丈夫なのかもわからないのですから。
森中の動物達がほとんど息絶えた頃、うさぎの家族は小さな洞穴に身を潜めていました。
病から自分達の身を守るために、じっと何年も洞穴で暮らしてきました。
外の様子が静かになった頃、ようやくうさぎの家族は洞穴から出ます。
ちょうど太陽が沈む頃、辺りは真っ赤に染まっています。
涙もとうに尽き果てたうさぎ達の瞳は、その夕日に負けない赤をたたえていました。
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「そうして、うさぎさん達の目には、その時の夕日が・・・あら?」
「・・・っう・・・っう・・・うさぎ・・・さ・・・ん、かわいそうっ」
母の話を聞きながら、泣き出してしまったようだ。
小さな手で両目をゴシゴシと擦っている。
「あらら、美兎のおめめも、うさぎさんみたいになってるわよ」
くすくすと笑いながら、手についた土を払い落とし、エプロンの中に入れておいた、小さなタオルで娘の涙を優しく拭う。
「だってぇ・・・うさぎさん、何も・・・わ・・る・・・くない・・・もん」
「そうねぇ。何も悪くないわよねぇ」
泣きやまない娘をきゅっと抱きしめて、顔を上げるとちょうど小さな籠をかかえた父が、笑顔で手を振っていた。
「さ、美兎のうさぎさんが来たわよ。美兎のうさぎさんは、悲しくならないようにしましょうね」
「うん!」
先ほどまでの涙が嘘のように美兎は母に笑顔を向ける。
父も母も娘の無垢な笑顔に、優しい笑顔で応えていた。
おしまい |
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