■ 『 神話 』 文/水天宮拓仄  絵/西岡道一

世界と人間の始まり

 はるか昔。神々の王「神王」のもと、5人の神々により1つの世界が造られた。「神王」はこの世界を『ラスタル』と呼び、5人の神々それぞれの力を注ぎ、豊なる大地をより豊にするために、神々の姿を模した「人間」を造り働かせた。最初は、あれこれと指示していた神々であったが「人間」が急速に知恵を身につけるに伴い、指示を与えず「人間」のなすがままにし、見守ることにした。
 やがて、「人間」は神々に届く程の知恵を身につけ大地は輝かんばかりに豊かになり「神王」は大いに喜んだ。しかし、「人間」は《神々が見捨てた大地を我々は、これほどまでに豊にすることができた。人間が神よりも賢く、力がある証だ。神など恐れるに足らず。怠慢な神々を崇めるのは辞めてしまおう》と口々にし、神々を崇めることをせず、大地を「人間」のものとしてしまった。

 その様を見た「神王」は大いに怒り、『愚かなる者』をその大地と共に海深く沈めた。「人間」は「神王」の力の前になすすべもなく、もがき苦しみ死んでいった。
 最後には一握りの「人間」が残ったが、彼らも、今まさに沈もうとしていた。その時、1人の女神が「神王」の前に進み出た。《父にして夫なる神々の王よ。どうか、この一握りの『愚かなる者』をお許しください。「神王の力の偉大さを知ったことでしょう。ご覧なさい。あれほど輝き豊な大地も今では小さく荒れ果ててしまいました。今一度、この大地に輝きを取戻し「神王」の怒りを鎮めるためにもどうかお許しください》
 「神王」は、娘であり妻である女神哀願を悔やみながらも聞き入れ、小さな大地と一握りの『愚かなる者』を女神に託した。そのかわりに、「人間」よりも『賢き者』と『小さき者(妖精など)』に「人間」の愚かなる部分を模した『影なるもの(魔物・怪物)』を共に住まわせることで、「人間」が二度と過ちを犯さないようにしたのである。

 そうして、できた小さき大地を女神の名前にちなみ《ヴィスタム》と呼ぶようになった。


慈愛の女神
ヴィース


女神の姿は、娘であり、妻であることから
幼き妊婦の姿で描かれることが多い。

「すべての慈愛」を教旨としている。